ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年3月号 > 和牛改良は不良因子の淘汰から

和牛改良は不良因子の淘汰から

 和牛を低度文化の家畜という人もあるが,何れにしても和牛は日本農業,殊に水田経営になくてはならない家畜であることはいうまでもない。然もこの肉質は世界一の折紙がついている現況である。和牛は我々の祖先がこの国に渡来した時,一緒に連れて来たものと考えられ,爾来人口の増加に伴い増加の一途をたどって,昭和28年には実に250万頭に達している。戦前最高の190万頭(昭和19年)から見ると9年間に60万頭の急増を示している。戦後のこうした現象は主として従来の主要馬産地であった東北,関東地帯の農家が馬を和牛にのりかえた結果で,これらの地方は好適な立地条件と相まって今後益々増加してゆくものと思われる。
 戦後の農業型態の変革と,全国的分布の変遷から和牛の経済的価値についても,従来の使役本意の考え方から用畜化(肉乳の利用)へのかん心が高まって来ている。
 和牛の改良には,登録の普及,蔓牛の造成,優良な種牡牛の設置,共進会の開催等の施策を推進してゆくことが必要であるが,改良の基礎はあくまで厳正な登録にあることはいうまでもない。昭和19年8月までの登録は改良和種としての登録であったので黒毛和種として固定種になった以上当然登録規程も改正されなくては意味がなくなり25年10月現行の規程に改正されたのである。この改正の要点は次のとおりである。
 一.遺伝因子に重点を置き,奇型牛や失格牛をなくすること。
 二.登録牛を基礎に改良すること。
 以上二つで従来は血統と体型に基づき主に外見から判断して登録し改正されて来たのであったが,固定種となった以上はあくまでも失格や不良形質の出ないことに重きを置くことが必要になって来ている。即ち生産された子牛に不良形質のものの出ないようにすることが必要である。
 不良形質の出現は両親共に不良因子があって,それが相似条件を伝えた場合のみ出現するのであるから,不良形質出現の罪は両親にあるのである。しかし牝は1年1頭を生産するのみでその罪は種牡牛に比べて軽い。人工授精のなかった時代は1頭の種牡牛で100頭から200頭位自然交配し,その弊害は比較的少なかったが,現在のように1頭の種牡牛がその精液を何百何千という牝に授精される時代になると,その影響するところは極めて大きい。もしも不良形質をもつ種牡牛がおって,その交配により1頭でも不良形質が出た場合はその外の交配された牝より生産する子牛は全部悪い因子をもつことになり,せっかく改良されたその地帯の和牛が根本からくつがえられることになるので,経済的打撃は極めて大きい。かりに豚尻,単蹄などが出現した場合,これをヤミからヤミにほうむってしまったとすると,その交配種牡牛はいつもこの不良因子をその地帯にばらまくことになる。そしてその交配圏内の和牛は不良因子を持ち続けることになる。そうした場合その地帯の声価の失墜とともに経済能力は低下してしまう。このようなことのないようにその種牡牛はなるべく早く更新することが望ましい。種牡牛の公益性を十分考えて今後の和牛の改良を行わなければならない。この意味で指導者,当業者一丸となって不良形質の淘汰にすすむことが今後残された課題である。