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日本におけるジャージー種の歴史

農学博士 岩住良治

家畜の品種

 家畜は風土の産物であると言われているが,現在に於ては改良繁殖,育種の学理,技術が進歩し,人間の意のままに希望のものを作り上げることもある点においては出来るが,やはりこの“風土の産物”の原則はあてはまる。
 品種間においても優劣の差が当然あり与えられた風土環境に有利なもの不利なものが出て来るわけで,世界一律に優良なものが何処においても優秀であるとはいい得ない。
 我国においては明治時代以前においては牛,馬が役畜として飼養され用畜において見るべきものはなかったが,この時代に入って各種の条件に畜産物の需要が促され,世界各地から各種の家畜を入れ動物園の観を呈した。
 次いで各家畜の品種の整理時代が訪れ牛については明治33年に調査会が出来たのである。乳牛についてはホルスタイン種が非常な勢で普及し大勢力を示すようになった。
 従来乳牛の経済は乳の生産と仔牛の生産販売の2つが大きく左右するもので,エヤシャー種その他の品種が衰徴したのも仔畜の処分に行きつまったためである。品種の整理に際しては,1品種にまとめるか,適地に適畜を配すべきかが考えられるわけである。
 昭和27年学術振興会の高原畜産委員会において品種論が論議されたが,結論として品種の在り方は見本的ではならないが,適地適畜という考え方から特に今後開発される低位生産地域の営農方式としての家畜導入に際しては,単にホルスタイン種のみに終始することなく,この種以外に1−2種の品種を入れるべきであるとされた。即ち品種は一元的でなく多元的に取扱うべきであるという結論である。
 未開発農業地域の開発に伴って導入すべき牛の品種は何かという問題が当然提出されるわけであるが今日農林省においてジャージー種に決定されたわけで私としてはジャージー種の特質からして妥当な品種の選定であると考えている。


ジャージー種雌

ジャージー種の特質

一.原産地はジャージー島

 英仏海峡には4つの島があり,その1つの島がこのジャージー島で,最大で東西南北4里に3里の大きさで面積1万5,000町歩,農耕地は1万2,000町歩である。
 ジャージー島はフランスから90マイル,ロンドンから70マイルでフランスに近く,気候温和で高台のような島で僅かに島の北部が高く南に向って僅かに傾斜している。人口は6万,ジャージー牛は1万頭が飼養されている。1万2,000町歩の農地に比して飼養頭数は少いが,これは英国向の集約的な園芸が発達しているためである。
 ジャージーの元祖は今から数百年前にフランス北部のノルマンデー地方から渡って来たと称されている。英領になって(以前はフランス領)今をさる165年前繁殖の方針を純粋繁殖においた。このことは法律によって定め違反すると60ポンドの罰金刑に処せられる。以前は隣島のガンジー牛が入っていたが,この牛も島に入れることを禁止した。
 体重は800−900ポンド,英国では1,000ポンド以上がめずらしくない。

二.能力

 乳量は最高2万ポンドで脂肪率は5%内外である。ホルスタイン種では泌乳量最高4万1,000ポンドで脂肪率は3−3.2%である。乳量においてはホルスタインの半分にたらない。
 ジャージー種の特徴はホルスタイン種と比較すると,
(1)体重がホルスタイン種1頭がジャージー種1.5頭に相当し,従って維持飼料をホルスタイン種程必要としない。
   このことは維持飼料費を節減できる。
(2)脂肪の生産量が多いから同一乳量においてはバターの製造の際,脱脂乳が少いことになる。(牧場では3.5升でバター1ポンド造る)
次に短所としては
1.エヤーシャー種に比較すると草の利用性がおちる。即ち草の悪い処では不利で,ごく不良の地にはエヤーシャーに及ばない。
2.乳牛としては優秀であるが,肉用として利用する場合,初期の発育が悪いため(体重の増加率がおそい)不利である。即ち仔牛は10ヵ月以上飼養しないと肉用としてはまずい。

日本における変遷

 明治5−6年頃,各種の乳牛と共に輸入された。宮内省に納める牛乳の脂肪を調整する目的で飼養されたが,病気に弱い理由でエヤーシャー種に移った。即ちこの過程において明治35年御料牧場,小岩井にシンメンタール,ブラウンスイス,エヤーシャー種が入ったが前二者は環境の相違で失敗し,エヤーシャーが残ったのである。
 一方神津牧場においては明治20年から17−18年間は各種の乳牛が見本園の如く飼養され,フレンチカナデアン,エヤーシャー等も入ったが,明治37−38年頃からジャージー種が主流となり明治40年にはジャージー種飼養者間において日本帝国ジャージー協会を作り血統登録を開始したのである。次いで1年後にホルスタイン登録協会が発足した。ともかくジャージー種の多年の経験をもつのは神津牧場だけである。
(4月21日ジャージー飼養管理講習会講演要旨)


ジャージー種雄