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ジャージー種
乳牛の飼養管理

神津牧場長 小松伊三郎

 当場におけるジャージー種の飼養は過去10年以上の歳月の間に全くいためつけられた不良放牧地133町と採草地100町歩を利用し,6月−10月までの4ヵ月は昼夜間放牧,11月−5月の7ヵ月間は半舎飼半放牧で行っている。飼養については現在は,ともかく学理は別として現在あるもので間に合せ,即ち最悪の条件下で農家式に飼養しているにすぎない。
 このような最下位の段階から出発し,その間において日本型ジャージー種の飼養理論を求めようとしているのが現実である。

毛色について

 灰色,褐色,灰褐色,黒味がかったもの等様々で標準毛色はない。しかし鼻鏡は黒く,その囲りが白色の環をなし,尾の先,耳先,眼のまわり等黒色であるという共通点はある。白班のものがときにあるが,この毛色は純粋種の中にもあり,登録の上で除外されることもなく,欠点でもない。
 体型は小型である。(ブラウンスイス,ホルスタイン種大型,ガンジー,エヤシャー中型)

体重

 体重は350s程度(ホルスタイン種550s)で,体はしまり,動作が敏活でどことなく神経質である。分娩時の仔牛の体重は22s(ホ種40s)で生後10ヵ月位までの発育はおそい。しかしこの発育のおそいことは飼養がむつかしいことを意味しない。

飼養

 繁殖成績はよく毎年分娩さすことが容易である。又後産停滞も少くこの点ホルスタイン種より優れている。ホルスタイン種は最上の条件下でないと全能力を発揮することが困難であるが,ジャージー種はこれに耐える力をもっている。即ち粗食に耐えうる能力をもっている。(しかしこの点はジャージー種よりエヤシャー種が優れている。)
 ホルスタイン種とジャージー種の両種を飼養した場合すべての飼養方法をホルスタイン種と同一にしてジャージー種を飼養したとするとジャージー種の能力発揮は低滞し失敗する。ジャージー種は極めて運動性に富み,この性質を十分に満足させることが肝要で,かかる運動性の高いジャージー種をホルスタイン種と同じように舎飼いし且つ濃厚飼料をホルスタイン種式に多量に食するとこのジャージー種の特性が伸びないのである。
 ジャージー種の飼養に際してはホルスタイン種飼養の観念をすてることが必要である。
 当場ではすでにのべたように6月−10月の間は昼夜間放牧を行うが,泌乳牛は畜舎に近い放牧地に,その他の牛は4qも離れた処に放牧する。11月−5月の間は半舎飼,半放牧とする。1頭当り3町5反歩の放牧採草地が割当てられているわけであるが,この土地に生える草は不良草のみで芝草がジュウタンの如く密に生え,ススキ,チガヤが織りなしている。ただ十分に広い土地で天来の運動性,活動性が心ゆくばかりのばせるというのが牛達にとって恵まれていると言える。牛はついばむように芝草を喰いそれで相当量の乳量が出ている。

放牧地野草による泌乳試験

 昭和23年の6−8月の3ヵ月間,配給の飼料が跡絶え,従来の濃厚飼料2s給与して昼夜間放牧していたのが,濃厚飼料なしで昼夜間放牧を続け乳量は「別表」の如く濃厚飼料給与の70−80%を出した事実がある。

(別表)放牧地野草喫食による泌乳試験成績
(無濃厚飼料,供試牛ジャージー種7頭)昭和22−23年

試 験 期 試 験 区 分 泌  乳  量
(1頭平均)
5月泌乳量を100とした比率 濃厚飼料給与に
対する無濃厚飼料
昭和22年 昭和23年 昭和22年 昭和23年 昭和22年 昭和23年 百分率
      s s    
5月 放牧+濃飼2s 放牧+濃飼2s 85.8 203 100 100
6月 放牧 120 203.6 141 100 70
7月 93 178.2 108 88 81
8月 78 158.4 92 78 84
9月 放牧+濃飼2s 157.6 78

濃厚飼料給与量

 濃厚飼料の給与量は次のとおりである。6−10月の5ヵ月間は昼夜放牧で実際値として1日に3s(理論値,1日4s),11月−5月の7ヵ月間は半舎飼半放牧で実際値として1日4s(理論値1日6s)を与えている。昼夜放牧の3s給与は搾乳牛のみで,半舎飼半放牧期間には何れの牛にも4s与えてある。
 濃厚飼料の種類は大体麩のみであるが27年から麩4にヤシ油粕1の比率で給与している。その他食塩,カルシウムを与えている。冬期間の粗飼料は乾草1貫エンシレージ4貫である。
 種雄牛に対しては同一種類の飼料を幾分多量に与えている。

哺乳と泌乳量

 哺乳は分娩後1日で離乳し,1ヵ月半は全乳で,その後は脱脂乳で行い,生後6ヵ月で哺乳を打切る。
 哺乳は1日3回で哺乳量は体重の8分の1量である。
 泌乳量は初産12石,二産14石,三産16石,四産18石,五産20石を目標にしている。脂肪率は年平均5.2%で夏季4.8%,冬季5.8−6.2%である。
 乳量20石は困難ではないと思うが,このためには,草質の改良が必要である。

その他

 分娩後初回の発情は45日であるが,早いものは30日のものもいる。寿命は25年,経済年限は13−14才で,1頭で10仔を取ることができる。乳量は7産頃から下ってくる。牛の完熟は6才頃である。
 種付は最良の条件で16ヵ月であるが,当場では20ヵ月頃に行っている。この頃は体高は115pであるが,成牛平均体高は120pである。

管理

 春秋2回削蹄するが,当場では放牧のため不必要である。運動を十分すること。ブラシ掛は半舎飼半放牧期間に1日1回行うが,放牧期間中は実施しない。放牧期間中は2日に1回食塩とカルシウムを持参する。又放牧期間中アブの被害に対しては牛自体が昼間木蔭でさけ夜間採食する。ダニに対しても人為的に駆除せず,最初の頃はついていたが次第につかなくなる。

牧野改良

 草質の改善については5ヵ年前頃から実際されつつあるが,特に10年以上にわたる過放牧のため荒廃しつくしている。又バラの生育旺盛で,これら雑灌本の除去が今日の大きな牧野改良の仕事で,毎日2人の人夫が年中除去作業を行ってこれらバラの繁茂を抑制することが出来る。播種牧草はオーチャード,チモシークローバーである。

病気

 経産牛でよく泌乳する牛が乳熱にかかる。この病気は産後15日頃におこるが,発病すると体温が低くなってくる。産前,産後7日間は余り飼料を多給しない。
 治療法としては空気の挿入が有効である。

(4月21日ジャージー種飼養管理講習会講演要旨)