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巻頭言

蒜山高原への想い

惣津律士

 岡山県の北海道とも言われる蒜山高原の産業的開発に対する県民の要請は戦後年と共に積極性を帯び,国の総合開発地域としての指定はもとより県及び岡山大学に依る基礎的調査の進展と共に漸次その壮容がクローズアップされ,更に湯原ダムの建設さてはジャージー種牛の導入に伴う高度集約酪農地区の建設に依ってその実現可能の見透しが緒についた事は本県産業界に取って何より喜ばしい事と思って居ります。
 私は蒜山高原地帯の開発には先ず交通網の確立が先決条件である事を率直に認めますが,併し乍らこれを待っていたのでは本地帯はいつまでも暗黒地帯として取り残される運命にありますし,そして現在のような農業経営の様式では益々その度を加え土地の荒廃の一途をたどる事は事実であります。
 かかる現状に対し,新しい息吹きを与えて希望をもたらすためには,酪農を中核とした新しい農業営業に移行するの必要性は既に調査に依って明確化されていますが,はたしてこの一帯の農家が真剣に自主的に立ち上るだけの意欲を有するやに疑問をもつ事は誰れもでありましょう。私も一昨年までは同様の感を抱いていた一員ですが,其後高原を訪れる度毎に酪農に依る農業革命に対して農家が真剣にして強固なる意志とそして,尊い団結力を有するのを痛感するに及んで,この地帯は必ず成功し得る事を信ずるようになり,而も何はともあれ産業振興の第1歩として酪農に依ってこの一帯を救うべしとの感を益々強くしている現在であります。
 併し乍ら私はこの実現にはあまたの困難のある事は勿論認めて居ります。そして国及び県当局の強力なる指導と援助そして素直な受入体制がととのわなければ目的達成の出来ない事は申上げるまでもありません。
私共はこの際,一切の偏見をすてて,叡智の総力を結集して蒜山高原の同志に愛の手をのばそうではありませんか。