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編集室から

◎先ずもって新年の御慶びを申し上げます。本年は午歳でありまして畜産界には一段と御縁がある様であります。何とぞよろしくお願い申上げます。

◎備前の尻餅と言うことがある。新太郎少将光政公が領下の人民が皆斉しく正月餅が食べられるようにとの御心遣いより考え出された制度である。洵に面白いことであるが,化学肥料の発達した今日ではこの様な制度も何時の間にか無くなり,その代りに餅の食えない人間も出来て来たわけである。昔の人々の話は何か人情温かく,互いに喜びを分つ様な気分がうかがわれるが,昨今は人情は紙の如くに薄くなった。せめてお互い同じ釜の飯を食っている畜産人だけでも人情温かくやって行きたい思う。

◎原料乳問題は今年も町や,村の話題をにぎわすことであろう。昨年の始めには全国的に値下げの傾向が表われていたのに夏乳から引続いて鰻上りに上昇して遂に全国一の乳価を出してしまった。外からはMSA問題で乳製品の輸入が喧しく言われ,国内消費者はバターの不足を訴えている。一面には草地農業の提唱と,高度集約酪農の問題が大きく浮かび上って来た。問題は良い乳を安く,豊富に供給することと,消費者が進んで消費してくれることである。食糧不足の一段とはげしくなって来た今日,乳製品をうんと使って主食の節約を行ってほしいものである。

◎新年号は例年通り各係主任に29年の抱負を書いて貰った。歳と共に躍進する畜産の原動力はこれを企画し,軌道に乗せる人々の頭にあることを考える時,今年の希望と夢を実現させるために一段と努力したい。畜産を面目にこだわることなく,伸びる時に伸びる部分を伸ばすことが発展の一歩である。今年も可能な部分より伸ばして行きたいものである。

◎編集室も誕生以来5回目の正月を迎えた。毎年のことながら今年こそはと張り切っては見てもどん栗ばかりではどうにもならないものである。よろしく御援助をお願いする。