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編集室より

◎暖冬異変と言われるほどあって,今年の冬は全く暖か過ぎて,生活は楽だが農作物の方は一寸心配になって来た。一部にはソ連が間宮海峡を閉鎖したために,寒流の動きが変り,東北方面は冷害を受け,日本海方面は暖かくなって来た。これからはこの暖かい冬があたりまえであって異変ではない,と見て来た様なことを言う人もある。冬の暖かいことは吾々の様に寒むがりの人間にとっては全く有難い話であるが,若しこの暖冬が毎年続くとなれば日本の農業は根本から改められるので大変なことになって来るわけである。

◎M・S・A,問題は新聞紙上を賑わし乍らどうにもならない線に来た様である。むつかしいことは言わないが,過剰農産物をおしつけられ,国内の農業経営が破壊されないように願いたいものである。これに関連して現在の原料乳価が何時迄維持出来るかが問題になって来た。市乳の需要が増加して来た今日,急激な変化は考えられないとしても,生産費の軽減を図ることは最も重要な問題になって来た。幾ら乳価が高くても,牛乳を安く生産すれば,それだけ農家の懐は脹れて来る筈である。酪農家たる者は心しなければならない。

◎酪農と言えば世は挙げて酪農熱で,毎日の新聞を見ても何処かに酪農の記事の載ってない日はない様になった。誰もが畜産を語れば先ず酪農である。岡山県の和牛が今にも乳牛に変ってしまいそうな心配をする人も出来て来た。然し考えてみれば酪農は時代の脚光を浴びただけであって,12万頭の黒牛に対して僅かに5,000頭の存在である。岡山県の畜産の大宗は何んと言っても和牛である。乳牛は牛が白いので1頭でも目立つだけである。つまらない心配をするよりか,伸びる処を伸ばし,畜産全体を伸ばすことが一歩前進ではないか。酪農程立地条件のむつかしいものは無く,何処にでも入り得ると言うものではない,条件のよい処は大いにやるがよく,悪い所はどんなに研究してみても入るものでは無い。指導者はよく立地条件を考えて,その地に最も適したものを奨励してほしいものである。

◎例年の事ながら予算編成期に入った。国の予算が影響して県も大変である。産業経済費が何処迄認められるかが今後の問題である。健全財政の立前上相当の緊縮は当然のこととは考えられるが,農村の税負担が軽いことと農政面の圧迫とを一緒にして考えられては大変である。農村が栄えることは国が,県が栄えることである。農村振興のために充分な予算を計上してほしいものである。