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新設三蟠競馬場
開場式盛大に開催


三蟠競馬場開場式

 去る6月中旬から総工費7,000万円で岡山市江並に建設中であった三蟠競馬場が完成し,去る9月29日午前11時から新装成った同競馬場投票所で三木知事,浅越県会副議長,横山岡山市長,土屋馬事振興会長ら来賓約150名が列席して開場式が行われた。
 まず惣津畜産課長の開会の辞に次いで三木知事の式辞,藤本農地経済部長の経過報告,蜂谷県議会議長(代読),横山岡山市長ら来賓の祝辞があったのち,岡山県馬事振興会中電三蟠発電所,安田建設,熊谷建設,馬事振興会常務理事浅倉義則氏らに感謝状贈呈があって会を閉じた。
 なお第1回県営競馬は去る10月3,4,5,10,11,12日の6日間300頭の出場馬によって花々しく開催され,6日間の総売上は2,576万5,000円であった。当日は岡山駅前及び天満屋バスステーションからそれぞれ毎日15台の無料バスが運転されファンにサービスされた。売上成績は次のとおりである。

第1日 4,740,000円
第2日 4,397,500
第3日 3,707,400
第4日 3,589,900
第5日 5,129,400
第6日 4,200,800
 計  25,765,000

式辞

 爽涼の秋に当り本日三蟠の地に岡山県営競馬場の落成開場式を挙行いたしますことは,詢に慶祝に堪えない所であります。
 岡山競馬は昭和8年,岡山県愛馬倶楽部によって,岡山市原尾島に競馬場が設置され,爾来年と共に競馬施行面に種々の改善が加えられて参りましたが,昭和23年競馬法の改正に伴い県に移管になりました。県営になりましてからも関係各位の心からの御協力により,ますますその声価を県内外に発揮して参りましたことは,御承知の通りでありまして,ここに深甚なる敬意と謝意を表する次第であります。
 併しながら原尾島競馬場は建設以来20年間の星霜と,その間昭和9年,及び20年の前後2回の水害により,その施設は最近に於ては全く腐朽の極に達し,このままでは今後競馬を続行することは,人馬に危険を及ぼすばかりでなく,明朗公正なる競馬の運営にも多大の支障を来す虞れがあるようになりましたので,関係方面と充分なる協議の結果,この地に競馬場の移転を断行する事となったのであります。
 本日の落成式には観覧席こそ未だ完成を見ておりませんが,その他の建物は概ね出来上り,中・四国地方随一の競馬場として,堂々とその偉容を誇り得るものと信じて居ります。
 御承知の如く地方競馬開催の目的は,馬匹改良とともに地方財政の改善に寄与するものでありまして,競馬施行による益金は,県の公共事業に多大の貢献をなしつつあるもので,現在の如き地方財政窮乏のときには,特に大きい意義を有するものであります。更に競馬は数多くあるスポーツの一つとして,早くから一般社会にその価値を認められ,国営競馬におきましてはその最高レースに天皇賞が授与されている現況であります。本県といたしましては,県民の真に楽しいレクリエーションとしての競馬に対し,今後も従来に増して格段の努力を払い,明るい公正な競馬を施行することを念願といたしております。
 終りに本日まで終始変わらぬ御支援をいただきました関係各位の御厚情と,工事施行を担当せられた方々の御努力に対して,重ねて深謝の意を表しますと共に,今後一層の御協力御鞭撻をお願いする次第であります。
 ここに一言申述べて式辞といたします。

 昭和28年9月29日
岡山県知事 三木行治

経過報告

 岡山県営競馬場は昭和23年7月30日岡山県馬匹組合の解散と共に県に移管になったのでありますが,当時の建物は入場券売場1棟,観覧席2棟,厩舎6棟,その他検量所,審判所,出馬投票所,装鞍所等各1棟であり,競馬場敷地は民間から借上げました総坪数1万5,000坪余でありました。
 其の後警官,騎手控室,審判所,馬の診療室,各1棟,及び発馬機3台を新設し,更に厩舎観覧席等に,相当の補修を加えて参ったのであります。
 県が岡山競馬の施行者として最初競馬を開催しましたのは,昭和23年9月で,その後24年には岡山市が指定市の認可を受け,第1回競馬を同年5月開催し,爾来県と岡山市で競馬を施行して来たのであります。岡山市は認可当時は,年2回の開催であったのが,25年競馬法の改正により,26年から県と同じく年4回開催し得るようになった事は,御承知の通りであります。
 県営になりましてから施設の面はもとより,運営面にも種々改善を加え,会計経理を一新し競馬場内警備の充実を図り,新に競馬運営委員会を設けて運営の円滑を期し,競走馬の購入補助事業を行って,優良競走馬の導入促進をはかり,又騎手講習会を毎年開催して騎手の知識,技能,品位の向上に努めますと共に,レースの公正を維持するために賞金を逐次増加して,最近では230万円とし,今回の新設記念競馬では330万円を計上して,明朗公正なる競馬の実施に努力しておる次第であります。
 競馬場の施設は県に移管になった当時すでに相当老朽しており,之が改善に努めましたものの,何分原尾島競馬場は,低湿地であるため,年と共に建物の腐朽甚だしく,最早姑息的な修理では収拾のつかない段階に立ち入りました。
 ここに於て昭和26年当初から,県は真剣に移転を考慮するにいたっておりました処,同年6月岡山馬事振興会代表者から移転促進方陳情があり,いよいよ移転問題は表面化し,用地の物色に取りかかったのであります。用地につきましては爾来,慎重に県議会岡山市,馬事振興会その他各方面とも協議し,調査しました結果,中国電力株式会社の三蟠発電所アス捨場が最適であるとの結論に達し,同社の格別の御厚意に依りまして,この江並の地に決定を見たのであります。
 そして28年度当初予算に,競馬場新設費が計上せられ,5月20日,熊谷建設工業株式会社により,用地の埋立,整地の工事が開始され,更に7月28日からは安田建設合資会社と,熊谷建設工業株式会社により建築に取りかかり,2社の犠牲的協力によりまして,今般大要竣工し,来る10月3日から新設記念競馬を開催する運びとなった次第であります。
 施設の概要を御参考迄に申し述べますと,入場券売場,投票所,払戻所,観覧席,売店各1棟,厩舎8棟,その他審判所,検量所,事務所,倉庫,診療所,出馬投票所,装鞍所,各1棟,馬場1周1,000m,巾員23mで,何れも新方式を採用したものであります。
 県といたしましては,将来益々施設の充実に努め,又競馬施行面にも種々改善を期する所存でありますので,今後共一層の御援助を切望する次第であります。
 特に新設にあたって犠牲的御協力を戴いた中国電力株式会社,三蟠火力発電所及び岡山馬事振興会に対しては,深甚の謝意を表したいと思います。

 昭和28年9月29日
農地経済部長 藤本彦太郎

祝辞

 清涼の気みなぎる本日,待望久しかりし県営競馬場の移転落成式が行われるにあたり,臨席の光栄に浴し親しく関係各位にお祝いの言葉を申述べる機会を得ましたことは,私の最も喜びとするところであります。
 岡山競馬場の移転拡充が叫ばれ始めてから,本日迄には相当の年月を経過したのでありますが,これは時あたかも県財政の極度のひっ迫と,敷地その他の難問題が山積したためでありましたが,この度いろいろの困難な問題を解決して,この江並の地に移転が決定し,建設資材の不足と物価の不安定の悪条件を克服して比較的短期間に移転が完了し,このような立派な施設ができましたかげには,関係者各位の血のにじむような努力が払われたことと存じ,私はこの機会にこれらの人々に対し万腔の敬意と感謝の意を表するもので御座います。
 馬匹の改良をはじめとして,その経営を通じて県財政に寄与し,又リクリエーションをとおして県民の体位の向上に資するという,遠大な目的をもつこの競馬場が,ここに面目を一新して誕生したことは,岡山県畜産界に一新機軸を画するものとして,その意義はまことに大きく,県民皆さまと共に,その竣工を心からお喜び申上げるものであります。
 ひるがえって当競馬場の敷地の広大なことは,前途益々有望な立地条件でありまして,今後も機会あるごとにその施設の充実完備をはかられ,所期の目的達成に遺憾なきを期せられることと存じます。
 競馬場が兎角打算のための運営に終りがちなのでありますが,本場はこの弊を一てきせられまして,真に畜産界に直結した実際に適した効果を発揮せられますよう,関係者各位の一層の御じん力をお願いするとともに,本競馬場の発足と将来の発展を祝福いたしまして,私の祝辞といたします。

 昭和28年9月29日
岡山県会議長 蜂谷初四郎

祝辞

 時恰も高天肥馬の候,ここに目出度く岡山県競馬場が完成しましたことはまことに御同慶に堪えません。
 競馬に就いては,常に功罪2つの論が行われておりますが競馬のように,古来多くの人々に愛好せられ,また愛好せられるに,足るだけの魅力を具えているものに就て,各種の論議あることは,当然であると言わねばなりません。
 然し所謂馬種改良という大きな目的の達成は別としても,競馬が大衆のよきレクリエーションとして果して来た大きな役割は,決して見逃せないと思います。人馬一体の力強い動きの中に,爽快な喜びを感ずるのは,むしろ人間の深い本性に根ざすものであり,これが欧米に於て最も洗練されたレクリエーションの1つとして,長い歴史と伝統を謳われているのもまた故なしとしないのであります。要は競馬の罪としてあげられている,不健全,不明朗なものを捨て去って,県市民が戸外の清々しい空気の中に一日を心から楽しむ事のできる,真に立派なレクリエーションの方法として,これを発展させてゆくことであります。こうすることこそ,競馬を本来の正しい姿に立ちかえらせる道であり,競馬の生命を今後長く伝える道であります。我々は公営競馬の使命に鑑み,この新しい,完備した,岡山県競馬場の落成を契機として,こういう理想的な競馬の実現の為めに努力したいと思うものであります。
 秋晴れの郊外の空気は清澄を極めております,私はここに華やかに繰り展げられる県営,市営の競馬場の完成に力を尽された関係の方々に心からお喜びを申し上げますと共に,この競馬場が県市民のレクリエーション・センターとして,今後益々発展を重ねられんことを切にお祈り致します。

 昭和28年9月29日
岡山市長 横山昊太