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岡山種畜場講座

養豚講座(二)

岡技師

種豚の選び方

 豚を飼育するに当って先ず重要なことはどんな種豚を選ぶかということであります。種豚の選択が適当でないと如何に飼養管理が苦心してもよい結果が得られません。

一.品種の選定

 現在わが国で飼われている豚は殆ど中ヨークシャー種(以下単にヨークシャー種と呼ぶ)とバークシャー種とに限定されているので実際問題として品種の選択はこの両種のうち何れを選ぶかに直面するわけです。そこで今,両種を比較検討して見ると次のようになります。
(1)産仔数 ヨークシャー種の産仔数は普通7−14頭でありますが,バークシャー種は6−10頭で,この点ではヨークシャー種がやや勝っています。今,比較のために畜産試験場(千葉),立川養豚場及び北米ダコタ農事試験場の調査を紹介しますと次のようです。

(表)豚の品種と産仔数

  ヨークシャー種 バークシャー種 摘     要
畜産試験場 10.0頭 6.7頭 ヨークシャー21ヵ年,バークシャー16ヵ年の平均記録
立川養豚場 9.3 6.9 大正10年−昭和7年の12ヵ年の平均
米国・北ダコタ農事試験場 11.7 8.7 15ヵ年の平均

 然し乍ら近時バークシャー種も産仔数の多いものが選択繁殖されているので次第にこの欠点が除かれつつあります。
(2)気候風土に対する適応性 バークシャー種は体質強健で寒暑に対する抵抗力が強く,又寄生虫,皮膚病に罹ることも比較的少いが,ヨークシャー種はこの点ではやや劣っています。
(3)発育 体重の増加及び体型の整備はバークシャー種の方がやや速かで生後3ヵ月で体重に約3.5sの差を生じます。
(4)飼養管理 一般にバークシャー種は,ヨークシャー種に比べて飼料の利用性に富み粗悪な飼料にも耐えます。この特質はバークシャー種の一大長所であって,飼料事情の極めて悪化した戦時中でもバークシャー種はかなりの肉附を保ち明かに飼料の利用性がヨークシャー種よりも勝ることが実証されています。同質の飼料を同量与えた場合は,バークシャー種は過肥に陥るので,ヨークシャー種に比べ質的に2割位粗悪なものでよい特長があります。特に自給飼料を主眼とする合理的経済養豚家にはバークシャー種の方が望ましい。
 又バークシャー種は幼時に於ける発育のよい関係もあって仔豚の育成はヨークシャー種よりも容易でありますが,成長すると時に性質の粗暴なものがあったり又喰仔癖などを現わすものが時に見受けられます。
(5)受胎成績 バークシャー種には受胎がやや困難なものや,稀に不受胎に終るもの等がやや多いようです。これはバークシャー種に対する経験の不足と飼養管理の失宜によることが少なくない。即ちバークシャー種は外陰部が黒いので熟練しない者は発情がはっきりつかめないことが多く,又肥り過ぎと運動不足の関係で発情徴候が顕著に現れない場合もあって交配適期を失することがあるのでこれが一般に繁殖率が低いように言われた一部の原因であろうと思われます。
(6)体色 わが国民性は嗜好上白色を好む習慣があるので,この点ヨークシャー種の方が大衆向であり,又バークシャー種は六白を重視しているので仔豚を登記する場合に,その合格率が少い嫌いがあります。
 豚肉加工の立場から考えますと,ヨークシャー種の方が純白で加工品は美しいので皮膚の暗色を帯びるバークシャー種より好まれます。
(7)利用上の差 生肉用としてはバークシャー種の方が美味で一般取引に於て高く評価されており,赤肉に対する脂肪の割合もバークシャー種の方がやや多い。又豚毛の利用の点に於てはヨークシャー種の方が有利です。
 以上のように両者それぞれ一長一短があるので,一概に良否の断定は許されませんが,実際に当っては飼養の目的,種豚導入の難易,交配時の種雄豚の関係,取引の関係及び飼料事情等の観点からよく判断して何れかを決定すべきであります。