ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年5月号 > 鶏のニューカッスル病 近県に発生警戒を要す |
鶏の恐ろしい伝染病,ニューカッスル病が大阪府下に推定30万羽位大流行している。
この病気はアメリカ,印度,中国,濠洲,フィリッピン,朝鮮等に発生が多く,日本では昭和26年から埼玉,神奈川,東京,茨木,岡山,京都の各都府県に発生したが,本年度においては,東京都,山口県に次いで,今回大阪府に発生したのである。
岡山県では昭和26年後月郡下に発生して非常な損害を受けているが,今後鶏卵供給地である大阪方面からの病毒の侵入を厳重に防止すると同時に,警戒をしなければならない。
以下ニューカッスル病について簡単に記してみる。
ニューカッスル病の病原体は普通の顕微鏡では見えない非常に小さい細菌でヴアイラスともいわれている。
この病気の最初に現われる症状は,元気,食欲共になく,水様緑色便を伴い,これと殆んど同時に,呼吸が苦しくなって,キャッキャッとかギウギウとか色んな奇声を出し,起立不能となり,歩くことができなくなる。又これが急性に来た場合は元気,食欲が共になく,起立不能となり,時には頭を上下に振るとか,頸を曲げるとか色々な痙攣性の神経症状を呈す。勿論産卵は休止し,発病後4−6日で死亡する。特に雛は抵抗力が弱いので,この病気にかかると殆んど死亡する。成鶏は抵抗力が強いので死亡率は低く,10日位で快復するが,中には神経症状を伴って来ることがある。
たとえ快復しても1ヵ月から1ヵ月半位は産卵を休止する。この病気にかかった鶏の糞尿,唾液の中には病毒が排泄され,伝染の源となる。特に注意しなければならないのは,この病毒におかされた鶏の産んだ卵は病毒を含んでおり,これがため,快復後の卵も種卵としては利用できない。
一.この病気には極めて有効な予防液があるから予防注射が予防上最も有効である。
本病は前述したとおり,親鶏は比較的病状が軽く経過し,死亡率も余り高くないから一般にはたいした伝染病でないと間違った考え方をする嫌があるが,伝染力は根強くしらずしらずの間に蔓延するから次の諸点に留意することが必要である。
一.本病に似た症状する鶏を発見したときは健康鶏と分けて直に最寄りの家畜保健衛生所畜産課,又はその他獣医師に連絡すること。
二.鶏舎や孵卵器はクレゾール・アルカリ剤(ロジール)フォルマリン等で消毒し,みだりに人の出入することを禁止する。
三.消毒盤,消毒手洗を設備すること。
四.養鶏組合や養鶏家がお互に連絡をし合い自衛組織を作り異状鶏の早期診断を図ることである。
五.更に大切なことは今回,岡山県の鶏卵の供給地である大阪府に大発生したことであって,発生地から大阪市内に出荷されているから病毒に汚染された疑がある箱が岡山県に入って来ることが予想されるので,鶏卵用箱の買入れは絶対に取り止めることが重要である。
六.本病は死亡率が低いことか病状が軽度で回復するものがあると言って,決してその防疫を軽視することはできない。若し本病が全国的にまん延した場合,恐らく本病は年々根強く発生し,養鶏界に蒙る被害は想像以上に大なることが推測せられ,養鶏王国のアメリカにおいてさえ,本病発生による年々の被害は数10億円に達すると言われている現状を思い,この際関係者は一致協力して本病の侵入に対処し,日夜努力することが必要である。