ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年7月号 > 岡山種畜場講座 農家自家用向き 山羊肉と内蔵の加工(二)

岡山種畜場講座

農家自家用向き 山羊肉と内蔵の加工(二)

佐藤技師

四.山羊肉の加工

 山羊肉は前述の特性の項で申上げましたように,一般に加工用には不向きとされております。然し農家の自家用としては或程度加工して保有の出来るものとして利用することが望ましいと思われます。実際問題として,農家で1−2頭処分した場合に一度に調理して食べ切る訳には行かないものです。
 山羊肉の加工調査に当っては先ず臭気を消さねばなりません。それには香辛料により臭気が私達の味覚に感じないような方法を採ればよろしい。即ち香辛料で私達の舌の感覚を胡麻化せば良いのです。又これに燻煙等の操作を加えるならば殆んど完全に臭は消失するものです。
 次に農村で簡単に出来,然も可成り貯蔵性のあるものを数種類上げて其の加工法を述べてみましょう。

(一)肉佃煮

 現在の農村の食生活から見て,日常生活に親しみのある佃煮の如きものがよいと思います。又佃煮とすれば臭気も無くなるし別に目新しい道具も要らず,難しい操作も無く1時間もあれば充分出来る利点があります。
 佃煮とよく似た加工方法に大和煮がありますが,大和煮は佃煮と比べますと淡味に煮たもので缶詰では固形分の43%以内の煮汁があってもよいと言うことになっています。佃煮は煮たと言うよりも煮詰めたと言う方が適当でしょう。缶詰の規定では煮汁は固形量の5%以下でなければならないとなっております。でありますから缶詰にすれば別ですが,そのまま貯ぞうする場合は佃煮の方がずっと保ちが良ろしい。
 次に佃煮の加工方法を説明します。
(1)水煮
 枝肉より精肉を採り2寸角位に大きく切り,一方釜に肉がかくれる位の量の湯を沸騰させておき,山羊肉の動物臭を除く為生がをおろし肉量1sに付き約10gを入れて次に大切りした肉を入れて煮沸する。尚生がの外に玉葱のおろしたものを入れると脱臭に効果的です。
 水煮の終ったものは湯より引揚げ次の調味料香辛料を以て味付けを行います。
(2)味付
 調味料,香辛料の配合例
  水煮肉1sに対し
   醤油 300g
   砂糖 25−40g
   おろし生姜 5−10g
   玉葱(おろしたもの) 10g
   唐辛子粉 少量
   蜜柑皮の乾燥粉
   山椒の実の粉 少量
   水飴 20g
方法
 水煮を終った肉は細切りにしておき,一方醤油に砂糖を加えて煮沸し,細切りにして鍋に入れた肉に加え,生姜,玉ネギを加えて余り強くない火で煮熟します。八分通り煮え上った頃に唐辛子,蜜柑皮,山椒その他香辛料を加えて更に煮熟し,充分液汁が肉に浸透し煮え上った頃に水飴を加え残余の煮汁を肉に包み火からおろして冷却して終ります。
 生産歩留は原料精肉に対し約55%です。よく冷却し密封しないでも冷所におけば夏季ならば1週間位冬期ならば1か月位はその儘保有出来ます。黴が発生した場合は一度火を通しますとよろしい。

(二)肉田麩

 山羊肉は豚肉とは異り肉繊維が離れ難いので商品化は中々難しいと思いますが農村で自家用として而も貯ぞうしておいて食用にする場合には適当な加工方法と考えられます。
加工方法
 原料肉は腿,肩,背部等の赤肉多く腱膜等の少ない処を選び,脂肪肉,腱,膜等を出来る丈除去します。そして佃煮の場合と同様に2寸角位に大切りにしておきます。一方釜に肉がかくれる位に湯を沸騰させ山羊肉の動物臭を除く為佃煮の時と同様におろし生姜(1%),おろし玉葱(1%)を入れて佃煮の場合と同様に水煮します。煮え終ったならば肉を釜より引揚げ充分に放冷し,充分放冷を行ったならばまな板の上で堅木の棒等で肉繊維がばらばらになる迄たたきます。ばらばらになり難い処は指先でほぐすとよろしい。
 次に肉繊維を分離させた肉を鍋にいれ肉が充分吸収する位の水を入れて弱火で焦げつかない様に煮ます。水分が蒸発し乾燥する位になれば次の調味料を加えて更に煮上げ最後に肉色の食紅を加えて火よりおろして放冷して終ります。
 調味料の加え方例
  原料 精肉 1sに付き
     醤油 200g
     砂糖 30g
 砂糖が充分溶解するよう醤油に砂糖を加えて煮沸してから用います。
     色素 少量
 尚臭気のひどいものには生姜汁を加えると良ろしい。
 生産歩留は整理した原料からは40%位です。腱,膜等は佃煮等へ廻せば良いと思います。
 貯ぞうは缶,瓶に封じておくと良ろしいが,セロファン紙等に封じて湿気を吸収しないようにしておいても良ろしい。こうして貯ぞうすれば相当永く貯ぞう出来ます。

(三)乾燥肉

 11月から翌3月迄位の間は乾燥肉を造って貯ぞうし随時調理して食用に供するのも良いと思います。色は黒ずんで堅くなりますが,軽く焼いて食べても良いし,又水戻しをして軟くして色々の料理に使ってもよろしい。セロファンに包んで乾燥した処へ貯ぞうすれば半年でも1年でも貯ぞう出来ます。
加工法
 原料肉は田麩と同様脂肪肉を除いた赤肉がよろしい。但し肉塊が余り小さいと乾燥後は余り小さいものになりますから大切りのものがよろしい。次に下の如き調味液を作り中心部迄液の浸透する期間凡そ5日間位浸漬します。
 漬込液の配合例
 生肉1sに対し
  水 5s
  食塩 750g
  硝石 35g
  砂糖 150g
  生姜汁 30g
  唐辛子 少量
 以上の液に漬込完了したものは取り出し良く拭って布団又はセロファンに包んで糸で縛り北側の冷い風通しの良い軒下等に吊して風乾します。1ヵ月程もすれば水分を失って原料の50%位になる。こうして作ったものは涼しい処に貯ぞうすれば1ヵ年でも貯ぞう出来ます。尚一度炭火で乾燥し(50℃で約1時間)燻煙して風乾すれば更に貯ぞう期間が増すと共に良風味を与えます。