ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年9月号 > 試験成績 老廃牛の肥育試験

試験成績

老廃牛の肥育試験

千屋種畜場

 雌の老廃牛の肥育については和牛の本来から畜産家の間でも経営を有利にしようと思って一応試みる事で有るが,偶々材料が出来たので当場繋養中の老廃牛を利用して肥育してみたが,当場での素牛と言えば愈々繁殖能力のなくなった老廃牛で経済的よりもむしろ肥るか,否か問題と考え肥育をこころみた。この牛は黒毛和種,第三きよみ号で昭和14年7月24日生,場内産,面旋下,両眉旋,背旋後,項旋中弐,天旋壱である。

一.廃用肥育開始までの略歴

 この牛は場内産で民間に払下して4産,昭和24年3月31日に再び買戻し,昭和27年12月30日まで入場後3産,計7産した。
 昭和28年6月離乳時は非常に痩せ,前歯(門歯)は全部脱落し,第二臼歯も脱落階状歯となって居た。
 昭和28年中は極力受胎させるよう治療に努めたが,老衰の為卵巣機能減退し,それに加えて強度の尿膣であったため,結局受胎不能と判定して昭和29年2月末から本格的肥育に這入った。

二.肥育期間中の給与法

 肥育開始時には大体中等度の肉付であったが,之を基準として本格的給与は3月からとした。
 その期別,配合割合及び給与等は次のとおりである。

 一.期別配合割合
期 別 第1期
(自3.1 至3.31)
第2期
(自4.1 至4.30)
第3期
(自5.1 至6.20)
配合品目
挽割麦 0.6 35% 0.6 30% 0.8 35%
0.35 20% 0.5 25% 0.6 30%
脱脂糠 0.5 30% 0.5 25% 0.5 25%
大豆粕 0.25 15% 0.35 20% 0.25 10%
食塩 0.1 0.1 0.1
炭カル 0.05 0.05 0.05
稲藁 1.8 1.6 1.2

 備考 体重100sに対する1日量

 二.肥育期間中給与量(給与増加量)
測 定 月 日 体     重 給 与 期 間 1日平均給与量
29.3.1  415s 自3.1 15日間 10,763g
至3.15
29.3.15 431 自3.16 16日間 13,650g
至3.31
29.3.31 457 自4.1 15日間 14,514g
至4.15
29.4.15 461 自4.16 15日間 14,875g
至4.30
29.4.30 468 自5.1 15日間 14,438g
至5.15
29.5.15 478 自5.16 16日間 13,725g
至5.31
29.5.31 489 自6.1 20日間 13,650g
至6.20
29.6.20 485    −
 三.肥育期間中濃厚飼料給与金額
種 別 配 合 % 全給与量 単価(k当) 金   額
品 目
挽割麦 34% 521.36 33.33 17,377円
25% 380 27.33 10,485円
脱脂糠 26% 395.2 20 8,904円
大豆粕 15% 223.44 48.8 10,904円
食塩 1% 15.2 20 304円
炭カル 0.50% 7.6 5.6 43円
合計 1,542.80   48,016円

三.体重増加率

期  日 28.6.30
離 乳 時
肥育開始前 1ヵ月 2ヵ月 3ヵ月 離乳時から
の 増 加
肥育前に
対する増加
体重 366s 415 457 468 485 119 70

四.解体成績

区 分 重     量 6.20
生体重に対する%
6.21
屠殺前に対する%
品 目
6.20 生  体  重 485s
6.21 7時(出場時)
生体重
460s 94.84%
6.21 9時(屠殺前)
生体重
450s 92.78%
枝肉 243s 50.10% 54.00%
13s 2.68% 2.88%
足尾 7.50% 1.54% 1.66%
肝臓 9.50% 1.95% 2.11%
胃・腸・外内臓 99.80% 20.57% 22.17%
毛皮 18.80% 3.87% 4.17%
精肉 206.25% 42.52% 45.83%
骨 (足 頭 以 外) 36.75% 7.58% 8.15%

五.屠殺時の肉眼的状態

 老令牛である為皮下織の脂肪の付きは普通であったが背腰(ロース)の部には白色脂肪が這入って居た。臀部に於ても同様であった。肋間の脂肪は余り良好でなかった。特に腹腔内の脂肪に於ては帯黄脂肪沈着し良好とは言えなかった。
 筋肉内への脂肪差しも年令の関係もあって良好でなかった。

六.考察

 この牛は空腹の時相当栄養も快復し,肥育期に這入るまでの状態は老令乍ら良好と言わねばならない。併し脱歯して居る点は非常に条件が悪かった。屠殺時の脂肪の状態からして飼料を煮てやらなかったのは遺憾であり成績にも影響して居ると考える。
 これを経済的に見ると肥育前より屠殺までの体重増と飼料費を計算して体重増が18.6貫で100匁120円と見た場合22,320円になり,これに対し飼料費が48,016円となるので結局老廃牛の肥育は赤字となる様である。
 猶今後この様な老廃牛の肥育に於ては,当地方の様な立地条件の処では肥育開始迄に良質の草の給与或は放牧に依り相当の栄養を獲保して,基牛とするならばもう少し経済的であると考える。併し肥育状態からその成績を見る点では参考になり今後の指針となるものと思料する。