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春びなの生産見込200万羽
卵価安はこうして防ごう

 昨年の養鶏界は戦後最高の活況を呈し,養鶏農家の経営は好転したため,飼育羽数を更に増加する者或は現金収入の取得を狙う都会地のサラリーマンや零細農家の養鶏熱が旺んとなり,県内の各孵化場に春ビナの予約注文が県内外を問わず殺到して既に売切,予約中止を行う孵化場もあって,同業者は嬉しい悲鳴をあげており,春ビナの生産見込は200万羽台を突破するのではないかと見られている。
 このような飼育熱を煽った要因と今後の動向を探って見ると,養鶏採算を左右する最も大きな要素である鶏卵と飼料の価格の推移が昭和26年をそれぞれ100とすると卵価は27年には97に,28年は106となっており,飼料については養鶏飼料の代表ともいえる玉蜀黍の価格は昭和27年に103に28年には83となっている。このように27年は飼料が暴騰したにも拘らず卵価は低落し,養鶏家は鶏の淘汰による飼育羽数の縮減を余儀なくされ,27年秋の成鶏羽数は前年の同期に比して2−3割の減少を見た。ところが28年に入ってから減少した羽数の鶏卵生産量では漸増する需要に伴わず,卵価は前年同期に比べて絶えず高値を保ち,一方27年末公布された飼料需給安定法の施行によって飼料の供給が,やや円滑になったばかりでなく,その価格も安定したので養鶏の採算を至極有利に導き養鶏熱を昂めた結果,ヒナの需要を激増せしめ昨春のヒナの生産は戦後最高に達し,その育成された若メスは全国的に見て2,000万羽以上と予想され,更に昨秋の秋ビナの生産も好調であったのでこのまま進めば本年の成鶏羽数は戦前の飼育羽数に肉迫し,しかも鶏の産卵能力は戦前に比べ著しく上昇しているので羽数増加と相俟って鶏卵の出廻りは激増するものと見られている。
 近年我国の鶏卵消費量は激増の趨勢にあるが,一般国民所得が急激に上昇しない限り,昨年の卵価では消費数量の著しい増加を期待することは困難と考えられ,今春の予想される鶏卵の出廻り増は必然的に卵価の低落を余儀なくされるかもしれない。勿論鶏卵生産費の7−8割を占める飼料費を卵価に伴って低下せしめることが可能とすれば問題は簡単に解決できるが現在の処,鶏ばかりでなく他の家畜も増殖されつつある傾向は更に飼料需給を困難ならしめることも予想せられるので飼料需給安定法の運用による卵価対飼料価格の均衡維持は前途必ずしも楽観を許さないものがあるので,養鶏家は次のような対策を講じて来るべき事態に対処すべきではないかと考えられる。
 養鶏家の飼育する一群の鶏の中には生産した鶏卵代金で消費した飼料代金を償い得ない寡産鶏がいるのが常である。一群の総収入において欠損を来さない限り採算上何らの不安を感ずることなく飼育を継続しているものが多い。このような経営は昨年のような卵価の高いときは何等の苦痛を伴わないが卵安飼料高の不況が来れば忽ち経営難に陥り多数の養鶏家は飼育鶏の羽数整理を急ぎ食鳥価格の暴落を招き二重の損失を蒙った事例は屡々聞くところである。養鶏家は昨年の卵価高による安易な夢を捨て,常に飼育鶏に対して周到な観察を施し,駄鶏の淘汰を励行し,鶏卵収入と飼料費支出の均衡保持により経営の安定を図る必要がある。
 次いで大切な事は鶏卵の商品価値の向上と共同事業の推進である。戦前においては定時集卵,選卵荷造りの改善整備によってその商品価値は相当高く保たれていたが,戦後の混乱によって鮮度その他の品位の低下を来たし,近時選卵荷造改善が市場側より強く要望されるようになり,産地別の価格差は出廻り増と共に愈々大きくなるから生産者は勿論,中間業者であっても団体の共同の力によって商品価値の向上と流通の円滑を図り,消費の拡大を期することが必要である。
 その他飼養管理の合理化など経営対策として重要な事項は多岐に亘るが,要するに無計画な飼育を戒め時宜に適する規模をもって生産費の低減と中間経費の節減に努めて経営の安定を図ることが目下の急務であると関係者は見ている。