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〔畜産ニュース〕

農林省空胎防止に本腰
10%以上の乳牛増産は可能
4万頭の中7千頭が空胎

 農林省の調べによると現在わが国には6万頭もの乳牛が妊娠をせず所謂空胎の状態で仔牛の生産を休み,従って乳も生産せずに毎日ブラブラと遊んでいる。このようなことは農家経済のうえからも,酪農を盛んにするうえからも重要な問題である。
 そこでこのような状態を解決するため人工授精を利用したり,また最近の進歩した獣医技術を応用して空胎の牛をできるだけ少なくすると同時に,牛乳を増産するべく農林省では今年度から積極的に乳牛の繁殖障害防除事業(空胎防止)を行うことになり,今年度は予算の関係もあってさしあたり北海道をはじめ岩手,埼玉,千葉,神奈川,長野,静岡,兵庫など1道7県の18ヵ月以上のめす牛6万頭についてこの事業が実施されるが,将来は全国的に拡大し少なくとも1割以上の乳牛を増産することになっている。
 なおこれらの実施地域の46,668頭の成雌牛について農林省がさきに繁殖障害の実態を調査した処,妊娠牛はこのうち23,952頭,妊娠不明が8,856頭,分娩後3ヵ月以内(生理的空胎)のもの6,506頭であって,いわゆる空胎牛というのは7,354頭で,この内訳は病的空胎が3,823頭,その他の空胎1,584頭,未種付1,947頭となり,病的空胎牛のいかに多いかがうかがえる。又病的空胎の大半は卵巣機能減退をはじめ卵巣嚢種,黄体遺残,卵巣萎縮などによる卵巣のみの疾患が1,891頭を占め,つぎに子宮内膜炎等による子宮の疾患牛が1,070頭,卵巣嚢種と子宮内膜炎などによる卵巣と子宮疾患牛の437頭が目立って多く,このことは市乳供給地帯における濃厚飼料給与過多と運動不足,また北海道等における栄養不十分,或は畜主による飼育管理の不足に原因するものであるといわれている。

岡山県の実施要領

 岡山県としては農林省の空胎防止事業の指定県にはなっていないが,本事業は今後の乳牛増殖上重要であるので,県独自の立場から「乳牛の空胎防除事業実施要領」を定め次の要領で実施することになった。
 本年度は一応和気郡,赤磐郡の一部,児島郡,井原市,後月,真庭,勝田の各郡の対象乳牛約800頭に対して,それぞれの管内家畜保健衛生所が中心となって,関係団体の積極的な協力を得て,乳牛の空胎を解消し,これの原因を思考し繁殖障害等の早期発見と的確な診断治療及び飼養管理指導によって,乳牛の増殖,牛乳の増産を図ると共にその他の地区においても乳牛,和牛の空胎防除の意義を認識させて健全な畜産の発展を期することになった。
 なお実施期間は6月から明年3月31日までで,妊否不明牛,受胎不良牛に対し,2ヵ月に1度関係家畜保健衛生所が一斉検診を実施する。又県畜産課からは直接,御津郡平津村の乳牛を対象に実施することになった。