ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年8月号 > 〔岡山種畜場講座〕養豚講座〔三〕

〔岡山種畜場講座〕

養豚講座〔三〕

岡技師

養豚の選び方

二.種仔豚の選定

 飼養する品種が決定したならば,次に基礎豚を導入するのですが,他の家畜と同様に血統,能力,体型についてよく調査,吟味することが大切であります。
 基礎豚の購入に際して初心者は,成豚の導入を図ることは危険で,先ず種仔豚を導入して始めることが望ましい。成豚はすぐ生産を上げることが出来るが,能力のすぐれたものを導入することは難しい。従って仔豚を調査,吟味して優秀なものを入手し,仔豚の育成から研究して繁殖に供用する方が安全で有利であります。
 導入する仔豚は,立春から春の彼岸までに生れたものが健康で望ましい。春仔は秋,夏仔より強健で順調に育つものです。

1.血統

 種仔豚は繁殖に供用するものでありますから,血統を重んじ明確なものを選ばなければなりません。「瓜の蔓に茄子はならぬ」と言う諺の通り,素質のよい豚は優秀な素質の親豚から生れるものです。単に種仔豚ばかりでなく,肉用仔豚であっても素質のすぐれた親豚の仔を選ぶことが大切です。
 血統調査に際しては,父母の血統が正しいか,多産の系統か,遺伝の傾向がある悪質(例えば雄豚の尿溜り,ヘルニア単睾,乳頭数の不足,異毛色,喰仔癖)がないかに就て調べ,なお登録証明書があれば大いに役立ちます。

2.能力

 繁殖能力と肥育能力とに分けられますが,先ずその仔豚の両親の繁殖能力についてよく調査します。
 母豚に就いては産仔回数,一腹の産仔数,死産,登記頭数,哺育の成績などについて調べます。又母豚の乳の量と質は生後3週間以内(未だ飼料を食べない期間)の仔豚の体重と正比例するものですから,その時期の仔豚が揃ってよい発育をしているかどうかを調べ,又母豚の乳房の形状も併せ考えて,その泌乳能力を推定し,豊乳性の系統の豚を選ぶことが必要であります。
 種雄豚に就ては,法律により毎年農林省の検査又は当該県の検査がありますので,この検査に合格し,証明書を交付されたものでないと供用出来ないことになっています。そしてその交配によって,生産された仔豚の能力体型などについて調査します。
 次に肥育能力でありますが,我国では未だ欧米に行われている能力検定事業が遺憾ながら行われていないので,結局熟練した眼でその能力を推察するより致し方ありません。

3.体型

 体型外貌によって,その仔豚が将来どんな豚に発育するかを予想することは,極めて困難なことであります。
 一般に品種の特徴を備え,同腹の仔豚の数が多く,胴伸びがよく発育良好で,乳頭は12個(6対)以上を有しその配列が正しく,皮膚,皮毛に光沢があって,尾はキリリと上に巻いて食欲旺盛で元気溌剌としていることが大切です。
 幼豚の時から余りにも整った恰好をし,胴つまりの仔豚は将来性がなく,又縮れ毛で皮膚・皮毛に艶のない豚は発育が悪い。
 概観的にゆとりのある仔豚が望ましく,皮膚は軟く,つまみ上げられるような弾力のあるものが将来順調に発育します。頭部は品位に富み,両耳の間隔広く,耳根から鼻端に至る距離が短く,顔面は全体として丸味を帯び,口角の突出は大きなものがよい。眼は清明で眼の周りに皺がなく,鼻は短く耳は大形で薄くゆとりのあるものが望ましい。体躯は長方形で,腹部は充分張り出しており,四肢は正しく位置して繋部は直立し,殊に後肢は後外方に踏ん張っているものがよろしい。
 雄の仔豚の場合は,ヘルニア,片睾,尿溜りなどに就て注意することが大切です。

4.哺乳期間と体重

 離乳仔豚を選ぶに当って大切なことは,その仔豚が果して幾日間哺乳されたか,どの位の飼料を食べているか,又体重はどの位あるかと言うことです。
 哺乳期間が短かくて飼料の喰い込みが充分でない仔豚を購入すると,その後如何に丹精しても思うような発育をしません。近頃仔豚の相場が高く需要者が極めて多いので,飼主は勢い売り急いで,哺乳期間が30日前後と言う仔豚が売買されていますが,これは戒しむべきことです。即ち離乳時の体重が軽く,まだ独りで飼料を充分に喰い込み得ない豚が,突然環境の異なる新しい所有者によって飼われた場合は,その後の発育が著しく遅れ一人前の体重になるのに意外の長期を要して結局損であります。成るべく60日間少くとも45−50日以上哺乳したもので,飼料の喰い込みが充分となり,体重が少くも10−12s(2.5−3.0貫匁)以上のものを選ぶべきであります。特に将来種豚として長く供用しようとするものに於ては特に注意しなければなりません。

5.防疫措置

 仔豚の導入に際しては,必ず豚コレラと豚丹毒の予防注射を済ませたものでなければなりません。他府県から豚を購入する場合は,家畜伝染病予防法によって県外移動のための健康証明書の交付を受けることになっています。即ち移動前,豚コレラ・クリスタルバイオレット予防液なら180日以内,豚コレラ・ホルマリン予防液なら90日以内に注射を受けた健康証明書を,当該県知事又は獣医師より発行を受けて移動することになっております。

6.仔豚登記証明書

 将来種豚登録を受ける資格のある仔豚は,買入と同時に仔豚登記証明書の交付を受けることが大切です。よく仔豚登記証明書の交付が遅れ,また間違っていることがあって種豚登録を受けられないことがありますから注意を要します。