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日里村の副業養鶏
鶏卵集荷に成果

 伯備線高梁駅からバスで26q西南へ登った所に川上郡日里村がある。この村は面積25.6万q,総戸数600戸,その内1反以上耕作の農家戸数は560戸−570戸である。
 経営耕地面積は田250町,畑180町,その他を含め合計440町で,平均1戸当,田畑7反5畝の山村である。村の従来の生産物は第1に米麦,次で煙草,マツタケ等であったが,戦後農村振興対策の1つとして,昭和25年から村内へ副業養鶏を取り入れ,現在では生産物の順位は米麦,煙草,卵,マツタケの順となり,鶏卵の収入が農家経済の重要な地位をしめるようになった。これら農家から生産された鶏卵は次のような要領で販売されている。

一.鶏卵集荷の始り

 昭和25年から村農協は副業養鶏として,1戸平均10羽から20羽飼育を目標に奨励した。そして最初は農協職員が村内の一定場所へ集卵に行き,その都度計量して代金を支払っていた。当時は10人余りの商人が村内へ出入し,鶏卵の値段はまちまちであった。

二.鶏卵収入の地位

 現在の鶏の飼育羽数は6,000羽以上と推定されるが,年間の出荷は大体2万貫で1,300万円の収入をあげている。これは農家生産物総収入7,000万円の3分の1たらずをしめている。日里村における1農家の平均粗収入は約20万円であるが,保有米等自家消費を差引くと,現金収入は平均12万円となり,その半分の約6万円は税金,生産費等となり,生活費は残り6万円を当てるのみである。これらから考えても,5日目ごとに入る鶏卵の収入は今では農家に取って切り離すことのできない現金収入である。

三.共同集荷の方法

 村内における生産鶏卵の90%が共同集荷され,残り10%が商人の手によって集荷されている。集荷日は大体5日目毎で,夕食後村内の21の集荷所へ集められ,青年団員,婦人会員,農協職員等によって計量,荷作等がなされる。21の集荷所の内訳は次のとおりである。
 青年団扱い 8ヵ所
 婦人会扱い 4ヵ所
 農協職員扱い 1ヵ所
 その他 8ヵ所
 青年団扱いの内には2ヵ所が4Hクラブ員組織によって行われ,農協職員扱いは農協職員宅,その他は個人委託によって行われている。1戸の1回の出荷量は多い人で6貫,少い人で5−6個(80−90匁)である。又飼育羽数も1戸で多いもので100羽たらず,平均10羽位である。集荷された卵は汚卵はなく,殆んど粒がそろっている。今後生産が向上すれば選卵も行って粒をそろえることがのぞましい。
 5日目毎に夜集荷された卵は青年団等によって各集荷所で計量され,農協口座をもうけた小切手が現金のかわりに発行されて卵と引かえられ,各人の集荷手帳にその量,金額が記入される。このため子供でも容易に卵を持参することができる。小切手発行は約80%で後の20%が現金で取引されている。小切手によれば間違いが少く,端金がなくて便利である。集荷された卵はそれぞれの集荷場の責任者の保証票を入れて出荷される。1箱は3.5貫詰で,荷造りされた鶏卵は伯備線高梁駅まで農協の手によって運搬され,井原市の某鶏卵問屋の手によって大阪市内の問屋筋へ販売される。集卵所のなかでも4Hクラブ員の手で扱われている黒萩共同集卵所は日里村の代表的集卵所とも言われ,集卵手数料として得た金は有効に利用されている。

四.鶏卵値段の決め方

 集荷される卵の値段の決め方であるが,これは大阪鶏卵の岡山もの前日買入相場(前日の新聞相場による)をもととし,この相場の2丁引(貫20円落し)を基準とする。そして卵1貫について,集卵手数料10円,出荷運賃10円,農協手数料(危険率を含む)10円,箱代20円,計50円が差引かれる。つまり大阪鶏卵の岡山もの最高買入値より1貫につき70円の差があるわけである。しかし相場が上向の場合,追加払として生産者の手取が増える場合がある。下向の場合はあらかじめ危険率が農協手数量10円に含まれているから,後から差引かれることなく,安心して出荷することができる。

五.飼料費と鶏卵値段の釣合

 農家の飼育する雛については殆どが,農協の一括買入して,2,3の育雛家の処で共同育雛し,40日位になって各農家へ配分する。これらの鶏の飼料は出来るだけ自給し,不足分については農協が飼料を共同買入して希望者に配分する。現在自給飼料の生産のため,村内大字明治の重信次郎氏は甘藷養鶏を行い,現在3基のサイロを設けて,数10羽を飼育し,村内甘藷養鶏の第一歩を踏み出している。
 現在の飼料費は自給飼料利用によって,大体1羽1日3円50銭から3円80銭位と推定され,手取最低は年間平均650円であれば当村では大体副業養鶏が成り立ち,昨年の鶏卵の平均値段は740円であったと言われる。