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巻頭言

新春の夢想

惣津律士

 明けまして御目出度う存じます。
 輝かしい新春を迎えられて,有畜農家の皆様にはさぞかし御希望に満ちて居られる事でしょう。
 1年の歳月は長いようですが,振りかえって見ると,案外に短かく,ありし日々が走馬燈のように脳裡をかすめますが,概してなつかしい想い出が数多く浮び出し,苦しかった事も薄いベールをかぶって心をやわらげてくれるものです。
 さて本年の抱負はと聞かれますと,何から御話してよいか解りませんが,時代の寵児となった畜産を正しい軌道の上に走らせる事ではないでしょうか。
 有畜と言う言葉は耳にたこになるほど,皆様方は聞かされて参りました。私もこんな言葉は日本の書籍から早く消え去って,畜産を十二分に加味した農業こそ,あたりまえの農業として,大手を振って通る日の早からん事を心から望んで居ります。
 昨年の冷害等の災害ではたしかに畜産に対する認識が一段と強化されました。
 畜産物が農家の生産はもとより消費者の生活の中に於て,米や麦等と入れかわっているような政策が畜産物に取られ,全国知事会議と言えば,畜産について口角泡を飛ばすような時代になりたいものです。
 こんな時代になると,土地の生産力は増大して,農村の生活は向上し,休日には家族そろってのびのびと文化的休養を味わい得る事となりましょう。
 私はこれは決して夢ではなく,国民の反省に依って必ずなしとげられるものと固く信じて居ります。
 本年も昨年以上に努力しなければならない問題が数多くあるようです。
 お互に健康で,元気に,明朗な社会を畜産に依って造るべく頑張りましょう。
 皆様の御多幸を遙に御祈り致します。