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草生改良のやり方

農業改良課

先ず注意

(1)播く場所が,げし,どて,河原,農道,道路べり,鉄道べり等である場合,その法面(斜面)はあくまで弱めないような地ごしらえをすること。
(2)河原の高水敷(洪水の時につかる平坦地)の占用許可は所轄の土木出張所に相談して,知事の認可を受けること。此処の草生改良の時には関係の河川監督者の指示を受けて,実施すること。
(3)河川敷も,牧野の一部に認められているから,県の畜産課に相談して管理規程をつくると牧野と同じ補助を受けることが出来る。
(4)牧野の選び方や,種子の播き方については,最寄の地区農業改良普及所の方から指導を受けること。

地ごしらえの仕方

(1)自然の草を先ず,根ぎわから刈取って,草の勢力を弱めておくこと。(8月上,中旬にほし草刈取とかねるとよい)
(2)斜面の等高線に沿って,帯状に草を削って地ごしらえするのが一番よい。
(3)しかし河原の法面(斜面)特に外側(川の方)は帯状に草を削ってはいけない。
(4)斜面の傾斜が30度以上では,帯状に削っては危険で,30度以内でも砂質の所は危険である。
(5)削る間隔は,2尺以内では危険である。
(6)斜面の傾斜の急な個処や,土質のぐすい個所では,レーキで強く掻き起すことか,点々と鍬で削って,地ごしらえするとよい。こんな個所では種子が雨で流れる心配があるから,仕立てた苗を移植する方がよい。

石灰の施し方

(1)草地の酸度をしらべて矯正量(反当20−30貫)の消石灰を,播種の7−10日前に,削った所や,掻き起す所にまいて,レーキでよく掻き,土とよくまぜ合わせること。反当どれだけの石灰を撒くと,どの位地面が白くなるか単位面積で試して,程度を知って撒くとよい。
(2)タンカル(炭酸石灰)は消石灰の3割増にすること。施すのは播種の日でも無害である。堆土とよく混ぜ合わす方が,タンカルの効きめがよい。

肥料のほどこし方

(1)出来れば過燐酸石灰=反当2−3貫,硫安=反当1−2貫撒いて土とよくまぜ合わせること。
(2)窒素質肥料としては石灰窒素,燐酸質肥料として熔成燐肥の方がよい。石灰窒素は少くとも播種7−10日前によく土と混ぜ合わせること。消石灰又はタンカル,石灰窒素,熔成燐肥は一緒にまぜて施しても差支えない。
◎(註)黒ボク地帯では相当の酸性矯正石灰(反当50貫以上)を入れなくてはならない。燐酸質肥料の効果はてきめんであるから,熔成燐肥=反当4−5貫入れること。窒素質肥料としては石灰窒素=反当2−3貫入れることが望ましい。燐酸は牧草の根どりと株張りをよくし,窒素は初期の生育をうながし,加里は種実の稔りをよくしてくれる。

堆肥まんじゅう式草生改良

 石灰をほどこし,地ごしらえの出来た個所へ,一握ずつよく腐熟した堆肥をほどこし,きつく足で踏んで,平にし,その上に牧草の種子をパラッと播いて,軽く足で踏みつけて置けば,種子は雨で流れないで,発芽もよく,土地の具合がよいので,小さい芽生はよく育つ。

播種の時期

(1)県北の積雪寒冷地では8月中下旬に限るが,次春4月中旬−5月上旬播もよい。
(2)県南の暖地では9月中旬がよい。11月に入るとあまりよくない。播種が早い程,年内の生育がよい。春播はとかく,自然の草に抑えられ易い。

播種量

 すじ播の場合:赤クローバー=反当3−5合,アルサイククローバー,又はラジノクローバー:反当2合,オーチャードグラス=反当2升−3升のまぜ播きがよい。ばらまきの場合は3割増のこと。ラジノクローバーは,苗又は匍匐茎を移植する方が,経済的であり,効果的である。

根瘤菌のつけ方

 根瘤菌をつけると,2−3割増収となる。(岡山市北方岡山県立農業試験場に申込むと,1反歩用20円で送ってくれる。
(2)寒天に培養した根瘤菌は砂で稀釈して,ハトロン紙の袋に入れ油紙に包んであるから,4−5日間であれば,引出に入れて放置しても差支えない。
(3)根瘤菌は光に弱く,乾燥に弱いから,4−5日以上放置する時は,包をほどいて,湿気を加えて置く方がよい。
(4)根瘤菌のつけ方:先ず種子を水で湿らせ根瘤菌をまぜる。これだけでは撒き難いから2−3倍の乾いた砂又は土を加えると播きよい。
(5)根瘤菌が手に入らない時は,白クローバーの生える所の土を混ぜるとよい。

種子のまき方

(1)荳科牧草の種子は小さく,深い覆土をきらうから,播く所は足でふみかためて播いて,その上を足で軽く踏むか箒で軽くはく程度の覆土と沈圧でよい。
(2)禾本科牧草の種子は荳科牧草より覆土や沈圧を,きつくすることが大切である。レーキで軽く掻いて,禾本科牧草の種子を播いて,又レーキで軽く掻いて,足できつく沈圧するとよい。
(3)牧草畑や改良草地が寿命が長く,よく生産されるためには荳科,禾本科のまぜ播きがよい。
(4)荳科と禾本科とのまぜ播の場合は,面倒でも禾本科を播いて,それから荳科を播くこと。

その後の管理

(1)霜柱で根元が浮く所では,麦踏の容量でふんでやること。冬期灌漑の出来る所では冬期灌漑するとよい。
(2)春早く,芽生え時に畜尿を3−5倍に薄めたものを撒くとよい。刈取ごとに施すことは生産が挙って望ましい。
(3)ぼこぼこの土壌で春乾く所では,春播の場合は特に4〜5月の乾燥期に入る前に踏圧して根の伸長を計るとよい。
(4)初めの中は,草がおおいかぶさることがあるから,自然の草と一緒に刈取って,野草をおさえるとよい。その後で畜尿をほどこすと,牧草は早くのびて,雑草に打ち勝ってよい。
(5)生育のあまりよくない所で,刈らないで根張りをよくすること,株を太らすことが大切である。
(6)よく出来た所は梅雨期に入る少くとも,10日前までには刈る方がよい。出来すぎると腐り易い。梅雨期に刈ると株だえし易い。

乾草のつくり方

 一時に乾燥すると,葉がパリパリに乾いて粉になるから,このように乾かないうちに積んで,むらして広げて,パリパリに乾かないうちに積んで,むらしては乾かし,ヤンワリとした力のある香気の高い乾燥をつくること,この程度で水分は14%位である。

エンシレージの作り方

 サイロに詰めるには,旱天なら半日位でシンナリとした,水分70%位になってから詰めるとよい。つめ方は空気の入らない様に,サイロの外まわりを充分に踏んで詰めること。

ベルギーの古謬に
 『草なくして家畜なく
   家畜なくして肥料なく
    肥料なくして作物なし』