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スーダングラス,パールミレットソルゴの瞥見

岡山種畜場 三秋技師

スーダングラス

 後記するソルゴと同じ「モロコシ」の仲間である。御承知の様にアフリカのスーダン地方の原産で茎が細く見たところススキに近い1年生夏作物である。
 草丈は6−7尺にもなり1株で100本以上も分蘖することもある。
 暖地,旱魃地に適する草で再生力の強いことを利用して,年内に数度刈取ることができる。サイレージ,青刈,乾草の何れにも向く。
 初期の生育がおそいため苗床において苗を仕立てて移植する事も考えられ一部で実施されている。
 播種期は4月−5月の巾をもっているが適期は4月中下旬のようである。
 移植する場合は苗床坪当り1−1.5合の種子を撒播し30−40日目草丈40pの苗を2−3尺畦巾で株間1尺に1株3−4本移植する。
 直播の場合は畦巾2−3尺に条播するが播種量は反当り1sが適当のようである。
 播種量の多小が収量に及ぼす影響については「第1表」が示すとおり,初回刈取収量は播種量の多きに従い大なるも第2回刈以降は播種量少なき方が概ね多収を示し前後5回の総収量も亦播種量少なき方が大である。これは密播が分蘖力を弱める結果である。
 スーダングラスは成長極めて旺盛で多肥特に窒素肥料の多用を必要とするが施肥量に関する成績は「第2表」のとおりで施肥区が最多収次いで青刈大豆間作区,無肥料区が最劣である。
 刈取は草丈1m位に達したときに低く刈取る。なお初回の刈取は幾分おそ目にした方がその後の株立がよい。
 青刈大豆,カウピー等と混作する場合は前号においても記したが大豆,カウピーを反当3升,スーダングラスは0.5sを同一播溝に播種する。

(第1表)スーダングラスの栽培に関する試験(播種量) 畜試年報6

播種量
(反当)
第1回刈取
6月30日
第2回刈取
7月25日
第3回刈取
8月28日
第4回刈取
10月6日
第5回刈取
11月21日
反当収量
合  計
反 当
収 量
平 均
草 丈
反 当
収 量
平 均
草 丈
反 当
収 量
平 均
草 丈
反 当
収 量
平 均
草 丈
反 当
収 量
平 均
草 丈
1.0s 693s 128p 1,335s 153p 1,977s 177p 1,404s 138p 357s 54p 5,766s
(100%)
1.5 717 137 1,155 141 1,860 174 1,329 129 387 56 5,448
(97)
2 897 136 900 127 1,800 177 1,320 142 330 57 5,247
(94)

 註 畦巾2尺 4月26日播種 基肥堆肥反当2,000s
   刈入後人糞尿 2,000s追肥

(第2表)スーダングラスの栽培に関する試験(施肥量) 畜試年報6

  第1回刈取
(6月30日)
第2回刈取
(7月20日)
第3回刈取
(8月28日)
第4回刈取
(10月6日)
第5回刈取
(11月21日)
合  計
無肥料区 482s 789s 1,035s 681s 213s 3,300s
(100%)
青刈大豆間作区 青刈大豆 (1,059)
687
735 1,140 783 225 3,570
(112)
施肥区 864 1,053 1,470 1,041 303 4,731
(150)

 註 4月26日播種
   青刈大豆間作区 基肥として厩肥2,000s
   施肥区     基肥として厩肥2,000s 刈取後人糞尿2,000sを追肥する

(第3表)パールミレットの青刈収量

苗の種類 1 株 当
苗の本数
第1回刈取
(7月11日)
第2回刈取
(8月2日)
第3回刈取
(9月10日)
第4回刈取
(11月25日)
合  計
s s s s s
4月1日播種
60日苗
2 8,000 29,500 29,450 26,000 92,950
3 8,940 35,000 32,000 28,900 104,840
4 8,990 38,400 30,100 25,000 102,480
5月1日播種
30日苗
2 12,950 26,900 23,600 15,350 71,950
3 12,610 32,900 24,500 16,250 87,310
4 13,625 34,200 22,550 15,800 86,175

註 100分の1反歩

パールミレット

 草だちは玉蜀黍に似た夏作1年草で,茎葉は玉蜀黍より細く草丈もやや低い,穂は長さ1尺直径1寸の円筒形で太いネコの尾のようである。アフリカの原産である。
 年内に2−3回刈取が出来青刈,サイレージ用に利用されつつある。
 直播する場合は生育初期の管理に手数を要し不便なことが多いため苗床を設けて育苗する場合が多い。
 直播の場合玉蜀黍の発芽後20日目頃に玉蜀黍の株間に反当4升の種子を点播しておくと玉蜀黍が1m位のとき20p位に伸長し玉蜀黍の跡作として利用できる。
 これのみを単作する場合は2−3尺の畦に反当4升の種子を条播する。
 移植苗を仕立てるには苗床坪当り5勺(脱桴種子の場合,有桴種子は2合)撤播或は条播とす,30−40日で草丈30−40pになり分蘖茎の発生直前に達する。この時期に定植する。
 畦巾2−3尺株間1尺1株3本立とし,株間に厩肥反当300貫を施用し苗の根本に覆土する。
 刈取は第1回目を移植の場合定植後30−40日目草丈40−50pの頃低刈する。刈取後追肥を行えば25日前後の間隔で4,5回の刈取が可能である。神崎氏はパールミレットの青刈収量を「第3表」のとおり報告している。

ソルゴ

 玉蜀黍と同じように草丈10尺以上にも伸びる1年生夏作物で糖分を多く含有しサイレージ用に適す。
 アフリカ熱帯の原産で発芽,生長の温度が高いことを必要とする。
 耐旱力が強いので玉蜀黍不むきの乾燥地,砂土或は多湿な重粘土,酸性土壌に耐える力も強い。
 初期の生育が非常に緩慢で生育の前半期においてはその最終期の全乾物重の10−15%にして達しない。
 初期の生育が玉蜀黍に劣り応々苗を仕立てて移植する場合もある。
 直播する場合は5月に入ってから播種する。早播すると初期生育が温度不足で香ばしくない。基肥としては硫安3貫,過石2貫,厩肥300貫程度を施す,特に基肥は種子が比較的小さく貯蔵養分が少いからその効果が顕著である。
 播種量は反当2−3升で厚播して間引きをし株間1尺1本立に草丈が1尺頃までに行う。苗を仕立てて移植する場合は苗床坪当り2合を4月上−中旬播種する。草丈が2尺の頃に(5月中−下旬)1尺の株間で定植する。7月末から8月初め出穂期頃に一番刈が出来反当1,200貫程度の収量を得る。刈取後硫安或は下肥を追肥すれば再生して11月初めに2番刈が出来る。刈取部位は地際で刈取ること。1,2番刈取合計収量は反当1,600貫をあげることが出来る。