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編集室より

◎絢爛たる畜産の祭典も盛会裡に終った。時と所と人を得て,近年稀な盛会であった。綜合畜産共進会は久しぶりの催であり,将来のこの種の共進会の在り方を示すものであるが,和牛王国を以って任ずる本県では,矢張り和牛以外の家畜は刺身のつま的な存在でしかない様な感が深い。その家畜のみの単独共進会の盛会と思う時,各家畜共あれだけの出品が行われ,真の綜合共進会が行われる様になるのは何時のことかと考えさせられる。然し立派な綜合共進会が開催出来るように育てて行くのが吾々畜産人に課せられた義務であると考える今年は農業改良課の努力で農業展も同時に行われた。此処迄来ればついでにステートフェアーに迄持って行って年1回農業祭を実施して収穫の感謝と,農民のお祭りと,家畜や農産物の共進会を共にし,生産者も消費者も共に楽しむ時を持ってもいい様な気がする。

◎乳業界に台風第5号が上陸して大暴れである。小型酪農丸は大揺れで進路を失いそうである。夏乳以来乳は不足不足で業界はうれしい悲鳴を挙げているが,更に乳不足で各地に争奪戦が見受けられる生産者にとっては有難迷惑と言った形である。熱風的乳価より安定した乳価で永続した取引を希望するのである。従来酪農界では信義が重んじられて来た,取引に対しても間違いを聞いたことが無い,水物を缶に入れて送ってさえ間違いが無かったのである。それなのに近来方々で間違いを起して生産者の不満を買っている。生物を取扱う酪農界で信義を失っては大問題である。動物の世界には誤摩化しも何も無い。ただ在りのまま姿のそのものである。家畜を扱う者はせめて心だけは動物の如く正しいものであってほしい。

◎市乳は15円に値上げをした。生産者の価額は5円−7円である。一体誰が儲けているのかと言いたくなる。消費者と生産者があっての商売である。良い乳を安く,沢山飲めるようにお互いに努力したいものである。