ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年5月号 > 梅雨期の鶏の飼養管理

梅雨期の鶏の飼養管理

岡山種畜場 川崎 晃

 梅雨期6月の岡山地方に於ける雨量は年を通じての月平均雨量91.7oに対して6月は160.8oの約1.6倍に相当する量であり,1月の4,5倍であって,高温高湿で鶏にとっては最悪の時期であります。しかし反面卵価はようやく上騰の時でありますので周到な飼育管理に依って悪条件を克服して能力を十分発揮させて収益を上げて行きましょう。

梅雨に対する準備

 此の時期は全ての細菌類,寄生虫の繁殖し易い時でありますから鶏舎の内外を乾燥し易い様にし,又清潔にする様に努める事が大切であります。之が為にも排水の悪い場所に於ては鶏舎並に運動場の周囲に排水溝を掘り出来れば運動場には砂質土を土盛し周囲より高めにし前方に若干の傾斜を持たせて舎内に水の浸透するのを防ぎましょう。
 鶏舎は梅雨に入る前に雨漏りの箇所を修繕し,窓が少なければ新しく窓を設けて通風を良くし,舎内の乾燥に努めましょう。床面は敷藁堆積法等により乾燥に努めるか,又は新しい乾燥した敷藁を遂次追加して鶏の運動を促進すと共に床の乾燥に努める事が必要であります。床面が湿るのは天候に因るのみでなく1坪当りの収容羽数も大いに関係がありますから収容羽数が多い場合は徒食寡産鶏を淘汰して1坪当り10羽以下にし密飼を止めましょう。又産卵箱,給餌器具は不潔になり勝でありますから常に清潔にし乾燥に努めて汚染卵の予防,疾病の予防に努めましょう。

飼養管理

 飼料の点でありますが,3,4,5月と良く産んだ鶏はこの梅雨期の飼養管理が悪いと急に産みづかれが出て来て,卵価の上騰期に休産に傾くものでありますから今迄良く産んで居ればそれだけ一層前記の管理の面に於て,又特に飼料の面に於て十分注意する事が必要であります。梅雨時には人間でも蒸し暑くて食欲の減退する時でありまして,まして鶏は不自由な鶏舎の中にとじこめられ,今迄の産卵により疲労して来て居り食欲は減退し,餌の摂取量が減少しますから鶏の嗜好に適する良質の飼料を選んで必要の摂取量を減らさぬ様に努め,極力産卵と体力を維持する様に心掛ける事が大切であります。此の時期には高温多湿の為に餌が変質醗酵し易いのですから練餌の場合は水分を割に少くします。若し鶏の摂取量と給与量に差がある為に餌が残って酸敗した場合に次回の餌をその上に又与える様にして行くと鶏の食欲は増々減退するのみでなく腸内の異常醗酵から下痢を起して産卵率を低下させます。鶏の食欲に細心の注意を払い過不足のない様に給餌して行きましょう。尚飼料の貯蔵でありますが,之にも細心の注意が必要でありまして,貯蔵場所に思わぬ雨漏りの為に甚大な損害を被る事がありますから特に大雨の時は見廻って適切な処置を致しましょう。又貯蔵場所は通風を良くし,床上に台木を敷きその上に積み,時を見て積み替えを行う事も必要であります。此の頃の飼料の購入に当っては良く注意し深部迄入念に検査して受入れる事が大切であります。醗酵発黴した飼料は絶対に給与しない様に注意しましょう。

鶏痘の予防

 次に鶏痘,ワクモについて述べて見ます。
 鶏痘は入梅頃より秋にかけて発生するものであって,冠,肉髯,顔面,脚等に発痘するものであります。本病は初め極く小さい栗粒の様な白い又はやや灰黄色の疣を生じ,次第に大きくなり,大豆大の黒褐色の痂を生じ,その痂が集合すると大きくなって来ます。本病は雛にも成鶏にも発生するものであって,特に雛,若鶏に発生の時被害が著しいものであります。鶏痘の為に直接斃死するものは少いが,雛は発育が著しく阻害され後々迄影響し,若鶏は産卵が遅延し,損害は甚大であります。又併発症が発生した時は弊死も多く損害は益々大となります。之の予防法としましては蚊によって伝染されると言われて居り,蚊の防除も必要でありますが,確実な方法としては鶏痘予防液の接種であります。之の接種は鶏痘発生期の1ヵ月前に実施すべきでありまして,鶏痘予防液の必要量は0.2t,雛0.1tでありますから羽数により計算し必要量を養鶏関係機関,家畜衛生保健所等を通じて注文して接種して置きましょう。接種が適切であれば鶏痘の自然感染が予防出来ますから副業養鶏の方でも共同購入に依り接種して置きましょう。此の接種をして居なかったが為に鶏痘が発症し,大切な雛,鶏を鶏痘にするのみでなく治療に思わぬ予算外の経費を要し又治療に手数を要しますから予防に重点を置きましょう。治療法としては,早期発見,早期治療を実施し症状の軽微な間に治療する事が必要であります。発痘鶏は隔離し,皮膚面に発痘の場合は3%のクレオリン軟膏,ズルフォン剤軟膏等を1日数回塗布します。尚併発症を発した時はゲリゾン,マイシリン等の注射が効果があります。

ワクモの防除

 次にワクモでありますが,之は殆んど見当らなくなりましたが一寸の油断から猛威を振う事があるものであります。その繁殖力は非常に大であり,高温,多湿の好条件に恵まれると1週間位の放任で莫大な数になってしまうものでありまして,ワクモの字の由来はその繁殖状態が空に雲が湧き広がる様に早いので湧雲とつけられたとも言われております。ワクモは体長1o位で灰白色ですが血を吸うと赤くなり,昼間は隙間に隠れており夜出て吸血し鶏は此の為に栄養障碍を来たし,尚安眠は妨害され結果として食滞し易く,餌の摂取量は減じ,産卵率は急に低下して来るのであります。此のワクモも,著しく発生後,根絶は中々困難でありますから発生しない内に予防手段を講じ若し発生した時は早期に発見して根絶する事が必要であります。予防処置としては鶏舎の採光,通風,乾燥等について万全を期し,クレオソート,と石油の混合液を噴霧して置きます。若し発生の場合はクレオソート,D・D・Tの混合液を隙間に十分滲透する様に噴霧し絶滅させます。