ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和28年11・12月号 > 両陛下を御迎えして

両陛下を御迎えして

◎四国からのお帰りを再び岡山に立寄られた天皇,皇后両陛下は27日午前9時15分,宿舎鶴鳴館を発たれ,池田隆政,厚子夫妻のお待ちになる岡山市内,上伊福別所の池田牧場をおたずねになった。ここで園内を一回りされたのち池田邸で昼食をともにされるなど楽しい一ひきを過され午後1時5分,お別れを告げて岡山駅に向われ同1時30分岡山発列車で一路京都へ向われた。

◎隆政氏は父宣政氏らと早朝から従業員を指図して準備に大わらわ。厚子夫人もうれしいと見えて両陛下到着の1時間も前から宣政氏夫人と売店附近まで出てきて何か落ちつかない様子でニコニコしていられた。
 9時35分動物園正門にお車が着いた。まず皇后陛下が降りられ,ついで天皇陛下が降りられ,お迎えする宣政,隆政両氏夫妻に笑顔で会釈され,売店前のオットセイを御覧になった。隆政氏らが餌の生イワシを投げてオットセイを近くへ寄せ,帽子を右手に持たれた天皇陛下も用意された割バシをも使われずに左手で3尾ほどつまんでお投げになった。すぐうしろで皇后さまがのび上るようなお姿で顔一ぱい笑みをたたえて御覧になっている。オットセイの愛きょうたっぷりの歓迎ぶりに天皇陛下も微笑されていた。ついで宣政,隆政両氏夫妻の案内で山の中腹にたてられたライオン,トラ,キリン,カバをはじめ園内の動物や小鳥をみてお歩きになった。

◎鶏舎と孵卵室を御覧になり,今朝孵化したばかりのヒヨコを御覧になり「かわいいね」と御言葉があった。各種日本種鶏を御覧,次いで乳牛の放牧風景を御覧になった。このとき附近高台から「天皇陛下万才」の声がわきあがった。天皇陛下は帽子を右手に取られかるく何回となく打ち振られ歓迎に御応えになった。

◎天皇陛下はどちらかといえば神経の非常に細いお方のようだし,皇后さまはおっとりしておいでのようだった。神経の細い点では歓迎の人たちに何回となく帽子をふられる点でもお察しできる。又両陛下はカメラマンには特に親切に無理をきいていられた。しかしこれに比べて警備はなかなか厳しかった。警備に万全をつくすのはけっこうだが,行過ぎはどうかと思う。入場者の制限,写真の制限は一体どこがやったのか。宮内庁がうるさいからと警備の某氏は言っていたが…。側を取りまく連中が天皇陛下を国民から遠ざけるような気がした。
 何といっても畜産岡山と両陛下の関係は密接であるにも拘らず,天皇と家畜の結びつきの写真が写せなかったのは残念だ。読者が最もほしがっている写真なり記事を報道しようとわれわれは善意で最大の努力をはかっているのにそれが阻げられたのは読者のために残念であった。

◎両陛下が牧場内を一巡されるとき三木知事も同行を宮内庁の役人から断わられた。◆御家族だけで◆というのが理由だったらしいが,そのくせ宮内庁の役人は6人も7人もぞろぞろついていった。さすがの知事もちょっとフンガイしたのももっともだと思う。陛下はお帰りのお言葉として◆厚子をよろしく◆といわれているが,こうした役人根性丸出しの行動が県民によい印象を与える筈はない。

◎半年以上の才月をついやしてこの程出来あがった70頁からなる岡山畜産を写真で表わした小誌◆岡山の畜産◆を両陛下の随行者50名の方々に見て頂いた。陛下にも隆政氏から御伝言願えた筈である。
 両陛下の御来岡みやげは、池田夫妻からは手づくりの卵と蜂蜜であった。皇室は岡山県畜産人にとってなお一層したしさを加えた次第である。

(多田昌雄技師記)