ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年10月号 > ホルスタイン種系乳用牛登録の解説

ホルスタイン種系乳用牛登録の解説

岡山県酪農協会 松田主事

 昭和29年度からホ種系乳牛の登録が本格的に日本ホルスタイン登録協会によって始められることになった。
 我国乳牛の現在総数は40万頭位と推定される。その75%が,この登録の対象となるホ種系乳牛である。本県に於いても6千余頭のうち約75%の4千5百余頭がホ種系,いわゆる雑種である。これ等の乳牛は明治初年から,色々の種類の乳牛が洋種と称して,外国から輸入せられたものが,互に交雑したり,或は和牛の血液を混じたもの等も出来たが,大正初年度から他品種のものは次第に声望を失い,ホルスタイン種が豊乳性と体格の雄大なること,性質が温順であること等で,日本の乳牛は殆んどホルスタイン種とその系種となった。
 其の後猶国家でも,又民間の有によっても,米国或は和蘭等から優良な種牛を輸入してその改良に努めた結果,戦時中や戦後の空白時代があったとは言え,今日の優れたホルスタイン種や,その系種の乳牛が多数続出するようになった。
 今,ホルスタイン種と其の系種とを比較して見ると,純粋種の方に大体優秀なものが多いが,系種の中にも優れたものは1年6・70石の乳を出し,脂肪率も4%以上のものもあるので,一概に系種が純粋種よりも劣るとは言えないものであるから,その改良をゆるがせにすることは出来ないと思う。
 そこで今般この系種を対象として,新しい制度で,ホルスタイン種系乳用牛登録が実施され,その改良の指針が明らかになった。
 我が国で乳牛の登録が始められたのは明治44年からで,現在のホルスタイン種の登録制度である。この制度は単に純粋種間の血統の登録と,一部体形能力を審査,検定する選賞登録であるが,今度始められたホ種系登録は,体格能力の優秀なものを次々に選抜改良してゆく選択登録である。
 この登録制度を全面的に活用してゆけば,ホ種系の改良はすばらしく,余り遠くない将来には,現在の純粋ホルスタイン種より更に優秀なものとなるであろうと考えられる。而してこれの実現を見るには,乳牛飼育者の理解と熱意,関係技術者の指導力の如何が大きな鍵となるであろう。
 然しこれまでもホ種系の登録は,予備登記,犢登記,本登記の3種の登記制度によって実施されていたのであるが,これは第一段階の予備登記が祖父母まで判らないと登記出来なかったため,他から買入れたものであると祖父母等の調査が困難で,従って登記できず,一般の魅力がなくて普及性を欠ぎ,一向に進展しなかった。
 新制度は昭和23年度から各機関で種々考究されて今年度から愈々実施の運びとなったもので,その概略を解説して大方の御参考としたい。
 この登録の対象とするものは,ホルスタイン種の血統登録牡牛(純粋種)を父とし,ホルスタイン種の毛色及び特徴を具えた母牛から産れたもので,同じくホルスタイン種の毛色及び特徴を具備した牡牛に限って登録が行われる。

 登録の段階は次の3種である。

 基礎登録
 予備登録
 本登録
  本登録候補牛
  本登録牛
  特別本登録牛
  高等本登録牛

基礎登録

 基礎登録は次の2種について行う。
(一)ホルスタイン種の毛色及び特徴を具えたホルスタイン種系乳用牛で,その改良の基礎となり得るもの。即ち,父牛は名号血統登録番号が明らかで,種畜検査に合格したもの。母牛はホルスタイン種の毛色と特徴を具え,各号,生年月日が明らかであること。従って一代雑種(新乳牛)は登録しない。但し当分の間,特に改良の基礎として適当なものは,両親不明であっても,登録委員の認定によって基礎登録することが出来る。
(二)基礎登録牛の仔で犢登記したものが所定の年令(生後24ヵ月−36ヵ月,特別の理由のあるときは48ヵ月まで延期することが出来る。以下同じ)で,体格審査の結果70点未満で,予備登録に不合格となったもので改良の基礎となるもの,又は所定の年令までに予備登録の資格を取得しなかったもの。

予備登録

 予備登録するには,生後30日以内に犢登記を申込み,犢登記証明書を有するものであることが前提条件となる(これは本登録の場合も同様である。)資格は体格審査だけで,能力検定は行わない。即ち次の2種である。
(一)基礎登録牛の仔で,所定の年令で体格審査を受け,審査得点70点以上のもの。
(二)予備登録,本登録,同候補牛の仔で本登録の体格審査に不合格になったもので,審査得点65点以上のもの、又は体格審査に合格しても能力検定に不合格となったもの及び制限年令までに能力検定を実施しなかったもの。

本登録

 資格としては,体格審査と能力検定とに合格しなければならない。予備登録牛,本登録牛,同候補牛の仔が(犢登記したもの)所定の年令に於いて体格審査を受け,得点73点以上で合格し,別に定められた能力検定標準(高等登録の1割減)合格したもの。
 この能力検定を受けるには,体格審査合格後は初産でも2・3産でも随意に受けられるが,おそくも満5才までに分娩したその乳期で検定を開始し,これに合格したもので,その父母の繁殖成績に異状を認めないもの。

本登録候補牛

 本登録の受験資格のある牛が体格審査に合格し,能力検定を始めないもの及び検定中のものに対して付した名称であるこれは別に証明書の発行はなく,犢登記証明書に捺印し番号を記入して返戻される。
 体格審査を受けなかったもの,不合格のもの及び能力検定に不合格のもの,又は満5才までに検定を開始しなかったものは予備登録されることになる。

特別本登録,高等本登録

 母及び祖母が本登録牛であるものが本登録牛となった場合,即ち3代続いて本登録の資格を得たものは,遺伝素質がホルスタイン種と同様のものとなったものと認めて本登録特別証明書を交付される4代目以後のものについても同様で,その後一代くらい予備登録となっても,その次代のものが本登録の資格を取得すれば,特別本登録牛となる。又これらの牛が体格審査(75点以上)及び能力検定に於いて,高等登録牛と同じ標準に合格したものに対しては,所有者の申込によって高等本登録証明書を所有することになる。こう言う条件に具備した乳牛は普通のホルスタイン種血統登録牛と比較して,その産乳能力でも,遺伝素質に於いても,格段に優秀なものと伝える。

犢登記,分娩届

 登録牛(基礎,予備,本登録)及び本登録候補牛が分娩したときは,所有者又は飼育者は,その仔が牡犢,奇形であっても,死産又は流早産であっても,30日以内に分娩届を,登録委員を通じて提出しなければならない。牡犢の場合は予備登録,本登録をする前提条件として必ず犢登記がしてあることが必要であるから,生後30日以内に犢登記を,登録委員を通じて,申込牛の母牛の所有者がしなければならない。
 犢登録証明書には,基礎登録中の子には「予資」,予備,本,本候の子には「本資」の印を捺して発行するから,犢登記証明書によってその牛の登録資格が判る。

登録取扱団体及び申込手続

 総ての登録登記の申込は,日本ホルスタイン登録教会の委嘱した登録委員の保証を得て申込むことになっているので,各登録についての手続,其の他必要書類の詳細は,申込に際して最寄の登録委員に照会されたい。
 登録委員は所によってまちまちであるが,地方事務所,郡畜連,酪農組合の畜産技術職員を委嘱してある。
 登録の実施は一切,日本ホルスタイン登録教会の名で行うのであるが,基礎登録,予備登録,犢登記までは登録委託団体,即ち本県の場合は岡山県酪農協会でその実務を行い,証明書も岡山県酪農協会名を併記して発行する。
 本登録は以上の審査並に登録事務は日本ホルスタイン登録教会自体が行い,その申請手続及び証明書の交付等は委託団体を通じて行われる。

移動証明,再交付,更正書換,再審査,再検定

 右については血統登録の場合と同様の手続で行う。詳細は登録委員,酪農組合又は酪農協会に照合されたい。

旧制登記制度の経過措置

 従来の予備登記牛及び犢登記牛は,新制度の予備登録牛とみなされ,本登記牛は本登記牛とみなされる。
 新規程は昭和29年4月1日に施行されたが,それより6ヵ月間,9月30日までは旧規程によって予備登記及び犢登記を受けつけることが出来る。
 予備登記牛は昭和30年3月31日までに,犢登記牛は昭和31年3月31日までに本登記を申込み,共に申込んだ日から2年以内に旧制の規程による体格審査(75点以上)並びに能力検定(高等登録と同じ標準)に合格した場合は,新規程の本登録証明書を交付される。

基礎登録する牛の既に産まれている仔の暫定措置

 母牛の基礎登録を申込む際既に生産された仔牛の資格については,申込む時既に6ヵ月以上のもので,旧制の予備登記の資格を具備したもの,即ち祖父母まで名号,生年月日等明確なるものは予備登録を申込み,予備登記牛の資格のないものは基礎登録すればよい。
 又,申込む時生後6ヵ月未満のものは当分の間新制の犢登記の申込みを受付ける。又従来岡山県酪農協会が発行していた血統証明は,日本ホルスタイン登録教会の認承を得たので,基礎登録証明書と書換える。

登録料及び手数料

 本県内に於ける登録料及び手数料は下記の通りに定める。
 料金及手数料は,登録其の他申込と同時に,申込書に添付払込むことを要する。

(表)登録料及び手数料金

種     別 本会の会員である
組合の組合員
其   の   他
犢登記証明書交付手数料
         生後30日以内
 250円  350円
    〃    生後30日以上  350円  450円
基礎登録料  400円  500円
予備登録料  600円  700円
   〃   生後36ヵ月で申込むもの  900円 1,000円
本登録料 4,500円 5,500円
体格再審査料 2,000円 3,000円
能力再検定料 3,000円 4,000円
但し審査と同時申込の場合合算 4,500円 5,500円
移動証明手数料,犢登記牛  150円  250円
            基礎登録牛  250円  350円
            予備登録牛  350円  450円
            本登録牛  600円  700円
            本登録候補牛  500円  600円
証明書再交付手数料 犢登記証明書  250円  350円
            基礎登録証明書  400円  500円
            予備登録証明書  600円  700円
            本登録証明書 1,100円 1,200円
            本登録候補牛証明済
            犢登記証明書
 900円 1,000円
証明書更正書換手数料 犢登記証明書  150円  250円
            基礎登録証明書  300円  400円
            予備登録証明書  400円  500円
            本登録証明書  600円  700円
            本登録候補牛証明済
            の犢登記証明書
 500円  600円

1.本登録の検定期間中に於いて,更に期間を異にする検定を申込む時

種     別 本会の会員である
組合の組合員
其   の   他
料金合算 5,000円 6,000円

2.登録の申込みに対し,審査,検定,又は調査の為,特別の費用を要するときは,申込者はその一部又は全部を負担しなければならない。
3.登録料及び手数料は申込みの都度これを納付しなければならない。既納の料金は返納しない。
4.登録を申込むものは,日本ホルスタイン登録協会の会員となり,会費を納入しなければならない。
  正会員(ホ種純粋牛を飼育するもの)
         年額 150円
  准会員(ホ系種のみを飼育するもの)
         年額 100円
5.料金表の,本会の会員である組合の組合員と,其の他との料金の違うのは岡山県酪農協会の構成団体である各酪農共同組合は,本会の経費を賄う負担金を拠出しているので,その組合の二重負担をさけるための措置である。