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時報

試験調査

 本月は本県冬作青刈飼料作物として最も重要な燕麦についての基礎試験の一部が取りまとめられたので御知らせ致します。従来燕麦に関する各般の試験結果は相当数発表されていますが1回刈取後の再生状況を詳細に調査したのは余り見受けられませんから本試験は気象状況と併せてこの方面に重点をおいて試験したもので有りますから農家の方は特に熟読して頂いて燕麦の経済的生産をうんと高めて下さい。
 尚本誌第5巻2号で予報しました乳牛について糖蜜と尿素の併用効果試験を開始しています。御承知のことと思いますが尿素給与の場合当然熟量の補充と言うことを考慮せねばなりませんが案外この点を忘れていることを屡々見受けます。尚同時にこの熱量を補充する炭水化物の飼料としては馬鈴薯甘藷等が考えられますが本試験は特に優良な炭水化物を多量に含み且つ乳牛の嗜好の高い糖蜜を併用して尿素の効果を一層高めたい。

青刈燕麦の早播2回刈栽培について
特に初回年内刈取期について

三秋 尚
岩本敏雄
平岡 薫

 冬期間の青草不足を補う目的で,青刈燕麦の早播2回乃至3回刈栽培は極めて重要な意義を有し,近々その普及は目覚ましいものがある。
 しかし,この栽培で注意すべきは刈取時期,刈取の高さ及び施肥の問題等数多くの研究すべき点が残されている。
 松本等(1952年)は第1回の刈取を早期に行えば刈取総生草収量は適期1回刈よりも大であると報告し,石橋(1953年)は早播すれば年3回刈が可能でしかも適期1回刈よりも多収であったと報告している。
 筆者等は,これら両者の追試験という意味と更に表題の如く年内における初回刈取時期の適期巾を見出すため,昭和28年9月から29年5月の間に当場において実施し,一応の成績を得たので報告する。

一.試験方法

(イ)供試品種 大型燕麦(農林省福島種畜牧場産で当場において増殖)
(ロ)播種期 9月10日 
 播種量 反当5.5升
 播種法 畦巾2尺条播
(ハ)施肥量(反当貫)
 基肥,厩肥300,硫安2,過石1.5,硫加1.5
 追肥 硫安2.5(第1回刈取直後)
(ニ)試験区の取り方 1区面積8坪,1区制
(ホ)刈取時期

初 回 刈 取 第 2 回 刈 取 摘       要
11 月 10 日 5 月 20 日 1.第2回刈取時期は穂孕期
2.第2回刈取収量は第1回刈取後残存して枯死株を除いて秤量
3.各回の刈取面積は3坪で反当換算す。
11 月 20 日 5 月 20 日
11 月 30 日 5 月 25 日
12 月 10 日 5 月 25 日

二.試験成績

イ.初回刈取後の生育状況

 刈取の高さは何れの場合も伸長良好な茎の生長点の高さを調べて決定し第3表に示す通り11月10日刈取では地上9p,12月10日刈取では相当の節間伸長が認められ前者の3倍に等しい26pであった。
 刈取後15日毎の伸長状況及び伸長量は第1表のとおりである。
 1月中旬以降2月一杯に亘り伸長量がマイナスとなっている点及び,12月下旬から1月上旬及び3月一杯の間伸長が停止した如く見うけられるのは,第2表の気象概要と照合するとき判然とする。

ロ.初回青刈収量

 第3表に示すとおり刈取時期の早い程多収で11月20日刈取の30%乃至40%減となっている。この現象は生長日数の増加が収量の増加をもたらすとする考え方と相反するが草丈の伸長の割に生長点の上昇が早くその結果地上から刈取部位までの硬い茎の部分が多く刈り残されるためであろう。
 松本等も9月19日播種で青刈収量は刈取時期が12月18日,1月18日,2月17日とおそくなるに従って漸減したと報じている。

ハ.第2回青刈収量

 第4表と第3表に示すとおりである。
 即ち11月10日収量を100とした場合11月20日刈は107.8%,11月30日刈は90.5%,12月10日刈は87.8%となっている。
 今少し検討してみると最も青刈量の劣る12月10日刈は初回刈取後の生育日数が最も短く且つ刈取後の初期生育−刈取りによる草勢の回復−が寒気により抑制乃至減退せしめられ3月までの生育が最下位であった点等から当然と考えられる。
 11月30日刈についても,これと略同様に見てよかろう。
 11月10日刈より10日生育日数の短かい11月20日刈の収量が最高であった点については初回刈取の高さが他の刈取時期のものに比して比較的高かったため寒害に対する影響が少く,ために伸長状態が最下位にあったからであろう。
(第3表最右欄参照)

ニ.初回及び第2回青刈合計収量

 これについては第5表が示すとおりで11月10日刈が最大で4,161sをあげ刈取のおくれるにつれて減少し12月10日刈が最少で3,312. 390sであった。
 即ち11月10日刈取量を100とすれば11月20日刈は97.42%,11月30日刈は82.73%,12月10日刈は79.65%である。
 それぞれの収量差をみるに分散分析を行っていないので断言出来ないが第5表の収量比率からして11月10日と11月20日刈の間と11月30日と12月10日刈の間では有意差はないようである。

むすび

 以上の試験成績からして
一.第2回刈取収量及び合計収量は初回刈取時期,刈取の高さ及び生長点の所在が大きく左右する。
二.年内刈取適期は11月10日前後である。
三.刈取総収量の点からすれば11月10日乃至20日の間が年内刈取の適期である。
四.初回刈取後の草勢に多大の悪作用を及ぼす寒害を防ぐためには出来れば刈取跡に切藁或は堆厩肥を覆うことが望ましい。

(第1表)初回刈取後における草丈の伸長状況

  初  回  刈  取  後  の  生  育  日  数  及  び  草  丈(p)
15日目 30日目 45日目 60日目 75日目 90日目 120日目 150日目 160日目 165日目 170日目 175日目 180日目 190日目
第1回目
青刈時期
11月10日 (22.32)
31.32
(9.29)
40.61
(3.09)
43.7
(1.7)
45
(-1.05)
43.95
(3.55)
47.5
(-7.25)
40.25
(20.68)
60.93
(82.2)
143.13
11月20日 (21.35)
36.35
(9.85)
46.2
(3.75)
49.95
(-1.10)
48.85
(0.45)
49.3
(-3.30)
46
(1.9)
47.9
(95.59)
143.49
11月30日 (15.15)
34.15
(9.35)
43.5
(0.65)
44.15
(-1.45)
42.7
(3.7)
46.4
(-7.95)
38.45
(6.5)
44.95
(88.63)
133.58
(15.5)
149.08
12月10日 (8.66)
34.66
(2.39)
37.05
(-0.46)
36.59
(-1.89)
34.7
(1.43)
36.13
(19.53)
55.66
(77.88)
133.54
(18.35)
152.89

 ( )は伸長量

(第2表)気象概要

月別 10  月 11  月 12  月 1  月 2  月 3  月 4  月 5  月
旬別
平均気温 19.5 16.1 17.1 14.6 9.5 8.5 8.6 7.9 6.2 5.6 7.2 4.1 3.2 5.9 7.7 5.7 6.3 9.5 13.8 14.2 13.2 15.7 17.6 18.5
平均最高気温 (27.1) (26.1) (24.5) (22.7) (18.5) (18.2) (18.8) (16.9) (15.3) (12.9) (13.5) (13.7) (14) (18.6) (22.3) (15.2) (17.3) (22.7) (22.9) (22.7) (22.9) (24.4) (26.1) -24.5
24.9 23.3 22.6 19.4 14.6 14.6 13.5 13.9 10.9 10.5 10.7 8.7 9 11.1 13.9 10.3 12.3 16.9 20.3 19 18.5 21 22.5 22.9
平均最低気温 (10) (3.1) (5.1) (5.7) (0.7) (1.1) (0.3) (0.2) 0 (-3.1) (-1.2) (-5.2) (-4.6) (-3.1) (-4.6) (-3.0) (-3.5) (-1.7) (2.1) (3.7) (1.3) (4.7) (9.2) (7.2)
13.9 8.8 11.5 9.7 4.5 2.2 3.6 2 1.2 0.5 3.7 0.2 -2.5 0.6 1 1 0.7 2 7.8 9.3 7.8 10.5 12.7 13.8
降霜(雪)日数 2 5 3 5 5 4 1 6(1) 8(2) 5(1) 5 4 6 6 1 1

 註 1.( )数字は旬日における最高,最低温度である。
   2.岡山測候所資料による。

(第3表)青刈燕麦の初回刈取収量

  調査項目 播種より
初回刈り
までの日数
(日)
草  丈
(p)
生 長 点
の 高 さ
(p)
刈  取
の 高 さ
(p)
反当換算
青刈収量
(s)
1 日 当
青刈収量
(s)
青刈収量比率(%) 生長点から
刈取部位ま
での長さ(p)
刈取期 反当収量 1日当収量
11月10日 61 87.75 7.74 9 1,218.75 19.979 100 100 1.24
11月20日 71 98.55 11.35 15 862.5 12.147 70.7 60.8 3.65
11月30日 81 97.3 17.7 19 778.12 9.606 63.8 48.1 1.3
12月10日 91 90.7 24.7 26 750 8.241 61.6 41.2 1.3

(第4表)青刈燕麦の第2回刈取収量

初回刈取期 第 2 回
刈 取 期
初回刈より
第2回刈ま
での日数
(日)
草  丈
(p)
反当換算
青刈収量
(s)
1 日 当
青刈収量
(s)
青刈収量比率(%)
反当収量 1日当収量
11月10日 5月20日 191 143.13 2,942.25 15.404 100 100
11月20日 5月20日 181 143.49 3,172.50 17.527 107.8 113.7
11月30日 5月25日 176 149.08 2,664.69 15.14 90.5 98.2
12月10日 5月25日 166 152.89 2,562.39 15.436 87.8 100.2

(第5表)青刈燕麦刈取総収量

初回刈取期 第 2 回
刈 取 期
第1回刈
反当換算
青刈収量
(s)
第2回刈
反当換算
青刈収量
(s)
青刈反当
総 収 量
(s)
青 刈 収 量 比 率
(%)
11月10日 5月20日 1,218.75 2,842.25 4,161.00 100
11月20日 5月20日 792.5 3,172.50 4,035.00 97.42 100
11月30日 5月25日 776.25 2,664.59 3,442.81 82.73 85.32 100
12月10日 5月25日 750 2,562.39 3,312.39 79.65 82.09 96.21