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〔畜産ニュース〕

常温空気を送って乾草を生産
関東東山農試の研究完成

 積み重ねた飼料用茎葉の間に常温の大気を送って簡単に乾燥させる方法がこのほど関東東山農試農機部の研究によって完成し,乾草づくりやエサ不足になやまされている農家の人々に大きな関心がもたれている。
 草類は水分20%以下に乾かせば1年間は完全に貯蔵することができ,最も簡単で安上りの方法であるが,天候に左右されるのでこれまでどうしてもうまくゆかなかった。そこで天候に左右されなくても乾草のできる方法が研究されたわけである。
 この乾草機はモーター,送風機,草を入れる木のワク,スノコなどがあればよく,クワの高さを4尺以下とし,風路を中央につくって両側にスノコを設け,その下へ空気を送りこむようにするもので生の茎葉は水分が8割以上もあるが,これをできるだけ地干して6,7割に下げ細断して2尺内外の高さに積んで風を送ると1週間前後で貯蔵に耐える良質の乾草ができる。
 設置の経費はモーターを別として坪当3,000円程度の材料費で手づくりができ,1s(267匁)の乾草をつくるのにレンゲでは0.1−0.4kw時,イモズルは2p位に細断したもので0.4−0.6kw時で大体乾草1貫当4円前後でできることになる。なるべく乾草した空気が送れるよう南向きの風通しのよいところに設置すれば電力が少くてすみ送る空気が多すぎれば高くかかることになる。
 1坪乾草機の場合はイモズルなら400s(107貫)まで,大豆茎葉なら400s強,レンゲでは700s(186貫)程度の生草が1週間前後ででき,3坪ではこの3倍2t(532貫)以上もできるから冬期牛1頭分の乾草は2,3回やればつくれることになる。3坪の場合は1間×3間に細長くつくるのがよく,使用モーターは2分の1馬力から1馬力程度で充分であり,クワ,スノコなどはみなとりはずしができるようになっている。
 この乾草製造試験は昨年春から北海道,宮城,新潟,千葉,兵庫,佐賀の各道県農試でもやって好成績をあげている。とくにレンゲなどはサイレージにしてもうまくできにくいのでこの方法が喜ばれている。
 これを知った付近農家ではボツボツ乾草機の設置をはじめていると言われている。
 なおこの常温送風だけでは米麦の乾燥には不充分であるが,麦収穫期の梅雨にあって困るようなときは普通なら納屋にうすくひろげておかねばならないが,これだと1,2尺に積み重ねておくことができ,坪高さ1尺で5石5斗,2尺で11石もはいるので一時しのぎには非常に便利である。(農業新聞より)