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岡山種畜場講座

副業養鶏
鶏の飼養

川崎技師

一.鶏の消化器と消化作用

 家畜の消化器は夫々異なった構造をもって居り,与える飼料も異なり,之に伴って夫々異なった消化作用により飼料は消化されて居ります。
 鶏を使用して行く上に於て飼養標準,飼料の給与応報は必要な事でありますが,之を習得する前に鶏の消化器の構造を知り,又鶏に与えた飼料が消化器に依り如何にして消化されるかに就いて知って置く事が大切であります。
 鶏の消化器の図示しますと,鶏を解剖して其の儘腹部の側より見た状態は「第1図」の通りであり,此の消化器のみを分離して分り易く散開した状態は「第2図」の通りであります。
 次に飼料の消化について説明致します。消化器とは飼料が口から入って総排泄腔より糞として排泄される迄に通過する部分を言い,消化作用は此の管と之に附属して居る消化液を分泌する消化等に依って行われます。此の消化作用について順を追って記してみます。

 一.口腔消化

 他の動物に於ては歯があって飼料を咀嚼して口腔消化を行うが鶏に於ては唇,歯が無く嘴があって之に依って飼料を喙んで口に入れるだけであります。
 水を飲む場合も鶏は頬,舌の作用が完全でなく上を向いて居る唾腺は下嘴,口角,舌,口蓋,口底により唾液を分泌します。
 哺乳動物に於ては唾液の中澱粉糖化作用を有する酵素を有して居って澱粉質の糖化を営みますが鶏に於ては単純な粘液であって食物の燕下を容易にするのみであります。唾液の分泌は舌の運動により反射的に行われ,又飼料の乾湿の程度によって分量に差を生じます。飼料の燕下は舌,咽頭,喉頭,食道等の共同運動によって行われるものであり,食道は蠕動運動に依って行われるものであって食道は蠕動運動を起して食塊を下送します。

 二.胃消化

 鶏の胃は嗉嚢,腺胃,筋胃,の3部から成って居り,嗉嚢は食道の下部に在る拡張部であってその粘膜は消化液を分泌せず嗉嚢の中に溜った飼料は消化液による消化はされず,此の部で保留され,軟化及び膨化され或程度乳酸醗酵を起す程度であって,次いで嗉嚢壁の蠕動運動に依って徐々に運ばれます。
 練餌の場合添加水分が固形分に2倍以上となる時は嗉嚢より腺胃に運ばれる速度が早くなり消化不良となり,固形分と水分が等量の場合が最も消化が良いと言われます。
 腺胃は胃液腺を有して居り塩酸,消化酵素が分泌され,飼料は腺胃通過時に此の消化液と混じて筋胃に送り込まれます。腺胃の消化液は蛋白質を分解します。
 筋胃は厚い筋壁と角質膜で出来て居り筋胃内の飼料は強力な筋壁の収縮運動に依って角質膜内で小石粒と共に磨砕されます。筋胃の収縮運動は飼料の硬軟により若干差はあるが,平均20-30秒毎に1回行われると言われます。筋胃内の小石粒は鶏が摂取したものでありますが之を与えると否とにより消化率に著しく差を生ずるものであって,普通3-10g(40-90箇)の小石粒を含有して居り,Kath氏に依ると外科手術に依り胃の小石粒を除去した鶏の体重を増減なく維持するに要する飼料(維持飼料)として日量小麦を57g要する鶏に於て小石粒を添加して給与すると日量35gで充分と言われて居ります。此の様に小石粒は鶏にとっては絶対欠くべからざるものであります。

 三.腸消化

 十二指腸では膵臓,肝臓から夫々膵液胆汁の分泌を受け,膵液は酵素(トリプシン,膵アミラーゼ,膵リパーゼ)及び炭酸曹達であって,蛋白質を分解し,炭水化物,澱粉を糖化し,脂肪も分解されます。又炭酸曹達は腸液胆汁と共に胃液の塩酸を中和します。胆汁は脂肪の乳化を助け,腸内容物の防腐作用をします。
 又腸よりは腸液が分泌されて澱粉,蔗糖,蛋白質糖を分解します。
 小腸から大腸に移行する盲腸があります。鶏の糞は腸糞と盲腸糞との2種類に分類されて,不消化の繊維を含み時に砂小石粒を混じた暗黒色乃至暗灰色の糞を腸糞と言い,濃褐色で消化された悪臭のある泥状の糞を盲腸糞と言われ排泄量は10対1の割で排泄されると言われます。