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種付前後の緬羊

津山畜産農場 沖技師

 緬羊にとって苦しい暑さも9月の声を聞けばどうやら峠を越えこれから暑中の衰弱回復に,又最も重要な種付期を目前に控え,本格的な体の充実を計らなければならない。種付に備えて母体の栄養を良くし充実させることは発情の誘致を強化し,又不妊を減少し産仔率を増加させるものである。即ち栄養状態が良くなっていれば自然と発情が正確となり,交配期間が短くて種付管理上有利となり,又受胎率も非常に良くなり,産仔数も普通1頭分娩であるが栄養良好の場合に双生仔の分娩も多いものである。ここに緬羊飼育者は斯る利点を実現すべく,飼育管理に最大の努力を傾注すべきである。緬羊の飼料としては普通青草では5s位与えているが,春より生産されている青草も次第に質が低下し相当硬くなり,食べ方もぐんと悪くなってくる為に,出来得る限り良質の軟い草を与える様にし,又品質低下の程度に応じて給与量を増して其の中から良好な部分を選択して必要量だけは絶対に採食させる様にしなければならない。又濃厚飼料は平素でも栄養の補助として与えているが,雌の場合は種付の約3週間前頃から少量増加し,特に穀実類の麦,大豆又は大豆粕等を1日当200g程度与える。雄は約1ヵ月前より雌と同様に300g程度与える様にする。こうすれば短期間に相当栄養状態が良好に転ずるものである。この場合,青草は前述の様に良質なもので牧草が最も適当である。然し注意しなければならないのは余り栄養良好となり過肥になると逆に受胎率は低下し,目的に反する様になるおそれがあるから常に中庸を保つべく注意が必要であり,雌雄共に種付期前には運動をよくさせ,よく食べさせ強壮,活発,元気溌剌なものにしておくことが必要である。この他種付の準備として雌は尾部,肛門,陰部等の周囲の汚毛の掃除刈を行い,雄は陰茎前の毛を短く剪り交配の便を計るようにする。交配には雌雄共体を支持する為に肢が強くなければならないが,これは運動によって強くさせ,特に雄において必要である。
 衛生的な面よりみれば恐ろしい腰麻痺の発生が多いのは9月である。折角努力して造り上げた緬羊もこれに感染すると忽ちにして廃物同様となってしまう。これは蚊が媒介者となり体内の糸状虫を緬羊体内に移した場合に起る病気で,感染すると突発的に後肢が麻痺し歩行困難,不能,更に繁殖不能となるもので,蚊のいる処は勿論,牛舎と緬羊が接近しているものは感染率が高いから,常に蚊の駆除を励行し今一度9月中旬までに予防薬による予防(注射又は内服)を行い,万一の事故防止に備え万全を期して種付を行うべきである。
 緬羊の種付期に入ったが,困難なことは発情の鑑定である。緬羊の発情は普通9月中旬から12月上旬まで,即ち秋季に現われるものであるが,緬羊の最大の欠点として牛,山羊の様に強く発情の徴候を現わさない。然し注意して観察していると,矢張り挙動に落着を欠ぎ陰唇の腫張,粘液の漏出等を表わすがこれも個体によって相違し,著しい者とそうでないものとがあり,実際には十中八九まで発見困難であって,毎日飼育に従事している者でさえ見逃して,往々にして取返しのつかない結果を招くもので,現在飼育者の中でもこの為に毎年仔を分娩させ得ないのが多い様である。一家に雌雄共に飼って居るところは種付は殆んど確実に行われているが,雌のみを飼育する農家にとっては以上の様な発情の発見困難が原因となり,種付が厄介視される。これを打開する為には,種付期には飼育者は相協力して種付の完遂を期すべく隣接2,3軒でも共同種付を行いたいものである。種付方法については期間中雌雄共飼して交配させるものが多い様であるが,これは雄の精力が減退し,交配日の不明確による分娩予定不明等の弊害があるのでこれは絶対に避け,全然別居させ,種付時には朝夕の30分〜1時間位雄を雌群中に入れれば,雄は発情雌を探し交配するから見ておれば判る。終了後は又別居させるがよい。発情は普通1日継続するもので,発情後8時間位が交配の適期であり1回の交尾で殆んど確実に受胎するが,後に更に1回行えば確実である。不幸にして受胎しなかった場合には,16日〜18日の間隔を以て発情を繰返すから,交配日より起算して16〜18日前後に注意し再発情の有無を確かめ,11月一杯には必ず全雌が受胎する様にする。

岡山県畜連めん羊第2陣導入

 本年度の有畜農家創設用として,さきにめん羊410頭,山羊40頭を群馬,山形,北海道から導入した岡山県畜連では,去る8月下旬,第2陣として福島等からめん羊100頭,山羊57頭を導入し,それぞれ関係町村へ配付した。