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編集室より

◎異変と言われた夏であっても,本格的に照り出すと気銀柱は遠慮なく昇ってくれる。畜産課の室は西陽を受けて,午後になると35度を突破する。机の上のガラス板も熱を持って腕を置くとじっとり汗が浮いて来る。同じ棟の中でも農業改良課,蚕糸課の方へ行くと南の涼風を受けて別天地である。更に人事委員会へ行くと同じ県庁内にこんな処もあるのかと思われる程の涼しさであって,自分の課へ帰るのが嫌になる程である。世の中の巡り合わせなんてものはこんなものであって,運,不運も時によりけりである。畜産の狭い世界であっても,鶏が栄えたり,酪農が栄えたり,豚が栄えたり,黒牛様々の時もあったのである。巡り合せの良い時にその部門を伸ばすことは又畜産全体の発展でもある。雑魚を追い廻す様に上げたり下げたりしないで,大らかな気持でありたいものである。

◎暑いのに又々首を締めて,上衣を着て暑そうな姿が復活して来た。この傾向は都会になる程強い様である。然も銀行や,大会社や団体のお偉ら方に多い。冷房装置があり,扇風機がある処の御人ならばそれで良いかも知れないが,35度の室に収ってこんな姿をしていたらたちまち熱射病に罹ってしまう結果となる。と言って相手方が正装をしているのにこちらが下着だけで応対することも失礼になる。何んとか日本人向きの夏の服装は出来ないものか知らん。開衿シャツなど大いに残したいものの一つであると考えるがどうか。

◎暦の上ではもう秋である。眼に写る光線にも既に秋の色を感じ始めた。秋ともなれば共進会があり,犢のせりが始まり,競馬も始まることであって,畜産界も急に活気を呈して来ることである。特に今年は新らしい乳牛ジャージー種が入って来ることであって,地元町村は受け入れ準備に追われている。暑さを吹飛ばして秋の畜産の為めに大いに準備を進めたいものである。

◎有畜農家創設事業で和牛の生産県はいずれも販路拡張に躍起となっている。世は宣伝の時代であってみれば,宣伝に来た処,購買員の待遇の良い処へ出かけるのが人情である。生産部の独自の宣伝も結構であるが,要は購買者の便宜を考え,購買し易い様に,荷が出来易い様に,輸送がうまく行く様に考えてあげることが必要になって来るのであって,この為めには生産地と名のつく郡は大同団結して市場の日割等もお互に譲り合って総てがスムースに行く様に考えてほしいものである。岡山県に於ては備中であり,美作であっても他県の人から見れば隣り同志の阿哲郡であり真庭郡であってその間には何等界は無いのであり,備中と作州で同日にせり市を開催する様なことは考えられないのである。本県和牛界のために販売面については団結して挙県一致の販売対策と宣伝を願いたいものである。(8.16)