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岡山種畜場講座

養豚講座〔四〕
種豚の選び方

岡技師

 三.種豚の選定

 種豚としての成豚の選び方も前号の種仔豚の場合と同様に,その血統や親豚の能力について調査すると共に体型についてもよく吟味しなければなりません。
 殊に種雄豚の正しい選択は改良上極めて重要なことであります。即ち1頭の雄は1年間に自然交配による場合普通約50頭の人工授精によるときはその約4倍の200頭の雌豚に交配出来るので,仮りに1腹の産仔を8頭としても1年間に1頭の雄は自然交配約400頭の人工授精で約1,600頭の父親となります。従って優良な遺伝形質も不良な遺伝形質も急速に多数の子孫に受け継がれるわけで,その選択に当って細心の注意を払わなければならない所以であります。
 種豚の選定に於ても,血統,能力の調査は種仔豚の場合と同様でありますから,種豚としての体型を説明致します。
 豚を飼う主な目的が肉を生産することにありますから,種豚は将来肉豚に適するような仔豚を多数生産・育成するものでなければなりません。それがためには肉豚としての体型に更に繁殖豚として必要な形態を兼ね備えたものがよいわけです。
 そこで先ず第一に肉用豚としてはどんな形のものが望まれるかに就て考えて見ましょう。

◎肉用豚としての体型

(イ)屠肉の歩留りがよいこと。このためには体の幅・張り及び深みが充分にあって,寧ろ骨細で肩・腿などがよく充実しているもの。
(ロ)高価に売れる良い肉(例えばロースや徳利等)の生産される部分がよく発達していること。このためには胴伸びがよく,腿の張りが充分で肉附のよいもの。
(ハ)所謂切り出しの少ないこと。このためには皮膚に余計な皺がなく,全体として弛くないこと。
 一方繁殖豚としての側から見ますと次のようになります。

◎繁殖豚としての体型及び条件

(イ)よく品種の特徴を備えていること。
(ロ)雌豚は全体として相貌がやさしく,優良な多数の仔豚を生産・育成するためにはその生殖器及び消化器は発育良好・健全でなければなりません。このためには体構がしっかりしていて胴伸びがよく,体の張り・深み・幅が充分で所謂中肉型のものがよろしい。
(ハ)雄豚は如何にも雄らしい雄相を呈して活気が横溢しているものがよい。体躯はよく緊り,肢蹄は強健で太く直立し胴はやや短厚で,後躯はよく充実し,睾丸の発育も十分で堂々たる態度のものがよい。
 雄は年令の進むに従って前躯が重厚となり,恰も雄獅子のような観を呈するものがあるから,特に後躯が充実したもので,満2才以下のものでは肩巾と後躯の巾は同一のものが良好であります。
(ニ)雌豚は多数の仔豚を孕んだ場合,妊娠末期になりますと肢蹄の弱いものでは姿勢が崩れて歩行に支障を来たすことがあり,又雄豚では交配時に四肢殊に後肢に体重の大部分を支える関係上,雌雄共に頑丈でよく発育した腿と堅牢な肢蹄とが望ましい。
(ホ)雌雄共に年令に応じた体の発育を示し,健康で採食がよく常に溌溂としたものがよい。外観上に現われるその表徴としては顔の幅が広く,顎及び口角部辺りの発育が良好で,皮膚・被毛に艶があって,尾はよく巻いて動作の軽快なものがよろしい。成雄豚は同品種・同年令の雌豚に比べて40−50s(10−13貫)内外重いのが普通です。
(ヘ)乳頭の数は少くとも12個(6対)以上を有し,乳頭は大きく突出し,その配列が正しく各乳頭間の間隔の広いものがよい。乳頭の配列や間隔の不正なものは哺乳時に都合が悪く,又1頭当りの面積が狭いと乳量も十分でありません。配列の悪い乳頭や所謂盲乳頭などで14個あるものよりも,配列の正しい発育のよい乳頭が12個あるものの方が好ましい。
(ト)雌豚は性質が従順で,哺育の巧みなものがよい。母豚の性質はよくその仔豚に遺伝するものですから,どんなに産仔数が多くても哺育の下手なものは圧死したり,哺乳仔豚の発育が不揃いとなって,所期の成果は望めませんから注意を要します。
(チ)成豚で発育が悪く皮膚・被毛に艶のない縮れ毛のものは,幼豚時代にこじれたものか,又は慢性の疾患に罹っていることが疑われます。近時寄生虫の被害が多く,特に豚腎虫症が各地に蔓延していますから,疑わしい場合は6−7ヵ月以上の豚ならば尿検査によって感染しているかどうかが診断出来ますから,是非共尿検査を行ってから購入して,折角の処女地を汚染しないように注意しましょう。
(リ)雄豚には往々陰嚢ヘルニアが見られます。陰嚢ヘルニアは左睾丸に多く,生後1ヵ月の間に現われることが最も多くて,その後に現われることは稀であります。このヘルニアは遺伝するので,種豚としては失格でありますから繁殖には供用出来ません。
 又雄豚には包皮部に尿溜りのあるものがあり,これも遺伝する傾向があって,著しいものは種豚として失格であります。尿溜りは実際繁殖能力には特に支障を認めませんが,外観を損ずるので好ましくありません。尿溜りの発現は離乳前後より生後3−4ヵ月の間に多く顕著に見えますが,成豚になりますと余り目立たなくなります。尿溜りも前述のヘルニアも一般にバークシャー種には比較的少く,ヨークシャー種に現われる傾向が多いようであります。
(ヌ)なお雄豚については,近時人工授精が完成されて雄豚の精液を採取することが容易になったから,射精能力を有する雄豚を購入する場合にはなるべく精液を採取して,直接精液の量,活力,精子数,奇形率などについて科学的な調査を行う方がよい。従来体型上は理想に近い優秀な雄豚でありながら生殖能力に欠ける場合があっても,その真因を確かめるよい手段がなかったのですが,精液の検査を行えばその疑問は自ら解決します。
 以上前後3回に亘りまして種豚の選び方について概説したわけでありますが,之をもちまして本節を終ります。