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冬の家畜衛生

 これからだんだんと寒さが加わって参りますが,冬の家畜衛生について2,3注意事項を記してみます。
 まず冬にはカルシウム分の不足を来さないように注意しなければなりません。家畜が健康を保つためには飼料の中に燐酸とカルシウムが適当の割合に含まれている事が必要なのですが冬中殆ど稲藁と麸,糠,麦などだけで飼っている農家の方があることと思います。稲藁は乾草や青草とちがってカルシウム分が非常に少く又麸,糠,麦などには燐酸は多量に含まれているのですが,やはりカルシウム分が少いのです。このような餌で飼っていますと,骨軟症といって,骨の軟かくなる病気にかかり,「びっこ」になったり骨が折れたりしやすくなり,春の農繁期に使うことが出来なくなります。
 これの予防として,牛や馬の餌には毎日カルシウムを20g位ずつ加えてやる事が大切です。又乾草やエンシレージ等作られている農家は,もちろん与えて頂くのでありますが,他の方法として稲藁を石灰水につけて石灰藁として与えますとカルシウム分の補給とともに藁の栄養分が消化されやすくなり非常に有利です。
 次に注意しなければならないことは冬になりますと,運動や日光浴が不足になりがちなことであります。長い冬の間家畜は暗い小舎の中に閉じこめられがちですが,天気のよい日には出来るだけ野外に出して日光浴をさせ又適度に使って運動不足にならないようにして下さい。そして使役により汗を流した時には藁などでよく皮膚を摩擦して乾してやり急に冷えて風邪などひかさぬよう気をつけましよう。
 次に家畜の寄生虫についてですが,冬は寄生虫の駆除に最も適した時期です。皆さん方の家畜の体の中に寄生虫がいると,折角与えた餌も「み」にならず貧血を起したり,栄養失調になったり,他の病気にかかりやすくなったりして,死ぬことがあります。
 冬の間に寄生虫の検査をしてもし寄生虫がいる事が分りましたら早速駆虫して下さい。今年は雪も多いそうですし,1日1日と寒さも増して参りますから,すき間風を防いで畜舎を暖かくしてやり,充分注意して皆さんの家畜を丈夫に育てて春の農繁期にそなえましょう。又冬飼の良い悪いは春の家畜の発情に影響しますから特に気を付けて頂きたいと思います。