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岡山種畜場講座

副業 養鶏の在り方(二)

川崎技師

(2)労働力の節約

 前述した様に余剰労力を十分に活用し育雛等も農閑期を利用して行い特別な労力を之にさかぬ様にして飼養管理し,労力に特に経費をかけぬ様にすべきであります。

(3)育成費の節減

 鶏の育雛と,鶏の一生を通じての能力発揮即ち生産成績とは密接な関連のあるものであって育雛に於ての成功は養鶏の成功とまで言われて居る位であって,如何に優秀な系統の雛であっても育雛が完全でない場合は持って生れた遺伝的能力を十分に発揮出来ぬものであります。育雛の飼養管理が完全であり育雛が好調子に行われ,殆んで百羽百成の場合はその全体の雛も揃って丈夫であり能力の発揮も十分であり,損耗が少いため結論として育雛費は大いに節約されるものであります。而るに往々にして育成費をなるべく安く上げようとして飼料費,燃料費その他諸経費の節約を計り経費を出来るだけ節約しようとするものがあるのであります。之が研究の上,理論上経験上立証された上で行われるのは之に越した事はないのでありますが,若し之が唯単に盲目的に経費の節減上から行われ,それが禍して反って結論として不経済になる場合が割に多く大いに考えるべきであると思います。即ち育雛の飼養管理を理想的に行い,優秀な成績で発育し95%以上のものが孵化後殆んど全雛150日前後で産卵を開始した場合と盲目的節減により育成率悪くやっと80%のものが成長ししかも不揃であり産卵が孵化後約190日を要したとするとその40日間に一方は25−30匁の飼料を毎日徒食し一方は産卵を続けて居り,之の差を育雛初,中期の僅少の経費に比較すると馬鹿らしい事が明らかとなるのであります。更に之等2群の一生の生産能力の差を考える時は恐ろしい事であります。之を十分考慮され冗費を節減して完全な育雛を行って結論的な経費の節減を計るべきであります。

(4)飼料費の節約

 飼料費は経常費の大部分を占めるものであり能力発揮の原動力でありますから之については十分慎重である事が大切であります。即ち購入に当っては組合組織を大いに利用し之により信用ある質の良い飼料を廉価で購入する事が第一であります。次に給与に当っては一応質の吟味を更に行い後述の様に鶏の能力に応じて適した養分を含む様に,飼料の質と量で飼料計算を行い,能力に対して過不足のない飼料を与える様にする事が飼料費の節約になるのであります。
 能力以上の飼料を与える事はその飼料がその鶏に完全に利用されず徒らに高価な飼料で鶏糞を生産する理となり採卵でなく一面採算のとれぬ採糞養鶏となるのであります。又能力に対して不足する飼料を与える場合は鶏は本能的に自己の栄養分を卵の成分として排出し鶏体を衰弱せしめ結論として不経済なのであります。
 尚飼料費の節約の一端として飼料の貯蔵中の損耗並びに給餌上の損耗は非常に大きいものでありますから十分注意する必要があります。即ち,貯蔵中の醗酵,変敗,鼠害その他による損失並びに給餌具の構造の不良に依る損耗等であります。

(二)生産の向上

 前述の様に経費を節約する反面に於て生産の積極的に向上さして行く事が必要であります。諸経費を50%節減する事は中々困難な事でありますが生産の面に於て性能の高い鶏を取得の後,研究の上或一定度の技術を得て育成管理する事により50%以上の生産を増加さす事が可能になるのであります。次回より之等の点について基礎的な面より各論的に述べて参ります。

二.取引経済の合理化

(一)生産物の合理的処理

 諸経費を合理的に節減し生産を増加し最後に生産物の処理に於て合理的に行い,生産物の販売価格を向上し,又他面有効に利用する事により経営を有利に導く事は重要な事であります。
 先ず第一に商品として価値のある品質として改善する事でありますが,卵に於ては卵黄の色,卵白の粘度,卵殻の状態でありますが卵黄の色は濃黄色である事が望まれ,此の黄色は飼料中に含まれるキサントフィルと称する色素に依るものであって之は黄色玉蜀黍,緑餌を多給する事により濃度を増すのであって副業養鶏に於ては緑餌の多給が必要であります。卵白は飼料中の蛋白質の含量に支配されるのであって飼料の配合に当って後述の様に出来るだけ多種類の飼料を配合する事が大切であります。
 而して良質の卵を生産してその上これの販売方法を合理的に行う事が必要でありまして之はその地域の事情その他により一概には申し兼ねますが,生産者としては個々別に販売する事は不利益になり勝ちでありますから出来るだけ組合組織の上で団体の力を利用し共同出荷して行く事が望ましい事であります。共同出荷の場合は兎角目先の価格に引ずられ団結力が弱められる事が往々にしてあるものですから此の点は各人共同精神により行動すべきであります。