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輝く総理大臣賞獲得
岡山牛は日本一

畜産岡山の声価あがる

第16回中国連合畜産共進会

 畜産関係者,農民はもちろん地元をあげて待望の中国連合畜産共進会は去る10月7日午前10時1,000名にのぼる参会者をあつめて開会式が挙行され,いよいよ3日後に迫った第1回全国和牛共進会とあわせて8日間にわたる畜産の祭典の幕を切って落した。
 広島市旧西練兵場(第1会場),児童文化会館前広場(第2会場)1万1,000坪にわたる大会場はこの日5色のまん幕をはりめぐらせた開会式場には大国旗、農林大臣賞カップ,色とりどりの菊花など華やかに飾られ,大会会長大原知事はじめ各関係者,特別招待の池田隆政氏夫妻,その他多数の来賓に羽部博士のほか正審査員17氏ら畜産界の権威者がズラリと居並び,式場内には各県のプラカードをかかげた参加6県の出品者200余名のほか畜産関係者,一般入場者がつめかけて場外にあふれ,又多彩な協賛行事も一せいに開幕され大会気分を一段とあおった。
 大会第1日は各県(中国5県および兵庫県)の最精鋭各種家畜205点の個体審査を全部終った。第2日の8日は第1日に引続き,審査はいよいよ入念に行われ,入場者は初日と同じく1万数千人を数えた。初日に個体審査を終った205点の各種家畜はこの日午前9時から比較審査に入り,午後5時には最終日をまたずして肉牛の審査は完了,他の家畜も第1,第2回とも終り,入賞家畜の大勢はほぼ決った。
 場内中央の式場では全出品者をあつめて全国和牛共進会会長羽部義孝博士の共進会の意義,出品者の心得についての講演が行われ,両会場には中,高校生の見物も数団体つめかけるなど盛会をきわめた。
 一方10日開幕される全国和牛共進会に出品される各県ツブ選りの精鋭和牛160頭および参考出品の「つる牛」19頭,調教実演和牛2頭,さく乳和牛1頭も北は山形県,南は鹿児島県の全国31府県からぞくぞくくり込み,午後には全部その雄姿をそろえていやがうえにも大会前の景気をあおった。
 第3日の9日は午前9時から第1会場(乳牛,馬,肉牛),第2会場(めん羊,豚,山羊,鶏)とも最終の比較審査が行われ午前中には入賞の確定を見た。この日は日本畜産協会会長河野一郎氏(衆院議員)同副会長岸良一氏(参院議員)の両氏出席のもとに第1会場内に畜産関係者多数をあつめて「全国畜産大会」が盛大に開催され,畜産団体法の制定,畜産課税撤廃,国営競馬の民営移管など各県団体提案の18議案を討議したのち「現下の国内における総合食糧の増産を確保するため米作偏重の農政を一新して畜産品をふくむ根本的かつ総合的な食糧政策を確立せねばならない」むねの宣言を採択した。
 午後1時から肉牛のせり市が第1会場内において盛大に開催された。
 乳用種々牛において岡山県から出品された真庭郡落合町村岡正治氏の「デコールルテナロメオクリームカップ」号出品番号17号2等賞の首位並びに御津郡平津村丹原佐吉氏の「オームスビーイムペリアルジョセフゴリア」号出品番号2号2等賞に擬賞せられたものは共に未経産牛であるが全共において赫々たる栄誉を獲得した経産牛の群に混ってするどい審査をうけて本県乳牛界のために万丈の気を吐いたのである。然しながら何づれも完全無欠のものでなく審査長より次のような講評を受けた。
 17号の牛は品位に富み,資質がよく乳牛としての特性をよく備え,体積にとんでいるが前乳房の発達がややよくないことと乳頭が細いこと,2号の牛は体各部の均合がよく特に乳房の形状と乳頭の配置がよくて後躯の形状がよかったが肩がやや厚いことと肩後の充実を欠いでいると言うことであった。

第1回全国和牛共進会

 10日は午前11時から第1回全国和牛共進会の名誉総裁高松宮殿下を御迎えして,第1回全国和牛共進会開会式を挙行し,引きつづき中国連合畜産共進会褒賞授与式が盛大に挙行された。
 この共進会は絶好の秋日和にめぐまれて連日予想外の人出でにぎわい,11日から始められた和牛会の最高権威17氏による入念な比較審査は全和牛とも各県の最精鋭だけに,第3日の12日にいたりいよいよ白熱化,猛烈なせり合いのうち,午後には入賞順位の大勢がほぼ決った。
 審査の結果は前評判どおり中国5県および兵庫県が圧倒的に優勢,2等以上のほとんどを占め,とくに岡山和牛は1等18頭のうち4頭が入賞,その優秀性を誇示,全国和牛関係者の目をみはらせた。
 初日の10日は高松宮殿下御臨席の盛大な開会式と土曜日とで10万人近い入場者で会場はごった返し,第2日も好天の日曜日で数万の観覧者が審査場や調教実演場に集まったが,第3日の12日に入っても幟町中学1,400名の団体観覧をはじめ,ますます盛会をつづけてこの日も入場者は5万を超え,会場前には各種団体の借切バス発着が終日絶えなかった。
 とくに12日は上位入賞牛を決定する審査のヤマだけに和牛愛好家や専門家の多いのが目立ち,審査場周囲のサクにはこれらの人々数千が終日カジリついて動かず,熱中のあまりややもするとサク内に入って優秀牛を直近に見ようとする人を出すのに場内整理係は汗ダク,審査員またツブぞろいの優秀牛の優劣を決するに後から前からなかなか慎重,午前中Aクラス(1,2等優勝)牛68頭が決定,それぞれ青リボンがおくられた,午前は日暮まで1,2等の決定審査がつづけられたが1等の入賞が決り,紫の額章がつけられるごとに審査場をとり巻く人垣からドット拍手が起り,出牛者は満面に笑をたたえ小踊りしながら牛を引いて畜舎に帰って行った。
 第4日の13日は午前中に再確認審査が行われ,各等内席次および高松宮杯(黒毛雄1頭)総理大臣杯(同雌1頭)農林大臣杯(6頭)授与の決定をし,午後優位入賞牛の展示説明が行われた。
 審査の結果2等以上入賞牛全国68頭のうち55頭は中国6県で占め和牛界に万丈の気をはいた。岡山県は都窪郡三須村,守安完一氏の「こざくら号」が総理大臣賞を獲得,「日本一の母牛は岡山」というアドバルンを広島の空高くたなびかせることが出来た。
 以上が共進会の大要であるが,審査報告,上位入賞家畜について岡山県関係を下記に登載した。

日本臨床獣医学会

 第1回全国和牛共進会の付帯行事として注目されていた第8回日本臨床獣医学会ブロック大会は農業振興,公衆衛生の向上に資するため10月12日午前9時から広島市農協ビル講堂で,東大教授山本修太郎博士をはじめ中国6県(兵庫を含む)の獣医師その他関係者一般入場者ら約800名が参集して開会,33名の獣医師から平素研さんをかさねた研究調査の発表があり,これに対し会場からも活発な質疑討論が行われ,この間山本修太郎博士の幻燈写真による「家畜のレプトスピラについて」の特別講演もあり,午後6時盛大に閉会した。
 なお,同会に先立ち10月11日農協ビル講堂で開かれた第3回中国地区獣医師大会では,
@獣医師法改正A家畜共済に関する法改正促進B長期臨床獣医学講習会開催C家畜衛生研究所新置D獣医畜産機構の一元化の提出議題を決議,中央関係官庁ならびに日本獣医師会に要望することになったが,これに引続き第8回日本臨床獣医学会は並行的に行われたものだが,この共催された獣医薬品器械展示会では約500点の出品があり,とくに点燈腟鏡はごく最近の製品である。
 このほか最近の製品ではゴムつき魔法ビンの精液輸送器などもみられた。

第16回中国連合畜産共進会

審査報告

第1部 乳用種種牛

 乳用種種牛の出品は島根県2頭,山口県5頭,鳥取県5頭,兵庫県・岡山県各5頭,広島県7頭,計28頭のホルスタイン種及びホルスタイン系種の牝牛のみでありまして,うち未経産牛15頭,経産牛13頭でありました。
 審査は日本ホルスタイン登録協会の審査標準によりましたが,体高は成牛で136cm以上あれば,減点しないことに致しました。
 出品牛について総括的な概評を致しますと,一般に発育が良好で体積に富み前回に比して資質の優良なものが多く,比較的よく揃い,その水準も一段の向上を認めました。
 特に馴致調教が他地方に比べて優れていることは,中国地方の古い歴史を物語るものと言えましょう。
 然し乍ら全般的に,品位に於て稍々不満足なものが多く,又飛節,繋及び蹄が弱く,従って歩様の悪いものが多く見受けられました。
 次に県別の概評を申し上げますと,岡山県のものは,品位に富み資質が良好で,乳用牛の特質をよく現わしておりますが尻下りのもの,乳房の形状,乳頭の小さいもの肢蹄歩様の悪いものが若干見受けられました。(他県は省略)
 以上審査の概評を申し述べましたが将来の改良に際しましては,種牡牛の後代検定につとめ,以て遺伝学的基礎に基いた繁殖法を行うと共に,飼養管理においては,適当な運動を課し,更に良質な粗飼料を充分に給与し,鉱物質特に骨粉等を給与することによって肢蹄が強く,強健で,連産性の乳牛の造成に努められん事を希望します。終りに中国地方酪農の進展状況から見まして将来の連合共進会にホルスタイン種未経産,経産及びホルスタイン系種の三部門を設けられん事を特に希望致します。


乳牛審査風景

第2部 肉牛

 肉牛の出品は29頭でして,無角和種1頭を除き,他は全部黒毛和種の牝であります。
 審査は,昨年中国和牛協会で決定の上農林省がその適用をすすめている肉牛審査標準に準拠しました。
 出品を総覧しますと,前回に比して出品点数も多く,しかも総体に肥育程度がよく進んでおり,体重は143貫(536s)ないし176貫(616s),平均158.7貫(595s)でありまして,審査基標準に示されている140−160貫に照して非常によい肥えい状態といえましょう。素牛の資質も概して良好でして,角,毛皮,骨緊等に特に大きな欠点を持ったものがありません。しかし毛色においては,そのうす過ぎるものが見受けられ,体型の上では,後躯の形状に欠点のあるものが多く,肋張りの不充分なもの,背線の悪いもの,胸の充実を欠いたものを,肩先の開いたものなどが散見されました。
 岡山県の出品は肋張り良好で,角地,毛色など佳良であり,後躯の巾にも富んでいますが,肥育程度浅く,背巾に乏しく,背線,毛質などに難があります。(他県は省略)
 今後の和牛は,背,腿等の改善により,体型的にも肉量の増加を求めていますが,当地方の肉片におきましても,上の点,殊に後躯の改良に留意して頂きたいと思います。又,肥育程度におきましても理想的な肉片を作る場合における肥育程度をよく研究されまして,過肥に陥ったり,肥えいの未熟に終らないよう計画的に,経済的に肥育し,なおまた一部地方におては去勢牡犢の肥育についても考慮し,以て本邦の食糧増産と農家経済の向上に貢献するように希望します。


肉牛審査風景

第3部 種馬

 種馬の出品は29頭で全部牝馬であります。出品県別頭数は島根県4頭,山口県,鳥取県,岡山県各5頭,広島県10頭で,兵庫県からの出品がなかったことは遺憾であります。これを種類別に致しますとアングロノルマン系種1頭を除き全部中半血種であり,又年令別に致しますと3歳12頭,4歳11頭,5歳6頭であります。
 審査は中国種馬登録協会の農用種馬審査標準に拠って行いました。即ち当地方の農業経営上の使役に適すると共に繁殖に適したものを主眼としたのであります。
 出品馬を通覧致しますと概ね前述の審査標準に適合し,即ち大きさの点においても体高の平均が1m46p弱,最高1m51p,最低1m40pで,中国地方における農用馬として好適であります。体積に富み,体躯にゆとりがあり,肋の張りもよく,栄養も適度に保持され,馴致調教も行き届いているものが多く,前回に比して全般的に水準の向上が認められますが,これは登録事業が順調に発展しつつあることの証左ということができましょう。
 然しながら,中に四肢が長過ぎるもの,四肢の関節に故障があるもの,腋間が狭過ぎるもの,股や脛の筋肉の発達が充分できないもの,護蹄が適当でないもの等が散見されましたのは惜しいことであります。
 次に出品馬を県別に概評致しますと,岡山県のものは,概して四肢に難点が見受けられます。(他県は省略)
 以上要するに,全体としては進歩向上の跡が見られますが,個々に検討致しますとなお改良を要する点が多々あるのでありまして,特に繁殖に当っては重種の血液を過度に注入することを厳に戒しめ又育成に当っては,適度の運動によって四肢の筋腱の発達を促し,平素の管理に当っては蹄の保護に一層の御留意を願いたいと存じます。


馬審査風景

第4部 種緬羊

 今回の出陳頭数は総数29頭でその内訳は牝28頭,牡1頭でありました。
 これを県別に見ますと島根県牝5頭,山口県牝3頭,鳥取県牝4頭牡1頭,兵庫県牝3頭,岡山県牝3頭,広島県牝10頭でありました。
 審査は日本緬羊登録協会の日本コリデール種緬羊審査標準に準拠して実施致しました。
 今回の出陳緬羊を昭和25年鳥取県倉吉町に於て開催された第15回中国連合畜産共進会に出陳されたものと比較して見ますと体積,体型,資質及び羊毛共に格段の進境を認められるのでありまして,特に前回不振の各県に於てその進境の目覚ましいもののあったことは関係各位の御努力の結果であり,まことに御同慶に堪えません。
 然しながらこれを詳細に見ますと可成り難点を見出し得るのでありまして,先ず体型については日本コリデール種の理想とする各部の発育がよく,而も釣合のよくとれた所謂長方型のものが比較的少く,概して胴詰りで後躯特に臀,腿の発育が悪い,所謂尻細のものが可成り見受けられました。
 次に体積については,岡山,広島,鳥取,島根等のものに概して優れたものがありましたが,その他の諸県のものには体積が乏しく種牝緬羊として適当でないと思われるものが若干見受けられました。
 資質については概して良好でありましたが,尚一部には頭部に羊毛が少なく顔が細長く,且つ皮膚被毛が粗剛で粗野の感じがするもの,被毛に黒又は褐色の班紋,刺毛のあるもの及びマツ毛の褐色のもの等があり,品位に欠けるもののあったことは遺憾でありました。
 羊毛については鳥取県のものに可成り見るべきものがありましたが,其の他の県のものには密度の粗なもの,部位により繊度の可成り異なるもの,後躯の密度乏しいもの,部位により状態の著しく異なるもの,特にクリンプ(捲縮)が部位により著しく異なるもの,又は部位により毛脂及び着色の程度が著しく異なるもの及び弾力及び光沢の乏しいもの,クリンプの不鮮明なもの,或は全然ないもの,又はオーバー・クリンプ(捲縮過度)のものは又は後躯にヘアリーウール(粗毛)の可成りあるもの,ヨークステインド(毛脂焼け)のもの等がありましたが,これらは未だ羊毛改良の度合の進んでいないことを物語るものとして遺憾に思いました。
 次に出陳県別に概評を試みますと岡山県出陳のものは概して体積に富んだものがありますが体型上各部の均合いが稍悪く品位に乏しい点が難点と見受けられました(他県は省略)
 以上審査の概要を申し述べましたが,最後に中国地方の緬羊改良増殖上特に御留意願いたい点を申しますと,今回の成績から見て体積の点については1〜2の県を除いて何れも良好と認められますので今後は,更に一層体型資質,特に羊毛の改良に重点を指向されることが肝要かと思われるのであります。この為には基礎畜の留保,或は導入に際しては特に上の点について慎重を期されると共に緬羊の人工授精,並に緬羊登録事業を強力に推進して資質の改善に努めこれと併行して飼養管理の改善,育成技術の向上に一段の御努力を煩したいと存ずるのであります。


めん羊審査風景

第5部 種山羊

 第5部種山羊の出品は牡2頭牝25頭で,これを年令別にすると2歳13頭,3歳9頭,4歳4頭,5歳1頭計27頭でありました。これを県別に見ますと,牝は広島県11頭,島根県5頭,山口県4頭,岡山県3頭,兵庫県2頭で,牡の2頭は鳥取県の出品でありました。
 今出品を通覧致しますのに,後進地として改良の進展著しく,一般に山羊が大型になったことは驚くべき進歩と認められ,明2歳13頭の平均体高75.8p,平均体重58.1s,明3歳8頭の平均体高80.07p,平均体重67.2sであり,これは大きさについては先進地を凌ぐ程ですが,中に標準の体高に達していないものが9頭もあったことは遺憾であります。又乳房の形質とも相当改良の跡が認められ,泌乳能力の優秀なものが選抜出品されたことは指導者及び飼育者の努力の成果として深く敬意を表しますが,体の緊実及び品位に於て尚先進地に相当劣る点が認められたことは誠に惜しい点でありました。
 即ち発育や栄養にふさわしい管理がなされないために,体の緊実を欠き体量に比し肢蹄の貧弱なことは通有的な欠点でありました。又少数を除いては大体品位に乏しく毛色,毛質に難点があり馴致の不充分なものが多かったことは,前記の栄養や発育のよいのに対して意外とする点でありました。
 次に各県別の批評を試みますと,
 兵庫,岡山の出品には特に見るべきものなく,特に岡山の山羊は飼養管理がわるいので非常に見劣りがしました。将来は出品の選定につき特に留意せらるるよう望みます。(他県は省略)
 要するに全出品を通じ体格は大型となり,乳房の形質の改良は著しく進み,泌乳能力は何れも優秀なものと認められましたが,資質,品位,肢蹄に於て先進地と相当のひらきがありますので,今後は能力検定の励行により能力の向上に努めると共に,特に種牡山羊の選定と育成,管理に充分留意せられるよう希望致します。


山羊審査風景

第6部 種豚

 種豚の出品はヨークシャー種牡1点牝25点でありまして,これを県別にいたしますと島根県牝5頭,山口県牝3頭,鳥取県牡1頭牝4頭,兵庫県牝3頭,岡山県牝2頭,広島県牝8頭でありました。
 審査は日本種豚登録協会ヨークシャー種体格審査標準に拠って実施いたしました。
 先ず出品豚を概評いたしますと一般に発育良好で資質も亦概ね良好と認められました。然し乍ら仔細に観察いたしますと種豚としてやや過肥に陥ったものや体の緊りに欠けるもの,顔のしゃくれに乏しいもの又粗野で頬の重いもの,体の伸びに乏しいもの,肋の張りに乏しいもの,皮膚に斑点のあるもの等が見受けられました。
 次に県別に概評をいたしますと岡山県の出品豚は一般に発育がやや不充分であったことは惜まれます。(他県は省略)
 今回の出品豚を通覧いたしますと一部に於ては改良の進んだものもありますが尚一層の向上が望まれますので,今度は優れた基礎牝豚を確保すると共にこれに配する優良な種牡豚を導入し,人工授精の活用と登録事業の普及徹底を図ると共に飼養管理に留意される様切望いたします。

第7部 種鶏

 種鶏の出品は35点でありまして,横斑プリマスロックの1点の外はすべて単冠白色レグホーンでありました。
 これを県別に分けますと,島根県5点,山口県5点,鳥取県3点,兵庫県5点,岡山県7点,広島県10点で岡山県の出品のうち1点は横斑プリマスロックであります。
 審査は日本養鶏協会の家禽標準に則り個体の現状と雄雌の配合に重点をおいて実施致しました。
 先ず,総括的に出品鶏の概要を申しあげますと一般に実用鶏としての方向に改善努力の傾向が見受けられ,飼育管理においても概して良好でありまして,出品に対する熱意の程も察することができましたことは御同慶の至りであります。然し乍らなかには出品に対する心構えの欠けたと思われるような鶏も見られましたことは遺憾に存ずるところであります。又一般に雄と雌の配合がよろしくなく,特に雄に比べて雌の活力に見劣りするものが多くありました。
 なお出品鶏は単冠白色レグホーンが大部分で兼用種としては横斑プリマスロックが僅か1点でありましたが,わが国の副業養鶏としては兼用種の持つ価値は少くないものがありますので将来考慮の余地があるものと思います。
 次に出品鶏についてその詳細を述べますと雄において大部分が尾羽の発達充分でなかったことは共進会開催時期の関係で止むを得ないと考えられますが遺憾のことであります。又胸部の充実したものが少く,従って雄としての偉容に欠け雌においては初産後の産み疲れもありましょうが,生気に乏しいものが多く見受けられました。又換羽途中のため美観をそこない。或は羽虱が相当寄生しているに拘らず,そのまま出品しているなど、今後出品に際して注意していただきたいことであります。なお外観のみにとられて実用鶏としての価値に考慮の跡が認め難いものが2,3ありましたことを特に申し添えておきます。
 岡山県は中国地方における養鶏県としては見るべきものの少なかったことは遺憾であります。(他県は省略)
 以上概評を申上げましたが,共進会と申しましても種鶏家は品種の経済的性質を犠牲にしてはならないので,品種の特徴である大いさ,体型及び色沢等を維持することは大切でありますが,最も有用な生産力の高い鶏を完成する要があるのでありまして,標準の目的もここにあるのであります。
 これがためには種鶏の遺伝的な素質に留意して適切な選択配合を行い,その飼養管理の改善に一層の努力を傾けられるよう希望致します。


鶏審査風景

第1回全国和牛共進会

審査報告

第1部 黒毛和種

 第1部,1類,1区の出品は,総数21点でありまして,その出品区域がかなり広範囲に亘っていましたためか,一般に牛が不揃いで体型,資質共に優良なものが,少く,殊に後躯,肢蹄,品位等においては,今後特に改良を要すると思われます。
 1等賞に擬賞しました,12号牛は,背線平直で体の釣合よろしく,品位に富み,肋張りよろしく,肩はやや傾斜が不足でありますが,附着及び肩先の状態宜しく,又,皮膚及び被毛も良好であります。しかしながら,肢蹄殊に蹄が小さくて,薄く,繋が弱く,従って,歩様においても踏着に力が足らず,稍々広踏で前肢の運びが,外孤を軽くえがいています又,頭が稍々短く,頭への移行が悪い点は惜しいと思います。
 第1部,1類,2区,3区,及び4区の出品は,合計22点でありましたが,優秀な個体が比較的少かったのは,遺憾でありました。中躯及び骨味などは概して良好でしたが,後躯,肢勢,被毛,角品位などに共通な欠点がみられました。
 第1部,2類,1区の出品は,総数34点でして,発育,体の緊り,均称,肢蹄,歩様,乳徴など,重要な部位において,一般に欠点少くよく揃っていました。
 しかしながら,4等賞の数頭においては,育成技術の拙劣の為か,体の深みの足りないもの,体の緊りのよくないもの,被毛不良なものなどがあり,また一般に腿の形状悪く肩先の緩いものなどは,今後改良する要があります。
 次に1等賞のものの概評を記しておきます。
 59号牛は,体緊実し,体積に富み,体の均称もよく,しっかりとした良牛ですので総理大臣賞杯を授与されました。しかしながら惜しいこと皮膚,被毛,●の位置,乳房,飛節,蹄の大きさなどに極く僅に遺憾の点がありました。
54号牛は背線平直で体の緊りよく,中躯,乳徴などに大きな美点がありましたが,前肢の外向が惜しく,従って歩様も宜しくなく,皮膚,被毛,下腿の巾,肩の傾斜などに少しく欠点を認めました。46号牛は,資質良好で,品位にとみ,中躯の状態も良好ですが,肩はややゆるく,胸幅が少し足りなく,なお,後躯の充実と,飛節とに遺憾の点がありました73号牛は体がよく伸張し,資質も良好ですが,体の緊りに難があり,肩付と背すじのややゆるいのは惜しい点であります。
48号牛は,体の均称よろしく,また,体よく緊実し,肢蹄良好でしっかりしていますが,資質,尾もとなどに遺憾の点があります。
49号牛は,体の均称よろしく,骨緊りもよく,実に整った牛ですが,肩先がやや突出し,頸,飛節に多少の欠点がみられます。
 第1部,2類,2区,3区及び4区の出品総数は27点でありまして,総じて中躯充実し,発育良好であり,骨緊り,乳徴も大体良好でしたが一般に後躯は不良で,肩,歩様,肢勢の宜しくない点など共通の欠点でありました。また幼時濃厚飼料の過飼により体粗大となったものや,肉付,調教等,一般飼養管理に一段の工夫を要するものが認られました。
 次に各区別に1等賞入賞牛の短評を試みましょう。
2区の1等1席の83号牛は体均称を得体積にとみ,肋腹殊に良好で,肢蹄も堅実ですが,肩付と背の僅か弛いのが惜しまれます。
1等賞2席の92号牛は資質特に優秀であり,体の緊りも背腰の状態も良好ですが,肩付がやや弛く今一息の体積が欲しいと思います。
1等賞3席の89号は体緊実し,体積にとみ,均称よろしく,中躯が特に良好ですが,頭頸部と歩様とに難があります。3区の1等賞1席の95号牛は背腰,肋腹,肩付等の状態宜しく,資質も亦佳良ですが後躯がやや不良でいささか長脚の憾みがあります。
1等賞2席の98号牛は大型ながら体緊実して均称宜しく,中躯の状態も良好ですが,後躯に不満があり,胸も一息充実しておればと惜しまれました。
4区の1等賞の103号牛は,均称特によろしく,背線,肋腹,皮膚,乳房等も亦良好ですが,腰角突出して尻の充実を欠く点と角の大きに失する点を遺憾と致します。
 第1部,2類,5区,6区及び7区の出品は総数30点でありまして,出品牛を概観しますと発育,栄養は概ね良好でありましたが,体型の整一充分とはいいがたく,又夫々の個体が相当大きな欠点を持っているものが多いように見受けられました。体の細部について申しますと肩の状態の悪いもの,背腰の弱いもの,胸の狭いもの,尾根及び臀部の状態の悪いものが多く,又飛節や繋の弱いものが少くなく,従って歩様が良好でないことも共通の欠点といえましょう。なお皮膚被毛も一般に粗厚に思われました。
 次に1等賞の牛について短評を試みますと2類5区の1等賞1席の120号牛は均称が宜しく体各部の移行がなめらかで無理のない牛でありまして肩の附着も良好でありますが,乳徴に少しの難があり前肢の繋がいささか弱く歩様も強くない感じのあるのは惜しまれます。
 次に同じく2席の118号牛は品位にとみ背線平直で骨緊りもよく,皮膚,被毛,乳徴共に良好でありますが,肩の附着が悪く肩端ゆるく肩から頸への移行に無理があり胸も狭いのが欠点であります。
 同じく3席の123号牛は発育良好で体積にとみ,乳徴も良好で蹄も立派でありますが,背腰が弱く胸も狭く骨緊りと体躯の緊りが望まれます。
 同じく4席の122号牛は均称宜しく体の幅と深みにとみ,皮膚,骨緊りも可良でありますが,背腰が弱く肩端もゆるく尾根及び臀部の状態不良で歩様にも難があります。
 次に2類6区の1等賞1席の131号牛は品位にとみ均称が良く体上線と中躯が良好で乳徴もよいのでありますが,骨が少し太く前肢が外向であり緊りも不充分で歩様にも不満の点があり皮膚,被毛の粗厚な点が惜しまれます。
 同じく2席の130号牛は均称宜しく乳徴も良好でありますが,顔品が悪く頸から頭への移行,皮膚,被毛等にも幾分の不満があります。
 第1部,第3類は高等登録牛が出陳されましたが,これは和牛の共進会として初めての試みであります。出品は牡1頭牝7頭であります。骨格的には流石に立派でありますし,乳徴も宜しく体積に富み資質も佳良ですが,牛の栄養状態において区々でして余りに肉をつけ過ぎているものや余りにも痩せすぎているものがありました。
 高等登録牛の如く和牛として遺伝的に最も優れた牛は1頭でも多くの仔を残して和牛改良に貢献することが大切なのですが,その為には絶えず繁殖に最適の栄養状態に保つ様に飼養管理に工夫することが肝要と考えます。
 3類1区の1等賞になりました141号は体の均称よろしく体積にとみ資質も良好ですが余りに肉をつけすぎ体の緊りにおいて少しの難点があります。また乳徴もとくに優良とはいえません。
 同じく3類2区の1等賞の144号は年令11才のあずま蔓供用種牡牛です。体積に富み重厚にして而も均称宜しく角皮膚,乳徴等も亦佳良で非常に欠点の少ない貫祿ある優良牛でしたので,名誉総裁賞杯を授与されました。
 註 第2部褐毛和種及び第3部無角和種は省略した。

授賞目録

乳     用     種     種     牛
  2 等 賞 (会長賞状,賞旗,賞牌,賞金 7,000円 農林大臣賞)
出品
番号
種 類 名    号 生年月日  血   統 {父母 産  地 出品者住所氏名
17 ホルスタイン種 デコールルテナロメオ
クリームカップ
25.9.23 ロメオプレースレットサープライド
(25,574)
岡山県久米郡 岡山県真庭郡落合村
村 岡 正 治
デコールクインガヴァナー
クリームカップ(75,670)
(AR6,056)
2 イムペリアル
ジョセフゴリアス
27.2.2 第六〇カーネーション
 ガヴァナーインペリアルラット
(866)
岡山県御津郡 岡山県御津郡平津村
丹 原 佐 吉
オームスビーゴリヤSNS
オクスプリング(69,844)
         種  め  ん  羊
  2 等 賞 (会長賞状,賞旗,賞牌,賞金3,000円 農林大臣賞)
29 日本コリデール種 ふじもり 26.3.3 仔 ヤカ   280
仔 ヤカ   279
岡山県
邑久郡邑久町
岡山県邑久郡邑久町
藤 森 二三夫
賞   杯    受    賞    者(和 牛)
賞     杯 審査番号 名     号 住     所 氏    名
名誉総裁賞杯 144 第二十一深川 広島,比婆,口北 宮 田 為太郎
内閣総理大臣賞杯 59 こざくら 岡山,都窪,三須 守安完一
農林大臣賞杯 120 綱吉 鳥取,西伯,余子 山本 憲
同上 131 第四〇岩田 広島,比婆,比和 垣内義満
同上 12 すみえ 大分,直入,久住 中村忠太
同上 54 よしもり一 島根,能義,赤屋 妹尾正喜
同上 46 いきはつまつ 島根,飯石,来島 上田絡夫
同上 95 たまえ 兵庫,美方,兎 田中健一
同上 103 みつまた 鳥取,西伯,成実 岩 田 顕次郎
同上 149 むろいち 高知,安芸,吉良川 岡 村 熊之助
同上 153 うたやとよはる 山口,阿武,彌富 谷岡幸熊
和     牛     牝     之     部
  1 等 賞 (賞金 1万5,000円 内閣総理大臣賞状・賞杯,農林大臣賞状,中国和牛協会賞状・賞品)
出品
番号
名   号 登録,登記
記号番号
生年月日 父名号,登録記号番号
母 〃
産 地 出品者住所氏名
(会員番号)
59 こざくら 五二犢阿黒 671 27.3.17 西  岩    黒  918
みやひめ   予岡13,158
岡 山
阿 哲
丹治部
岡山・都窪・三須
  守 安 完 一
(岡山 9,682)
49 あきこ一 五二犢阿黒
1,071
27.5.1 西  晴    黒 1,837
あ き 子   本黒11,183
岡 山
阿 哲
草 間
岡山・阿哲・石蟹郷
  長 岡 国 雄
(岡山 1,017)
  2 等 賞 (賞金 1万円 農林大臣賞状)
71 なかまえ 五二特阿黒 578 27.1.10 第十二仙貫   黒  358
第八たけひめ  黒17,241
岡 山
阿 哲
菅 生
岡山・吉備・総社
  坪 井 忠 良
(岡山35,734)
56 第十のぼる 五二犢阿黒 824 27.3.29 第六清国    黒  78
第二のぼる  本黒 2,881
岡 山
阿 哲
千 屋
岡山・阿哲・千屋
  大 枝 憲 吉
(岡山27,721)
57 いわ四 五二犢真黒 567 27.3.20 芳  栄   本黒 1,618
た  に   本黒 7,489
岡 山
真 庭
勝 山
岡山・真庭・勝山
  岩 本 文治郎
(岡山 8,746)
和     牛     牡     之     部
  1 等 賞 (賞金 1万5,000円 農林大臣賞状,中国和牛協会賞状・賞品)
122 第三山根 五二犢阿黒 256 26.12.24 第六清国    黒  78
第二やまね  予岡11,264
岡 山
阿 哲
新 郷
岡山・阿哲・神代
  大 怐@淳 一
(岡山 6,926)
  2 等 賞 (賞金 1万円 農林大臣賞状)
125 第六長岡 五二犢阿黒 216 26.11.14 昭  栄   本黒 2,143
みやわき   本黒 2,171
岡 山
阿 哲
草 間
岡山・阿哲・野馳
  沖 田 洋 美
(岡山  982)
和牛高等登録之部
  1 等 賞 (賞金 1万5,000円 農林大臣賞状,中国和牛協会賞状・賞品)
141 うえだ 本黒   6,225
黒高    39
20.4.6 第三日之出  本黒  75
う ず き   予岡 3,958
岡 山
上 房
水 田
岡山・上房・水田
  平 岡 平 治
(岡山 9,231)

第16回中国連合畜産共進回県別褒賞点数

種 類 乳用種種牛 肉    牛 種    馬 種めん羊 種  山  羊 種    豚 種    鶏
県 名 出品
点数
1等 2等 3等 4等 出品
点数
1等 2等 3等 4等 出品
点数
1等 2等 3等 出品点数 1等 2等 3等 4等 出品点数 1等 2等 3等 4等 出品点数 1等 2等 3等 4等 出品
点数
1等 2等 3等 4等
島根 2       2 2     2   4   2 2 5     4 1 5   2 3 5 2 2 1   5 1 3 1  
山口 5   1 3 1 10 1 1 7 1 5     2 3     2 1 4 1 1 2   3     3   5   1 3 1
鳥取 4      3 1 1       1 5 2 1 2 5 1 1 2 1 2     2   5 1 2 2   3     2 1
兵庫 5 2   2 1 7 2 4 1   0       3     1 2 2     1 1 3   1 1 1 5   3 2  
岡山 5   2 3   5     2 3 5     5 3   1 2   3       3 2       2 7     4 3
広島 7 1 3 3    4   1 3   10 1 3 4 10 2 4 4   11 2 3 6   8   1 7   10 3 2 4 1
28 3 6 14 5 29 3 6 15 5 29 3 6 15 29 3 6 15 5 27 3 6 14 4 26 3 6 14 3 35 4 9 16 6

第1回全国和牛共進会出品府県別成績表

区別 出品点数 1 等 賞 2 等 賞 3 等 賞 4 等 賞
府県名  
京都 6     3 3
兵庫 13 2 5 4 2
鳥取 13 4 6 3  
島根 13 3 5 4 1
岡山 13 4 4 4 1
広島 17 7 7 3  
山口 13 1 5 6 1
福岡 3     2 1
佐賀 3    1 1 1
長崎 5    1 4  
大分 5 1 2 2  
熊本 2     2  
宮崎 4   2 1 1
鹿児島 4   1 3  
愛媛 2     2  
香川 3     1 2
徳島 2     1 1
高知 5 1 1 2 1
和歌山 2       2
三重 3       3
奈良 2       2
岐阜 3   1 2  
愛知 3       3
石川 2       2
福井 2     1 1
大阪 3       3
滋賀 3       3
山形 2   1 1
福島 2       2
新潟 2       2
富山 2     1 1
合計 157 23 42 53 39