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和牛の冬飼いの改善

 和牛の生産地として知られております岡山県の和牛の冬飼いの方法は,古くからのならわしになれたせいか,ごくお粗末な取扱い方で,殊に草の豊かな夏分は別としまして,冬の間の飼養管理に至りましては決して満足できるものではありません。大いに改善工夫しなければならないと思います。
 稲藁と米糠を主体にした飼料で飼うために,蛋白質やビタミンやカルシウムが大変不足して来ますので,その結果として,せっかく秋に肥っていた牛も次第に痩せて感冒とか,その外色々な恐しい病気にかかりやすくなりますし,又妊娠中の場合は,胎児の発育が悪くなって早産や流産を起したり,骨軟症のため弱い子供とかかたわの子供が生れることも度々あります。
 なお春になっても発情が来ませず,従って子牛の生産もおくれ勝となり,3年に2頭か,2年に1頭位の割になってしまいます。
 有畜農家創設事業により子牛がどんどんよその県へ売られてゆくため,最近は非常によい値段で取引されておりますので,毎年子供を生ませると,生ませないとでは農家の経営に大きくひびきますので,これを有利にみちびくためにも是非冬飼いの改善をして頂きたいと思います。
 それにはまず稲藁の外に乾草やエンシレージを充分与えるほか,蚕糞,蚕沙の乾したもののいも蔓の乾したもの等を使って牛を栄養不良から防ぎ,生産を高めることに努めなければなりません。
 次にこれらの飼料の与え方ですが,寒いからといって,何んでも煮て与えるというやり方は改めたいものです。煮て与えたためにかえって悪くなる飼料(大豆粕,ナタネ粕など)があります。つまり蛋白質飼料は煮ることによって蛋白質がかたまって不消化になり不経済ですから充分注意しましょう。
 なお麩湯を与えられるのを見受けますが麩湯にしますと,すぐ第4胃に入ってかみかえしが行われませんので,それだけ消化がおくれがちになります。ですから病気とか産後以外は他の粗飼料等とまぜて湯を加えてよく手でもんで与え,より食いしないように与えて下さい。又食塩とカルシウムを与えることを忘れないように心がけ,水も十分与えて下さい。