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岡山種畜場講座

副業養鶏の在り方(五)

川崎技師

鶏舎の建て方について(続)

(二)乾燥

 鶏は湿気に対する抵抗性が他の動物に比較して弱く又多湿である事は各種病原体の生存命数を長くし又微生物,寄生虫の繁殖を助長しますから特に衛生上,結論的には経済上乾燥し易い様に土地から考慮して建てるべきであります。湿気の生ずる原因は地中よりのものと換気不良によるものと降雨等による大気中の湿度とがあります。
 防湿の為には床の高さを地面より高くし周囲に溝を堀り要すれば床下に暗渠を投げて置き土中の水分が直接舎内に蒸発しない様に床を完全にし,前記の換気を十分にして行く事が大切であります。又一方給水設備にも注意し飲水器周囲を徒らに湿らさぬように注意しなければなりません。

(三)防寒防暑

 鶏は気温が摂氏15−20℃の時にその産卵能力を良く発揮するのでありますご存知の様に鶏には汗腺が無く寒さより暑さに弱いのであり暑さを暖和する様に鶏舎を建てる事が肝要であります。
 屋根が低いと屋上の外気の影響が大きいのみでなく室内の空気量が少ないので室温の変化が激しく鶏の健康上望ましくないのであります。屋根は一定度の高さを有し事情許せば簡単な天井を設けてやる事が理想であり,この上には空俵,莚等をのせる事は一方法であります。屋根の材料は熱の不良導体で葺くようにし亜鉛鉄板葺は好まれません。
 又鶏舎の構造上鶏舎の周囲延間数を少なくして内坪数の比率を多くする事が外界の感作を少なくする事になります。例を挙げますと同じ12坪の鶏舎であっても間口6間,奥行2間の場合と,間口4間と奥行3間の場合では前者では13坪を周囲延間数の16間で割ると0.75であり,後者では0.85となりこの比率が高い程外気の影響が少ないと言われています。暑さ寒さを防ぐ上に於いて状況に応じて奥行は出来るだけ深くする事が必要であります。若し浅い場合は夏は前方に簡単な日覆を設けて臨時に奥行を深くしてやる事が必要であります。
 防暑の点より前後面の窓は広く開放出来る様にし,又鶏体に十分風が当たる様に低い窓即ちハネ上げ戸をつけて置く事も必要であります。又反面防寒の点より北西の窓は風を断つ事が出来る様にし又隙間風の入らぬ様にして置く事が必要であります。
 又鶏舎の構造と離れた事でありますが防暑の点より鶏舎の周囲に事情が許せば樹木を植える事は非常に必要な事であります。

(四)経済的関係

 理想的の設計は鶏の為には極めて結構な事でありますが,その為に多額の出費を為す事は特に副業養鶏に於いては不必要な事であります,しかし止むを得ざるものに就いては経済的に仕上げる事が必要であります。用材は実質的であり経済的ものを選び用材の規格寸法を十分研究しそれに出来るだけ合った設計をし不当の材料の無駄を生じない様にします。又土台,下見板の様に雨や湿気に摂し易い部分は防腐剤を塗布して置くと耐久力を増し結論として経済的であります。
 尚鶏舎は割に耐圧性が少ないから風当たりの強い所では鶏舎の筋違を入れて補強して置く事は暴風禍を未然に防ぐ上に必要な事であります。
 管理に便利であると言う事は労力の節約となり又管理が便利である為に自然管理が行届き鶏の為にも良く利益が少なくありません。位置の項で別述しましたが鶏舎を管理し易い場所に選定し更に構造上給水,給餌,採卵等を廊下より行える様にし労力を節約し,又掃除も容易にし易い様に構築して置く事は必要な事であります。

(五)付属器具

 (1)給餌器

 産卵率を高める方法の一つとしては飼料を出来るだけ多く鶏に食べさせると云う事が必要であると思います。之に対しては給餌器の役割も重要なものであります。
 哺乳動物の牛馬等は舌を以て飼料を摂取するからその容器も底が平であるか円みを帯びて居る事が必要でありますが,鶏の嘴は尖って居り給餌器の底面が平であったり円みを帯びて居ると底部に残った餌及び粉餌は採食するに困難であります。
 他面から考えると此の粉状の飼料の中に魚粉等が割に含まれて居て之を粗末にする事は大きな損失になるのであります。此の粉状の飼料を食べ易くするには給餌器の底をX字形にする事が必要であります。此のX字形は一段には直角になって居るのでありますが直角よりも更に若干角度を小にして鋭角にして置くと一層効果があります。
 鶏は給餌器内に入り脚を以て飼料を掻き散らす習慣がありますから之を防ぐ様に又同時に給餌器内に排糞させぬ様にする事も必要な事でありまして之が為には上部に回転自由の横木を附けます。又採食中嘴を以て飼料を散らして給餌器外に飼料を散乱させぬ為に両側に反りを附けます。
 尚鶏舎の廊下の面に給餌器を置き鶏が部屋から頸を出して採食する様にし廊下の面から給餌する様にすると管理者が給餌の為にその都度室内に入る労力を節約出来能率的であり鶏が給餌器の中に入って掻き散らす事が無く又糞,敷藁等を入れて汚す事も無く,衛生的であります。

 (2)給水器

 鶏にとって水は空気に次いで重要なものであるにもかかわらず割に水に対しては関心が払われて居りませんが,給水器には十分注意して清潔な給水器を以て新鮮な水を十分に鶏に与えましょう。
 給水器の容量は成鶏1羽に対して約1合位の割合にすればよろしい。
 経済的であり,労力を節約出来,掃除に便で割に衛生的でもあり薬物の給与に際しても支障を来さず周囲を湿潤させぬ方法としてはトコナベ焼の水鉢を以て廊下より給水する方法が良いと思います。