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10月の飼養管理と飼料作物の栽培

乳牛

 高く澄み渡った青空を赤蜻蛉が飛んで行き,秋田を渡る秋風に黄金の波が打ち,高天肥馬の好季節であります。村の鎮守の森からは豊年を祝う祭の太鼓が響き,各地では畜産共進会が催される月であります。
 10月の平均気温は10−18℃でありますから,酷暑と,蚊・蝿の襲来と,飼料の変敗と,消化器の機能減退に悩まされた乳牛も,漸く健康の増進と能力の向上のために好ましい季節となり,体重や乳量も漸次増加して参ります。

一.飼料給与

(イ)青草 野草期から枯草期に転換の道中で,繊維が硬くなり草質が悪化して,殆んど飼料として使用出来なくなる時期でありますから,粗飼料として遅播の青刈玉蜀黍,青刈菊芋及び甘藷蔓を与えましょう。
(ロ)甘藷の利用 いも蔓は生のままで与える時は,降霜前に与えないと養分が低下しますから注意を要します。
 いも蔓は,生藷と等量またはそれ以上の収量がありますから,生蔓として与える以外は,なるべく乾燥又はサイレージとして越冬飼料にすることが賢明であります。
 生藷は13℃位で横穴又は立穴に,雨露の入らぬように貯蔵するが,切干甘藷又はいも糠サイレージ(生藷を短冊形に細切して2−3割の糠類と混合したもの)として貯えるのがよろしい。

二.管理

 月末には降霜があることもあって朝夕の気温が急冷し,しかも牛は換毛期で感冒にかかり易いので,隙間風が入らぬように牛舎の破損箇所の修理をなし,そして気温に充分注意して,窓の開閉或は敷藁の増給を計って感冒にかからないようにしましょう。

三.運動・日光浴

 秋空の元,燦々と照り輝く日光は特に紫外線が多いので牛の健康を増進するために,日光浴を兼ねてせいぜい牛を戸外に出して運動させてやりましょう。

四.消化器病の防止

 食欲の秋で,乳牛の食欲もぐんぐん増進しますが,食欲にまかせて多量に特にイモ蔓等を与えますと,食滞,鼓脹,下痢等を起しますから,充分食欲と糞の状態を考慮して飼料を与えて下さい。
 生蔓,生藷を与える時は徐々に増給して,過食による鼓脹,下痢等を起させないようにすることが肝要で,若し過食で下痢や血便などが出るようになると,なかなか癒らないから過食は常に注意しましょう。
 過食の害を防ぐには,平素から充分水を飲ませることが肝要で,もし下痢をするようになったら給与量を控えるか或は給与を中止しなければならず,容態によっては是非一度獣医師に診察して戴きましょう。

養鶏

 10月になると秋の取入れの農繁期を前にして各種の行事並びに秋の取入れ準備で中々忙しい何か落ちつかぬ浮ついた毎日を迎えますが,鶏の管理には油断大敵の時期であります。産卵開始の若雌,換羽鶏,或は点灯飼養鶏と管理者の一寸の油断は大失敗を招くものが控えて居ります。責任者の唯の口連絡でなく不在の時は黒板等に明瞭に連絡を記し管理に遺漏のない様にやって行き,卵価高の10月に周到な管理を行って初年鶏,2年以上鶏に充分能力を発揮さして行きましょう。
 10月の中旬を過ぎると気温も下り,特に朝方の冷え込みは鶏にとって相当の痛手であります。北側の窓は閉じ,吹き通しの寒風が鶏体を襲わぬ様にし,又賊風(隙間風)を防ぐ様にしましょう。此の管理を怠ると抵抗力の弱い若雌はループに罹り産卵開始後間も無く産卵を中止し,しかも之の治療が遅れ適切でないと回復に予想外の労力と多くの経費を要し赤字を出すことになりますから十分注意が肝要であります。
 若し万一ループが発生した時は鶏の元気,食欲,鶏舎内臭気,鼻孔の周囲の状態,翼下の状態等により判断できますから早期に発見し,軽度の内に早期治療し早く回復させましょう。治療に当っては現在優秀な薬物が販売されて居りますから,姑息的な治療でなく思い切って徹底した治療を行う事が必要であります。早期回復により少々薬代を要しても鶏の消耗が少く鶏体の衰弱も少く,従って産卵開始も割に早く,結論としては経済的であります。
 若雌で食欲は割にあるも体の発育が悪く体重が軽く顔色の悪いものは内寄生虫に原因して居る事が往々ありますから駆虫を実施する事が必要であります。

養豚

 10月はすがすがしい秋風がそよぎ,青空の澄み渡る気持のよい季節で,豚にとっては春に次いで好ましい季節であります。真夏の暑熱に苦しめられた豚も,10月ともなると食欲は増進し,眼に見えて肥って参ります。しかしこの肥るのに反して「さんま」が安価に出廻るようになりますと,豚肉相場は下って来るのが常々であります。
 この月は9月に分娩した母豚の飼養と,哺乳仔豚の哺育に満全を期さなくてはなりません。

一.授乳母豚の飼養

 先月に分娩した授乳母豚の給餌に際しては,その都度飼槽を清洗し,給与濃厚飼料中の可消化粗蛋白質を14−15%になるように按配して,日量5s程度を軟く練って,1日4回に分与してやります。

二.哺乳仔豚の飼育

 仔豚の成長は驚くほど速いものです。哺乳中の仔豚の成長は,母豚の泌乳能力によって左右されますが,通常生後15−20日頃になりますと母豚の飼槽を舐食するようになりますから,この頃に餌付けを始めます。
 哺育飼料は,甘藷,砕麦などを煮て之に仕上麦糠,麩を混じ微温湯で練って与えると同時に,柔軟な青草,野菜を適宜給与します。餌付けが遅れると,所謂乳肥りの体質の弱い仔豚になりますので,出来るだけ早く哺育飼料に慣らすように仕向け,発育の促進と消化器の鍛錬をしなければなりません。
 哺乳期間は少くとも50日,出来れば60日にしたい。どんなに発育がよくても生後30−40日で離乳することは危険で,その後の発育が渋滞して所期の成果は望めないわけです。

三.管理

(イ)10月は日中の日射しはまだ暖いのですが,夜間は相当冷え込みますから,布団としての敷藁を沢山入れてやることが大切です。特に幼豚はコンクリート床では冷え腹となって,下痢の原因になりますから注意を要します。
 しかし敷藁を豚房内の全面に広く平等に投入し,厩肥の生産を増やすと言う養豚家がありますが,これは間違いで敷藁は豚の寝台であり,布団であるから,豚房内の奥の一角に高く入れてやり,その他はコンクリートのままでよい。
(ロ)豚の削蹄については,充分運動させている豚にはその必要性は殆んど認めませんが,運動不十分で伸長した蹄は適宜切ってやらねばなりません。
 器具としては剪定鋏とやすりを用い,豚体を愛撫して横臥させ,剪定鋏で切り,やすりで擦って整形してやればよろしい。削蹄を怠りますと,豚の肢勢が崩れ歩様が悪くなって繁殖豚としての生命を減じますから,春秋2回は是非削蹄してやることが大切であります。

飼料作物の栽培と利用

 9月の中旬,適期に播種した蕪菁は10月上旬,本葉が2−3枚になった頃,第1回の間引を行い,その後生育に従って3−4回の間引を是非励行して頂きたい。この間引をおこたると腰高の,軟弱な苗となり病虫害に侵され易いので特に留意せられたい。蕪菁は大根と同様に生育の初期にあぶらむし,カブラ蜂,青虫,夜盗虫,褐斑病の被害を受け易いので2−3回,砒酸石灰加用ボルドー液の散布,或はD・D・T,B・H・Cの施用を御願いしたい。今月の中下旬にかけて中耕除草,追肥を夫々1回程度実行して頂きたい。
 年内1回刈の2−3回刈を目的とした燕麦の播種は適期と見られる。9月中旬に播種が出来なかった方は,本月上旬早々播種していただければどうにか,間に合うので是非播種せられたい。
 4月播種,6月下旬刈取りの玉蜀黍の後作として,矢張り同じ玉蜀黍を栽培することを屡々見受けるが,何にしろ玉蜀黍は御承知の通り地力を著しく消耗させる作物であり,且つ耕地を堅く引きしめる性質を持っているから,第2回播種玉蜀黍収穫の後は充分に深耕し,砕土を丁寧に行い,厩肥を出来るだけ多量に施用することが望ましい。この後作としては燕麦,ベッチの混播を是非おすすめしたい。
 最後に甘藷の利用のことであるが,本月の中下旬から愈よ収穫の最盛期になるが甘藷,甘藷蔓の飼料的価値を穀実と比較して見ると次の通りであるから,1個の小芋でも,また1本の蔓でも無駄なく利用されたい。紙面の都合で来月号に詳しくこれの利用方法について御知らせしたいと考えている。

種  類 水  分 粗蛋白質 粗 脂 肪 粗 繊 維 粗 灰 分 可溶性無窒素物
干甘藷 11.6 5.5 0.8 2.1 5.5 76.7
干甘藷蔓 12.1 2.8 3.1 11.8 10.4 51.8
大麦 12.2 9.8 2 1.2 2.5 67.3
小麦 14.4 13 1.5 3 1.7 66.4

 尚甘藷の収穫適期の問題であるが,一般に薄霜に1回あててから,と言われているが甘藷蔓の飼料成分は薄霜にあたると激減するから,是非降霜前に堀り取ることにしたい。
 甘藷の後作はゆっくり整地して明年4−5月収穫の燕麦,ベッチを混播し播種することにしたいものである。