ホーム>岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和29年11・12月号 > 畜産の祭典第10回岡山県畜産共進会津山市で盛大に開催 |
第10回岡山県畜産共進会は10月6日から9日まで4日間,津山市小田中の苫田畜連家畜市場(第1会場)と同市鶴山城跡桜の馬場(第2会場)で盛大に開催された。今年からは県主催,各種畜産団体後援のもとに行われ,6日は開会式に引続き個体,総体審査が行われ,7日は雨天にもかかわらず個体,比較審査,8日は午前中に最後の比較審査が行われた。8日は池田氏夫妻をはじめ,津山市長,岡山県農地経済部長,各県来賓多数を迎えて,共進会期中最大の人出であった。
9日午前10時からは津山市小田中の家畜市場で藤本会長(県農地経済部長)代理,大河県畜連会長,友保県議会議長ら関係者,来賓,出品者ら多数出席して褒賞授与式が開催された。
まず審査長,惣津県畜産課長の審査報告ののち,藤本副会長から各部入賞者に農林大臣賞,県知事賞,優勝旗をはじめ,各種団体から賞状,優勝旗などが授与され,最後に県外和牛優良購買者に対して感謝状の贈呈が行われた。
なおホルスタイン系種の部一等賞入賞牛「オカスリーピース・コルンダイク号」は共進会終了後疲労と食中毒のため死亡しました。紙上をもって御見舞い申上ます。
第10回岡山県畜産共進会の審査が終了いたしましてここにその概況を御報告申上げますことは私の最も光栄とするところであります。今回の出品家畜は和牛,乳牛,緬羊,山羊,種鶏の5種でありまして以下その各々について御説明申上げたいと存じます。
全国和牛登録協会黒毛和種審査標準により,特に岡山県,産牛の特質をのばし,欠点を補うため,昨年の方針に引続き次の点を改良の重点として審査を行いました。
(一)品位に富むこと
(二)資質のよいこと
(三)発育良好でしかも体積に富むこと
(四)乳徴のよいこと
(五)肢蹄歩様のよいこと
出品郡市別に見ますと
牡におきましては,阿哲の7頭を匹頭に苫田3,高梁,吉備,都窪,小田,赤磐各1頭であり,牝は苫田,吉備の各10頭,都窪,勝田各9頭,真庭,高梁,川上各5頭,御津,赤磐4頭,小田,後月,児島,英田,久米の各2頭,浅口の1頭でありました。
次に産地別の出品を見ますと
牡では阿哲の10頭,苫田の3頭,高梁,真庭各1頭で,牝におきましては,阿哲の24頭,苫田13頭,真庭11頭,勝田8頭,川上6頭,高梁5頭,小田,後月,久米,英田各2頭となっています。
今回の出品は,当初の割当頭数の枠を厳守した結果,従来の出品頭数より相当減数し,なお町村並びに各郡共進会を経て厳選の上出品されたものだけあって,優劣の差極めて僅少であり,しかも特に本年におきましては従来出品成績のあまり振るわなかった地域から非常に立派なものが出品され,これまで優位にあった各郡市の成績を凌駕するような進歩が認められたことは,和牛改良の実績が全般的に向上し,普遍化したことを示すものとして注目されるところであります。
今これを細部について見ますと出品を通じて体積,品位に富み特に背腰,肋腹,乳徴につきましては逐年向上している点がはっきり認められますが,しかし角顔の形状及び,肢蹄歩様等従来本県の美点であったところに相当難点が見受けられ尚後躯の形状並びに肩の附着のゆるいもの等,将来改良上特に注意を要する点であります。
牡牛に於ては,その発育が平均を下回るものが若干ありまた体高の割りに体の各部の均合を欠ぐもの,また牡牛として骨量に乏しいものも見受けられました。
牝牛においては,毛色のうすいもの,被毛の粗いものが点々見受けられ,総体的に体にゆとりがなく,中躯の伸びに乏しいものが見受けられたことは,今後特に注意を要する点と存じます。
牡の13号は只重い頭,及び顔品において種畜の品位としていささか難点はありますが,一面体積に富みしかも体全体が良く緊って,資質,特によろしく堂々たる牡相を有するものとしてこれを首席といたしました。
次に11号は体全体のつりあい,品位等他に比べられない美点はありますが肢蹄特に骨緊り,蹄の形状に遺憾の点がありましたのでこれを2位といたしました。
次に牝におきましては,
40号は被毛及び之に伴う品位が理想に照らしていささか難点はありますが,均称体積極めて良ろしく,特に中躯の形状乳徴におきまして他の追随を許さないものとしてこれを首席としたのであります。
次に45号は品位資質特によろしく,肩の形状及び背腰,肋腹等他に見られない美点がありますがやや体積に乏しく体の伸びに欠ける点及び尻の形状にいささか難点がありますのでこれを2位といたしました。
更に16号は均称良く体積に富み資質良好でありますが被毛並びに十字部せん骨の状態に若干の難点を認め,45号に次ぐものとして参席といたしました。
(一)本県産牛の欠点である発育体積については相当改善されていますが,今尚体高の不足したもの,各部の均合,特に体の伸びを欠いだものを散見する事は将来大いに注意を要する点と認めます。
(二)なお資質の点についても本県産牛の改良の重点として連年指摘して漸時向上されているが尚被毛,皮膚の状態について一層の改善が望ましく,又後躯の形状特に寛の位置せん骨の状態等難点を見受けられるので資質と併せ注意を要する点であります。
(三)昨年も指摘した通り肢蹄についても一層管理に留意し,特に骨味,肢勢の良好なものを選定することが必要であります。
(四)最後に一般概況で述べたとおり体型資質の点で優劣の差が極めて僅少となったことは改良の実績を示すものでありますが種畜改良の本質からして将来は出品牛の遺伝的構成,即ち血統上の点にまで充分な考慮を払って種畜を選定することが必要であります。
日本ホルスタイン種体格審査基準により特に本県の農業経営に即した乳用種牛の作出を目標として次の諸点を重点として審査を行いました。
(一)品位に富むもの
(二)発育が良好で体積に富み形質の宜しきもの
(三)乳徴の良好なもの
(四)肢蹄が強健であって長期の飼育に耐えるもの
出品はホルスタイン種33点,同系種7点,合計40点でその中未経産牛31点,経産牛9点でありまして酪農組合別に見ますと
北部酪農業協同組合 15点
山陽酪農業協同組合 5点
邑久酪農畜産加工販売農業協同組合,美作酪農業協同組合,浅口酪農畜産加工販売農業協同組合,各4点,平津酪農業協同組合3点,児島酪農業協同組合2点,倉敷酪農業協同組合,赤磐酪農業協同組合及び岡山市各1点でありました。
次にこれを,産地別に見ますと
県内産36点,県外産4点でその中25点は自家生産のものでありました。
今回の出品は前回或いは戦後数回開催されたものに比較すれば飼養管理,体型,資質何れも向上し改良進歩の跡,歴然たるものがありました。特に飼養管理において手入,調教,馴致が良好であったことは日頃皆様が乳牛改良のために不断の努力を傾注して居られることが伺われ慶びに堪えません。
未経産牛として出品されたものは何れも県内において生産された月令12ヶ月より28ヶ月までの育成中のものでありまして幼令な5頭の外,21頭はそれぞれ既に種付された妊娠中のもので近年稀に見る優秀なる粒揃いのものでありました。一.二のものを除き特に飼養管理において調教,馴致,肢蹄の保護,手入,体型において体積が豊かで乳徴良く,資質においても良好で品位と活力に富むものが多数でありました。しかしながら幼令のものにおいては発育の遅れているもの栄養の不充分なるもの,運動の不足しているものが見受けられました。
経産牛においては僅か7頭の出品でありまして,年令は生後25ヶ月から90ヶ月のもので年令的に相違している上に分娩直後のもの,泌乳中のもの乾涸期のものがありまた産次においても初産より,5産のものであって極めて不揃いでありましたが資質と品位に富み,乳徴においても能力的に優秀なものでありました。しかし繊細過ぎるもの,体型において均整を欠ぐものが見受けられました。
ホルスタイン系のものは7頭でありまして育成中のもの4頭と経産牛の3頭で産地と年令を異にしていて極めて不揃いでありましたが,一,二のものを除き,調教,資質,乳器良く,能力的,経済的優秀なる素質を保有して居りました。
先ず未経産牛18号でありますがこの牛は発育良好,体積品位に富み,飼養管理宜しく,体各部の均称を得,特に乳徴は極めて優秀でありました。しかしながら背線及び後躯においてやや難点を認めました。
次は経産31号でありますがこの牛は輪郭鮮明であって品位に富み,資質極めて良好,乳器においても又優秀でありましたが体積乏しくやや繊細な嫌いがありました。なお,飼養管理において今一段の考慮が望ましいと思います。
次にホルスタイン種系44号でありますがこの牛は体積豊かで体各部の均称を得,乳徴良く特に背線が強力で肢蹄強健長期の飼養に耐える特質を保有して居るものと見受けられますが今後の飼養管理に一層改善の必要を認められます。
六.将来改良すべき点
(一)特に良質の粗飼料の多給を図り体躯の充実と栄養の改善に留意すること。
(二)特に育成中の充分なる運動により筋腱,肢蹄の充実に努め飼養経済年限の延長を図ること。
(三)種牡牛の選定に留意し形質の改善に一段の考慮を払われたい。
審査に当たりましては日本緬羊登録協会の日本コリデール種登録規定により現状を以って審査し特に前回共進会の成績を徴し,体積,品質,毛質,肢蹄に重点をおいて実施いたしました。
出品頭数は邑久9点,小田笠岡5点,苫田津山4点,久米3点真庭,都窪倉敷,吉備総社,上房高梁各1点宛でありまして,尚産地別に見ますと,邑久8点,苫田津山3点,小田笠岡2点,上房高梁,吉備総社,都窪倉敷,真庭,久米各1点と県外7点で計25点で有ります。
尚出品頭数は出品予定頭数に比して相当少なくなったことは伸びつつある本県緬羊の現状から見て遺憾と存じますから,次回この点について特にご留意願いたいと存じます。
今回の共進会に出品されたものは前回の出陳のものに比較して見ますと出品者各位の御努力に依って均称体積の点に於て一段と進歩の跡が認められ,飼養管理の向上と相俟って誠にご同慶に耐えないものがあります。
細部に亘って見ますと資質並びに栄養について概ね良好であり,均称もまた見るべきものがありましたが,中には体躯の伸長を欠ぎ体積不充分で,運動不足により繋の弱いもの,背腰の平直を欠ぎ凹背のもの,又マツ毛の褐色のもの,品位に乏しいものを多数散見しました。特に仔緬羊に於ては今後育成に格段の御注意を要するものを相当見受けました。次に羊毛の点で有りますが,繊度,毛長,概して良好で有りましたが,羊毛の密度の悪いもの「クリンプ」の不明瞭なもの弾力に乏しきもの等が見られました。
次に上位入賞の緬羊について概評を試みますと成緬羊一等一席の13号の緬羊は小田笠岡の出陳のもので,体積に富み毛質も優良であり,均称も良好でありましたが繋がやや弱く僅かに凹背の感がありましたが,総体的に見まして,本日の出陳中最も優良と認めましたので,これを最優位に擬賞いたした次第であります。
次ぎに同じく二等一席の19号の緬羊は小田笠岡より出陳された緬羊でありまして,体質に富み,資質並びに毛質共に良好でありますが,中躯の伸長不充分で後躯の充実をやや欠ぎまた凹背でありましたので前者と比較の結果二等一席に擬賞致しました。
次に仔緬羊一等二席の4号の緬羊は小田笠岡の出陳でありまして,均称宜しく羊毛の分析,弾力等良好でありましたが,僅かに後躯淋しく若干「マツ毛」の褐色を認めましたが,仔緬羊中最も優良と認めましたのでこれを一等二席に擬賞致しました。
次ぎに仔緬羊二等二席の1号の緬羊は邑久の出陳でありまして,均称宜しく毛質共に良好でありましたが,頸から肩の移行やや悪く,若干の「マツ毛」の褐色を認めましたので,前者と比較の結果二等二席に擬賞致しました。
本県の緬羊は従来体積不充分で均称宜しからず資質並びに羊毛についても幾多改良の余地が少なくなかったので,先進地より優良種緬羊を導入し改良の基礎種畜として増殖に努め,緬羊登録事業の普及と相俟って最近著しく向上されましたが,今後益々これらの事業を強力に推進して頂くと共に併せて飼育管理並びに育成技術の向上に格段のご努力を煩わしたいと存じます。又明昭和30年はあたかも羊の年にあたり,かねがね宿望いたしておりました緬羊100万頭計画が達成されますので,記念事業といたしまして緬羊と関係の深い山羊も含めて,第一回全国緬羊,山羊共進会が東京において開催され,本県からも出品を予定いたしていますので,優秀な成績をおさめたいと存じますから,格段のご協力をお願い致します。
審査の実施については日本山羊登録協会の日本ザーネン種登録規定に準拠し,現状をもって審査しましたが,現在本県於て一般に飼養されている種山羊の改良上特に注意をせねばならないと認められます体積,乳器,後躯の発育及び肢蹄等に重点をおいて審査致しました。
出品点数は久米10点,吉備総社9点,苫田津山,都窪倉敷,各4点,英田郡3点,真庭,赤磐郡各2点,上房高梁1点,計35点でありまして,尚産地別に見ますと吉備総社7点,苫田津山4点,都窪倉敷,久米3点,真庭2点,英田1点で県外産は15点で計35点であります。
前回に比較し一般に資質は著しく向上し,大型となった事は驚くべき進歩と認めますが,体躯の緊実を欠ぎ,飼育管理の失誼によって肢蹄の弱いもの,調教の不充分なものを相当散見しましたことは今後一層の研究を要するものと思います。
これを細部に亘って見ますと概して体積に富み,乳用山羊として最も大切な乳房の形質,泌乳能力の優秀な物を多数見受けましたが,特に尻部の傾斜著しく緊実を欠ぎ,臀部の充実不充分なもの,運動不足により肢蹄の弱いもの,被毛皮膚の粗野なもの,並びに耳,乳房,顔面に多少の黒班の有るのを散見致しました。
次ぎに上位入賞の山羊について概評を試みますと,成山羊に於ける一等一席の29号の山羊は久米郡の出陳でもありまして,体積に富み,乳器良く皮膚薄く乾燥しておりまして,21号と共に本回出品山羊中の圧巻で有りますが,運動不足によって繁稍々弱く背線平直を欠ぎ,尻の傾斜度合並びに乳頭の大きさにおいて僅かに欠点が見受けられ,耳に極めて小さな黒斑がありましたが,総合的に見まして本日の出品中最上位と認められましたのでこれを一等一席に擬賞致しました。
次いで二等一席の21号の成山羊は赤磐郡の出陳でありまして体積に富み,胴伸良く特に乳器の発育良好で各部の釣合も宜しく,資質もまた見るべきものがありまして,29号に比較してみるとその優劣の差は極めて僅少ではありますが,護蹄衛生不充分のため繁及び蹄の形質良好でなかったことによって成山羊の二等一席に擬賞致しました。
次に一等二席の7号の仔山羊は総社の出品でありまして品位に富み,均称良好で胴伸びよく乳頭もまた大きく体積に富んでいましたが,若干の褐色刺毛並びに肩の附着がゆるく繁の弱い事を欠点として挙げ得られましたが,総体的に見まして本日の出品仔山羊中最も優秀と認めましたので,一等二席に擬賞致しました。
次に二等二席に受賞しました仔山羊14号は吉備総社の出陳でありまして,7号と共に体積に富み,体躯の伸長宜しく均称乳器並びに資質共に見るべきものがありましたが,稍々「ウルミ」があり,後躯の充実を欠いていましたので7号と比較の結果をこれを二等二席に擬賞しました。
緬羊と同様に今後体積の点についてなお一層これを豊かにして品質の改良を図る為,特にこれらの点を考慮して優良な種畜を導入すると共に,山羊登録事業を強力に推進し,飼育管理の向上を図ることに一段の御協力を煩わしたいと存じます。
今回出陳されました種鶏の審査に当りましては日本養鶏協会で制定された家禽標準に準拠し,特に経済的に有用な性能に重点を置いて,雌雄別に厳密な審査を実施し,一番の優劣を判定する事を審査の方針と致しました。
出品鶏の種類別に見ますと,卵用種しては単冠白色レグホーン種21点,兼用種としては横斑プリマスロック種4点合計25点でありまして,何れも本春孵化されました若鶏であります。
これ等を都市別に見ますと津山市7点,真庭郡5点,井原市4点,玉島市3点,岡山市,高梁市,及び勝田郡は夫々2点宛出品され,全て上地域において生産されたものであります。
出品鶏の内,単冠白色レグホーン種は前回に比較して一般に発育良好で,比較的均称宜しく,資質もまた良好で,種鶏として特に重要視せねばならない胴体において一段の向上を示していることは,出品者におかれて特に繁殖並びに飼養管理に格段の御努力を払われた結果で誠に喜びに堪えないものがあります。
然し乍ら,中には体の堅実を次ぎ活力に乏しく体型においても卵用種としての各部の釣合宜しからず,体量稍々過大なものがありました。
横斑プリマスロック種におきましては,前回同様概して体量に乏しく,卵用種に比し稍々重厚でなければならない胴体の充実不充分であったことは遺憾であります。
細部について検討して見ますと,単冠白色レグホーン種,雄におきましては,一般に体躯の充実,活力の点に見るべきものがありますが,一部には胸骨の湾曲したもの,或は尾羽の折損したもの,胸部充実を欠ぎ均称宜しからざるものを見受けました。しかし前回に比して全般的に申し上げますと,著しく改良の跡を認めたことは,特に強調すべき点と存じます。
雌につきましては概して発育良好,資質また見るべきものがありましたが,体躯の均合宜しからず主翼羽の締り不充分のもの,また体重が標準体重に比して,相当過重なもの等を相当羽数見受けました。
これ等の優劣を総括に前回のものと,比較検討しますと,特に改良向上の進歩の跡を認め得なかったことは遺憾であります。
横斑プリマスロック種におきましては,雌雄共に発育良好でなく,胴体の深さ及び長さにおいてもまた,不充分で且つ,羽装の不整一な点が認められましたが,中には体型資質共に前回出品鶏に見られない優れたものがありました。
一等賞一席に擬賞しました4号鶏は雄については稍々体重重きに過ぎ,胸部稍々充実を欠いでおりますが,資質活力,比較的良好であり,雌においては特に発育,均称良好で,脊腰の伸長及び体幅,腹部の深さ等見るべきものがありましたので雌雄の総合判定におきまして他の出品鶏に比較して最も優位と認めました。
次に一等賞二席に擬賞しました11号鶏は4号鶏に比較しますと,雌に於ては稍々品位,活力,均称の諸点に於て劣って居りますが,雄については体各部の釣合,緊実の点に於て勝って居りましたが,総合判定の結果僅かに4号鶏に劣って居りましたから次位に擬賞しました。
一等賞三席に擬賞しました横斑プリマスロック種25号鶏は,雌雄共に体重の点に於て稍々難色がありましたが,之は就巣性の排除と産卵性の増進に向って繁殖を続ける場合,ともすれば見られ勝ちの欠点とでも言い得るのであります。しかし体型,資質比較的良好で体躯の堅実もまた見るべきものがありましたから11号鶏に次ぎ一等賞三席に擬賞しました。
今回出品された種鶏は前回に比して一般に改良向上の跡は認められますが,単冠白色レグホーン種におきましては特に背の伸長,胸部の充実,腹部の深長,並びに活力,均称の点に於て相当の遜色が認められ,横斑プリマスロック種は発育並びに体型に於て未だ改良の余地が多いので将来上の諸点に充分考慮され,特に種鶏の交配に留意され,経済的性能の優秀な種鶏の作出に一層の努力を願ってやみません。
審査は審査員と共に慎重反覆精査の結果,和牛において一等賞7点,二等賞15点,三等賞28点,四等賞40点,乳牛において一等賞3点,二等賞7点,三等賞14点,四等賞16点,緬羊において一等賞2点,二等賞4点,三等賞8点,四等賞10点,山羊において一等賞2点,二等賞6点,三等賞11点,四等賞16点,種鶏において一等賞3点,二等賞5点,三等賞8点,四等賞9点を選抜擬賞致しました。謹んで褒賞の授与を申請致します。
昭和29年10月9日
第10回岡山県畜産共進会
審査長 惣津律士
(表)一等賞受賞家畜名簿
第1部 黒毛和種々牛 | |||||||||
牡の部 | |||||||||
出品番号 | 種 類 | 名 号 | 生年月日 | 資格 | 血 統 | 産地 | 出 品 人 | ||
父 | 母 | ||||||||
13 | 黒毛和種 | 第四井田 53犢阿338 |
27.8.2 | 高資 | 第六清国 黒78 |
第三いだ 本黒5804 |
阿哲 | 新見市高尾 土井 頼祐 |
|
牝の部 | |||||||||
40 | 黒毛和種 | いけふみ 53犢真812 |
28.1.6 | 登資 | 木 村 本黒2125 |
第二いけだ 黒44605 |
真庭 | 真庭郡八束村 脇田 文吾 |
|
45 | 黒毛和種 | すぎい 52犢阿2198 |
27.12.21 | 登資 | 昭 栄 本黒2143 |
たんすぎ三 黒23320 |
阿哲 | 総社市江崎 守安 完一 |
|
16 | 黒毛和種 | 第三ふじえい 53犢阿343 |
28.4.2 | 高資 | 第十神福 黒1432 |
ふじもと一 本黒1267 |
阿哲 | 吉備郡日近村 明楽 知之 |
|
31 | 黒毛和種 | のうの 53犢勝364 |
28.2.20 | 登資 | 横 山 黒1335 |
第二ひろき 予岡6900 |
勝田 | 勝田郡北和気村 浦上 道正 |
|
11 | 黒毛和種 | 第十五かじや | 28.4.17 | 高資 | 第十神福 黒1432 |
第十一かじや 黒17231 |
阿哲 | 勝田郡豊並村 野林 定市 |
|
52 | 黒毛和種 | いけだ 53犢苫600 |
27.11.3 | 登資 | 第二薫 黒661 |
第二さち 予岡7964 |
苫田 | 苫田郡加茂町 池田 勇 |
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第2部 乳用種々牛 | |||||||||
ホルスタイン種未経産の部 | |||||||||
出品番号 | 種 類 | 性 | 名 号 | 生年月日 | 血 統 | 産 地 | 出 品 人 | ||
父 | 母 | ||||||||
18 | ホルスタイン種 | 牝 | ヘンドリクバートンマタドーアオブチカ 血131734 |
27.12.15 | カーネーションバートン ルンドラット 血30586 |
ヘンクリヴァーオクマタドーア 血72729 |
西大寺 | 西大寺市邑久郷 次田 堅吾 |
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ホルスタイン種経産の部 | |||||||||
31 | ホルスタイン種 | 牝 | オードインカ スプリングバンクポシュ 血123761 |
27.1.9 | スプリングバンクサーファーロックデーリー 血29270 |
オード ポシュカナリー ロング 血77507 高8335 |
笠岡 | 笠岡市富岡 坂本 晃章 |
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ホルスタイン系種の部 | |||||||||
44 | ホルスタイン系種 | 牝 | オカスリーピースコルンダイク (基礎申請中) |
21.3.11 | アーギーデイリーアーチス コルンダイク | 第二ピース | 北海道 | 津山市紫保井 清水 正秋 |
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第3部 種 緬 羊 | |||||||||
出品番号 | 種 類 | 性 | 名 号 | 生年月日 | 血 統 | 産 地 | 出 品 人 | ||
父 | 母 | ||||||||
13 | 日本コリデール種 | 牡 | オーロラ 本10548 |
28.5.15 | 本 180 | 予ホク2661 | 北海道 | 笠岡市吉田 石田 英夫 |
|
4 | 日本コリデール種 | 牝 | しげまさ 仔ヤカ29−449 |
29.3.27 | 山形県 | 笠岡市吉田 重見 政男 |
第4部 種 山 羊 | ||||||||
出品番号 | 種 類 | 性 | 名 号 | 生年月日 | 血 統 | 産 地 | 出 品 人 | |
父 | 母 | |||||||
29 | 日本ザーネン種 | 牝 | あかぎ 8B60 |
28.3.22 | 伊利加 本H 214 |
しらゆき B 371 |
群馬県 | 久米郡加美町 横部 順市 |
7 | 日本ザーネン種 | 牝 | たかやま 三 9K 100 |
29.4.2 | バレー 三NS533 |
総社 | 総社市常盤 高山 勲 |
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第5部 種 鶏 | ||||||||
出品番号 | 種 類 | 性 | 名 号 | 生年月日 | 血 統 | 産 地 | 出 品 人 | |
父 | 母 | |||||||
4 | 単冠白色 レグホーン種 |
雄 | B−929 | 29.4.13 | 高梁 | 高梁市松山 高梁畜産農業協同組合連合会 |
||
雌 | F−360 | |||||||
11 | 単冠白色 | 雄 | C−230 | 29.4.2 | 津山 | 津山市草加部 須江 定美 |
||
レグホーン種 | 雌 | C− 65 | ||||||
25 | 横斑プリマスロック種 | 雄 | 4−299 | 29.3.28 | 岡山 | 岡山市平井 入江 唯夫 |
||
雌 | 4−300 | |||||||
団 体 優 勝 | ||||||||
黒毛和種々牛 優 勝 第10回岡山県畜産共進会優勝旗1旒 苫田畜産農業協同組合連合会 | ||||||||
乳用種々牛 優 勝 第10回岡山県畜産共進会優勝旗1旒 北部酪農業協同組合 | ||||||||
種 緬 羊 優 勝 第10回岡山県畜産共進会優勝旗1旒 小田郡畜産販売農業協同組合連合会 | ||||||||
種 山 羊 優 勝 第10回岡山県畜産共進会優勝旗1旒 吉備畜産販売農業協同組合連合会 | ||||||||
優 勝 岡山県畜産農業協同組合連合会優勝旗1旒 苫田畜産農業協同組合連合会 | ||||||||
優 勝 岡山県酪農協会優勝旗1旒 北部酪農業協同組合 |
岩手県経済連 盛岡市呉服町
宮城県経済連 仙台市北一番町
栃木県経済連 宇都宮市塙田町
群馬県経済連 前橋市曲輪町
栃木県開拓連 宇都宮市塙田町
千葉県畜連 千葉市本千葉町
福井県販連 福井市大手町
佐賀県経済連 佐賀市赤松町
香川県家畜商協会 高松市北浜町
清水松太郎 群馬県甘楽郡富岡町
伊藤 勉 高崎市芝塚町
佐保守登 前橋市榎町
熊井戸 群馬県甘楽郡小幡町
(全国畜産株式会社)
八幡善太郎 東京都芝区高浜町
佐々木徳太郎 大阪府泉北郡南池田村
西田良太郎 大阪府泉南郡南中通村
町谷留松 大阪府泉佐野市南中通
伊藤梅太郎 愛媛県宇麻郡川之江町
石川金吾 愛媛県宇麻郡川滝町
合田国治 愛媛県伊予郡郡中町
宮田新一郎 愛媛県宇麻郡
豊田芳一 徳島県海部郡河内村
本日茲に第10回県畜産共進会の審査を終了し,褒賞授与の式典を挙行するに当り,一言御挨拶申上げる事は私の最も喜びとする所であります。今回の共進会は関係者各位の強い御要請によりまして県主催として開催することになりましたところ,当津山市に於かれましては種々困難となる事情をもかえりみず,快く御引受け下さいますと共に苫田畜連,其他関係諸団体に於かれましては終始絶大なる御支援を賜り,さらに出品者に於かれましては本年に再三に亘る風水害其他天候異変にも拘わらず,異常なる御熱意を以って飼育せられた愛畜を御出陳下さいまして,本共進会に一段の光彩を添えられました事はただただ感謝の外なく,ここにつつしんで謝意と敬意を表する次第であります。御承知の通り農業経営の改善はもとより国民生活の向上に対して,畜産の重要性は日と共に増大してまいりました関係上,国はもとより県に於ても畜産の振興を重要施策として実施してまいっておりまして,各位の御協力に依り着々所期の成果を収め,私のかねてからの念願しております所の科学に立脚した楽しい豊かな農村の建設に貢献しております事は誠に御同慶に堪えないところであります。畜産振興対策につきましては種々の思索が講ぜられておりますが,就中家畜の改良増殖はその根幹をなすものであることは今更申上げるべきもありません。
凡そ健実にして科学性にも富み而も将来性のある農業経営をいとなむ上に於ては,その立地条件其他経営規模に適合した家畜を選択すると共に高度に改良せられた能力の高い家畜を導入飼育することが何より大切であります。
畜産共進会に洋の東西を問わず年と共に盛況を加えて参っており,本県に於きましても,会を重ねるにつれて,畜産に対する正しい認識の向上はもとより,家畜改良の一段の進歩をもたらしている効果はきわめて顕著なものがありまして,ここに本共進会のもつ意義の重大さを覚ゆるのであります。
各位は現下畜産のもつ重要性を再認識せられると共に畜産農民たるの誇りを堅持せられ,健実なる畜産の進展に一段の御精進あらん事を心から念願する次第であります。
茲に一言蕪辞をのべて御挨拶と致します。
昭和29年10月9日
第10回岡山県畜産共進会々長
岡山県知事 三木行治
岡山県主催第10回岡山県畜産共進会審査終了を告げ,茲に褒賞授与の式典を挙行せらるるに当り後援団体を代表し一言御挨拶を申上げます。
惟いますに現下畜産は農業経営の改善農家経済の確立の上にきわめて重要な部門でありまして近時畜産は著しく進歩向上しました事は産業振興上慶祝に堪えません。
然し国民生活の改善或は海外貿易にてらし之を国内自給に想をいたしますとき未だその足らざる点を痛感いたします。いまや畜産拡充の国策遂行を見,畜産振興を高唱せらるる秋本共進会を開催せられ県下家畜の粋を蒐めその優劣を比較検討する機会を得ましたことは,今後の本県畜産発展のため大きな成功であり御同慶に堪えない次第であります。
どうか関係者皆さんは今回の成績を,よく検討せられまして今後益々斯業に精進し以って本日の名誉を一層光輝あらしめられます様御健闘をお祈りして止まないものであります。
終わりに本会開催を津山市に決定されましたのでご後援申上げましたが会場も先般12−15号台風が案外甚大でありました為復旧設備万般寔に不行届でありまして県並びに出品者各位に深く陳謝の意を表するものであります。
以上簡単乍ら蕪辞を述べ御挨拶といたします。
昭和29年10月9日
第10回岡山県畜産共進会
後援会長 中塚智雄
本日ここに第10回岡山県畜産共進会褒賞授与が行われるに当り臨席の栄を得て関係者皆様に御挨拶を申上げますことは私の最も欣快とするところで御座います。
特に今回は西日本で唯一の農林省より指定を受けた集約酪農地区と共に和牛の中心である当地に於て本共進会が催されたことは意義ひとしお深いものがあります。酪農が農村振興に偉大なる効果を及ぼすことは私の今更申し上げる迄もないところであります。限られた耕地の中で人口は年々増加して行く農村にあっては昔ながらの農業経営を行っていたのでは到底社会生活に伍して行けない状態であります。
この時にあたり畜産関係団体の方々や指導者の皆様はいち早く農村に家畜を取り入れることを指導され,えいえい御努力下さいました結果逐次本県の畜産は長足の進歩を来したのでありまして,この間の御努力が如何に大きかったかは直接に指導をお受けになった方々は勿論ですが,私達もよく承知いたしただただ心から感謝を申し上げるもので御座います。これらの方々の御努力と飼育者各位の御努力によって本県の畜産共進会は回を重ねる毎に益々隆盛におもむき家畜の増殖も日と共に盛んになっていることは本県経済のためにも喜ばしい限りで御座います。又本日優秀なる成績をもって受賞せられました各位並びに出品者の皆様に対しては平素からの御努力に対し衷心より敬意を表するものであります。
終りにのぞみ本共進会開催に当り終始懸命の御努力を下さいました苫田畜連,北部酪農協,津山市御当局を始め関係者皆様に対し謹んで敬意と感謝の誠を捧げるものであります。
一言所懐を申し上げて祝辞といたします。
昭和29年10月9日
岡山県議会議長 友保 知
本日茲に第10回岡山県畜産共進会褒賞授与が行わせらるるにあたり御挨拶を申上げる機会を頂きましたことを,私の最も欣快とするところであります。
既に皆様もご存知のように終戦後有史以来の農地改革の強行に依り耕作農民の安定は期せられたるも,なおなお不安におちいり,戦前のように米麦1本の農家経営では,到底社会生活に悟して行く事のできない事態に立ち至ったのであります。ここに於て,県当局はもとより農家の皆様におかれては,いち早く家畜を取り入れた,所謂多角的農業経営に着目せられ,孜々として此方面に努力致されました結果,本県の畜産は近時長足の進歩を見るに至りました。さきに津山市を中心とする高度集約酪農地区への指定もその一端がうかがわれ,当地方民として洵によろこばしい限りであります。
かくして当津山市に於てかかる盛大なる本県主催の共進会を御ひらきになり全国的に優秀なる家畜の壮容に接し私共畜産にたずさわる農民として感奮興起せざるを得ません。と同時によりよく優良家畜の増殖への,力の源泉と致しまして,愈々農家経済の立て直しに一層の努力を払い国民生活の安定に役立てるよう皆様と共に,その覚悟を新たにすべき情勢に赴き,御互に歓喜にたえない処であります。
次に本日優秀なる成績を収め受賞せられました皆様に対しましては更めて深甚なる敬意をささげ心から御歓びを申上げます。希くは,此栄与に一段の光彩をそえられますよう今後の御精励を念願致して止みません。爰に所懐の一端を述べ御祝の言葉とする次第であります。
昭和29年10月9日
岡山県北部酪農業共同組合
組合長 岸本 昌
今回の共進会褒賞授与式に於いて受賞者を代表して御礼申上げる事は私の非常に光栄とする所であります。畜産の重要な事は先程皆様がお話された通りでありまして,日頃我々は,其の実務にたずさわって居ります事は大きな誇りと存ずる次第であります。此の栄与を機会に一層精進致しまして皆様の御期待に添うべく努力致す覚悟でありますので一段の御指導御鞭撻をお願い致しまして御礼の言葉と致します。
昭和29年10月9日
受賞者代表
真庭郡八束村代表 脇田文吾