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落穂拾い

◎第16回中国連合畜産共進会と第1回全国和牛共進会も盛会裏に無事終了した。岡山県は前半の連合共進会はあまり香しい成績では無かったが,後半戦に入ってやっと首相盃を獲得して面目をほどこした。それにしても息もつまる様な8日間であり,一喜一憂,関係者は全くつらい思いをさせられたが,終ってしまえばホット一息である。この期間を通じて各所に落された話題を拾ってみることにしよう。

◎先ず宣伝戦は今年もあざやかであった。アドバルーンは秋空に高く挙り,「岡山の牛とひよこ」は一極明瞭に浮かび,最後には「日本一の母牛は岡山牛」となって首相盃の貫祿を天下に示したのである。文書戦となると各県共思い思いに多種多様なリーフレットを出したり,散らしを出したりしていたが,圧巻は何んと言っても「岡山の畜産」であった。畜産課を総動員しての資料の蒐集と,敏腕加本技師の編集によって断然他を抜いていた。加えて「岡山の牛とひよこ」も亦デザインの斬新さと色彩の明るさで好評を拍した様である,宣伝戦だけは今年も亦ヒットであったと思うが,諸賢の御感想は如何。

◎行政的審査と言う言葉が出て来た。洵に便利な幅の広い言葉である。審査員にとっては重宝な言葉であるかも知れないが,出品者にとっては有難迷惑な言葉である。割り切れない気持ちで聞いたのは自分独りではないらしい。審査委員長の開会式の審査方針の説明はそれぞれの関係の審査標準に基き現状により審査をすると言うことであったが,見方によると審査標準が何処かえ雲隠れしたり,疲労してぐったりした動物が上位に入賞したりしてみると,出品者も関係者も何か釈然としないところがある。そんな処へ行政的審査なんて言う言葉が出て来ると全く人を喰った様な言葉になってしまう。軽い意味の言葉であったかも知れないが大地区の共進会等で不用意に出すべき言葉では無かったと思う。あくまで標準による現状審査であればこんな言葉は出ない筈である。この言葉の様な審査の行われないことを願って已まない。

◎畜産共進会は畜産人の祭典である。畜産人は一様にこの共進会を楽しみにして集って来るのである。あちらにもこちらにも,新旧,日々,新々顔がうれしそうに話合っている。何年ぶりか,何10年ぶりかに顔を合せて,お互いの頭をなでながら大笑し合っている姿は洵にほほえましい風景である。特に目立つのは釘本先生のお姿である。杖をひいて不自由なお体を,ホルスタイン登録協会の小林さんが支えて,会場を廻っておられる姿は,全く畜産界の至宝であると言う感が深い。全国から集った畜産人は有名無名の人達で何万となったか判らない。広島と言う大きな都市に入ったのでその存在はあまり目立たなかったかも知れないが,然し広島市の中心部にはたしかに人の動きが活発であった。宿舎の関係や会場の関係はあるとしても,畜産の共進会はも少し畜産関係の深い土地を選定したら更に一層効果が上るものと考えられたことである。

◎2つの共進会を同一会場で前後2期に分けての開催には参加者が参ってしまった。搬入から積出し迄完了するには,会期の前後に尚相当の日数を要し,主催県も参加県も相当こたえた様である。開催方法については将来よく検討してほしいものである。岡山県が当番になるのはまだ10年も先の話ではあるが,今から充分研究しておきたいことである。

◎全国和牛共進会の最終日仮装行列が行われた。各県それぞれの思いつきで参加することになっていたが,正直に参加したのは中国の数県で後は見物だけであった。上位入賞の県は参加したがその他は参加しないと言うのは何か度量が狭い様である。畜産のお祭りであってみれば各県も大いに参加して,大いに騒いでもいい筈の様な気がする。

◎出品技術と言うか,選抜技術と言うか共進会出品の家畜を揃えることは相当むつかしい様である。補欠で出たものが優位に行ったり,上位のものがどん尻になってみたり,現状審査と言う事で逃げられるかも知れないが,選抜した者にとっては苦しい試練である。今回の共進会の一つの特徴は全国共進会に出品されたものが又顔を出していたことである。従来の共進会のエチケットとして上位の共進会に出品したものは同クラス以下の共進会には出品を遠慮する習慣になっていた。従って選抜に当ってもこれを考慮していたが,出品物を見て驚いた次第である。共進会規則に出品が禁止されていない以上何を出しても良いことになるので文句も言えないことになる。然もそれらが何れも優位を占めるのは当然であってみれば何か割り切れないものを感じたのである。他県から文句が出たら引込める。出なければそのまま通すと言うのでは出品県としてもいい気持ちはしなかったことと思う。今後は国の機関でも,県の機関でも個人でも,団体でも,その区域内のものは全部文句なしに出品する様にすればお互に励ましにもなるし,国も県も力が入ることになる。個人との一緒の審査が悪ければ2部なり3部なりに分けてもよい。お互の技術を公開し,競うのもよいではないか。(胖)