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〔時報〕

試験調査

 本月号で小麦(農林51号)の青刈収実併用試験の結果を御知らせする予定であったが三秋技師の転出や事務引継等に忙殺され取まとめがおくれたから来月号に廻わさせて頂くことにして本月号は今回大阪浪波大学で開催されました日本畜産学会関西支部例会の概要と蕪菁類の栽培結果を一部御知らせすることにしたい。関西支部例会は毎年1回開催されるので主として京都大学上坂教授が中心となり運営されているもので逐年その講演内容は充実され特に今回の山根甚信氏(広島農業短期大学長)の『繁殖生理学の領域におけるヒアルロンダーゼの意義』は圧巻であってスライドを併用した具体的な説明講演は聴講者に大きな感銘を与えた。卵子を囲繞する卵丘細胞,放線冠細胞を離散させる状況,核分裂,等々刻明に撮影されたスライドは高く評価せねばならないと思います。講演題目は全部で37項目に亘り前年に比して微量元素の問題が多く取り上げられていることは注目すべきことである。
 一応主要と見られる講演題目を参考までに次の通り御知らせするが特に関心のある題目個々についての内容は紙面の都合も有りますので御照会願えれば御知らせすることに致したい。

 一.育雛飼料としてのなたね油粕の価値について
 二.鶏におけるなたね油粕の消化率について
 三.雄鶏の肥育試験におけるオイベスチン,ぺレットの移植量について
 四.精液注入法と子宮収縮運動について
 五.精液の吸光度測定による精虫数の算定に関する研究
 六.人工授精における受胎に対するヒアルロニダーゼの効果
 七.繁殖生理学の領域におけるヒアルロニダーゼの意義について
 八.和牛の正常発育に関する研究特に性的成熟期前後より見た発育について
 九.肥育牛の瓦斯代謝について
 一〇.海岸砂丘地帯におけるぎょろぎしばの挿植試験
 一一.コバルト及び鉄添加が尿素の嗜好性に及ぼす影響について
 一二.牛の異嗜出現地帯における土壌のコバルト含有量について

 次に本月号の飼料作物講座欄が秋冬作の根菜類についての話を進めて行く関係もあるから目下当場で継続実施中の飼料作物集約栽培試験の一環としての蕪菁,大根の栽培試験の結果を一部取りまとめて次の如く御報告する。

秋冬作根菜類の栽培について

 飼料作物の集約輪作栽培における秋冬作根菜類の重要性は主として粗飼料の補完的な生産の点から強調せられねばならないが本作物は播種適期の巾が特に狭いこと,環境要素は影響されることが特に大きいこと等の特性を持っているが本試験は耕地の利用及び前後作における労力の配分等を考慮し既往各地に於ける栽培試験成績を参考として播種期を9月5日として1区面積5坪,1区画として各品種の収量を調査した。

一.試験方法

(イ)供試品種
 小岩井蕪菁  紫大丸蕪菁
 聖護院蕪菁  桜島大根
(ロ)播種量 反当2.5合
 播種法 畦巾2.5尺条播
(ハ)施肥量
 基肥 厩肥 500貫  硫安 2貫
    過石 2貫  加里 4貫
 追肥 硫安 2貫  過石 2貫

二.試験成績
品 種 名 播 種 期 収 穫 期 反   当   収   量
葉   部 根   部
     
小岩井蕪菁 9月5日 1月18日 474 1,731 2,205
聖護院蕪菁 450 1,279 1,729
紫大丸蕪菁 150 1,218 1,368
桜島大根 645 1,071 1,716
三.むすび

 本試験は飼料作物集約栽培の一環として実施したもので反当養分総生産量の点から収穫時期並びに播種期において若干考慮の余地があるが試験の成績から

 一.桜島大根及び聖護院蕪菁の葉部は耐寒性が乏しいので他の2品種に比較して播種及び収穫期は本試験より10日前後早めねばならない。
 二.家畜(乳牛)の嗜好収量及び病害虫に対する抵抗力其の他種々の点を考慮すると小岩井蕪菁が当地帯における秋冬作根菜類として最も有望な栽培品種と認められる。