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家畜に対しても,また作物についても最近微量成分の問題が大きく取上げられている。特に反芻家畜に於ては「コバルト」「鉄」が鶏に対しては「マンガン」等が研究の主な対照となっている。今般当場に於て本県玉島市所在の内海工業株式会社の御好意に依って,各種微量成分が相当含有されている同社製品「ミッチー」の提供を受けて種鶏に対する給与試験を当場川崎,光本,高橋三君によって実施して頂いた。
今回其の成績を取り纒めたから概要を御報告する。
本試験に於ての供試鶏は当場種鶏単冠白色レグホーン種雄8羽,雌73羽(2年鶏以上)を用い,都合に依って試験区には雄4羽,雌43羽を,対照区としては雄4羽,雌30羽を用いた。試験期間は昭和29年7月28日より8月26日迄とした。なお供試剤は海水中に圧倒的に多い食塩とマグネシウムを化学処理に依って可及的に除外したもので,これが定量分析の結果は次の通りである。
成 分 | 含 有 率 |
% | |
水分 | 82 |
塩化カルシューム | 11 |
塩化イリリューム | 3 |
塩化マグネシュームイ | 1.7 |
塩化カリ | 2 |
其の他微量成分 | 0.3 |
備考 其の他微量成分中にはマンガン,鉄,
硫黄,ブローム,バリューム,錫,鉛
等である。
試験区飼料には供試剤を1日1羽当0,39㏄宛添加した。各区に於ける給与飼料は日本配合飼料株式会社製造の成鶏1号を使用した。本試験で調査及び測定した事項は次の通りである。
(イ)産卵率
試験前1ヶ月間,試験期間中1ヶ月間ならびに試験終了後10日間の三期の平均産卵率を調査比較した。
(ロ)卵量
産卵率の調査比較と同様三期の卵重量を調査した
(ハ)体重
体重は7月6日より9月4日まで10日目毎に秤量した。最初の3回の測定数値の平均を試験開始前体重とし,次の3回の平均数値を試験期間中体重とし,最後の9月4日の数値を試験終了後体重として比較した。
(イ)産卵率
期 別 | 試験開始前 1ヵ月間 平均産卵率 |
同左指数 | 試験期間 1ヵ月間 平均産卵率 |
同左指数 | 試験終了後 10 日 間 平均産卵率 |
同左指数 |
区 別 | ||||||
% | % | % | % | % | % | |
試験区 | 73.2 | 102 | 72.4 | 114.2 | 67.6 | 115.1 |
対照区 | 71.8 | 100 | 63.4 | 100 | 58.8 | 100 |
産卵率は一般に本試験期間に於ては低減するものであるから,本試験の産卵率の変化に対する目標は両区の低減率の差を比較することにある。
(ロ)卵量(平均一箇当卵重量)
期 別 | 試験開始前 | 同左指数 | 試験期間中 | 同左指数 | 試験終了時 | 同左指数 |
区 別 | ||||||
g | % | g | % | g | % | |
試験区 | 54.2 | 101.3 | 54.4 | 102.3 | 53.8 | 96.3 |
対照区 | 53.4 | 100 | 53.2 | 100 | 54.8 | 100 |
卵重量は試験区に於ては試験期間中は試験開始前に比較して0.2g増加したが,終了後に比較すると0.6g減少して居り特に著しい変化はみられない。
(ハ)体重
期 別 | 試験開始前 体 重 |
同左指数 | 試験期間中 体 重 |
同左指数 | 試験終了後 体 重 |
同左指数 |
区 別 | ||||||
㎏ | % | ㎏ | % | ㎏ | % | |
試験区 | 1.787 | 103 | 1.848 | 108.4 | 1.746 | 106.7 |
対照区 | 1.735 | 100 | 1.72 | 100 | 1.637 | 100 |
対照区は次第に体重では減少しているに反して試験区は試験期間中体重は若干ながら増加している。なお終了後平均体重を見ると試験開始前平均体重に比較すると,実量41g減少しているが,対照区に比するとその減少率は相当少い。
当場2年鶏以上の種鶏を供用して,微量成分を相当含有されている海水濃縮物である「ミッチー」の産卵率並びに卵量,保健に対する効果を試験したが,試験鶏は種鶏として繁殖上の関係上系統別に収容している8室の種鶏を3室宛に試験区と対照区に区別した為に両区間に於て,供試羽数が一定せず且つ其の産卵能力を若干差異のあることは避け得られなかった。なお試験期間が,この種の試験としては,その期間が非常に短期間過ぎたこと等で,本試験の成績から「ミッチー」の効果を直に結論づけられないことは当然であるが,
(イ)産卵率は前述の通り,本試験期が一般に産卵率の低下する時期であって,これが上昇を望むことは出来ないとしても,試験区は対照区に比較して産卵率の低下が著しく低かったことは,本剤の給与に依る効果と一部認められる。
(ロ)卵量については,ある程度産卵率の変化と関連があるものであるが,本試験期間が短期間であった関係もあって著しい変化は認められなかった。
(ハ)体重の変化によって本剤の保健に及ぼす効果を推知すると,試験区は本剤を給与している期間の平均体重は試験前平均体重より若干増加していることと,対照区の各期に於ける平均体重と比較すると,何れも良好なる結果を得ていることから判断すると,本剤は種鶏の保健衛生上若干の効果があるものと推察し得る。
本号が御手許に届くときは既に昭和29年度の本事業が開始され,皆様方の御苦心による検定依頼鶏は,冷涼な秋気を胸一杯にはらませ,黄金色の秋陽を浴びて,元気よく羽ばたいていることと思います。
さて昭和28年度の産卵能力検定も,350日検定は10月16日で,365日検定は10月31日で夫々終了いたしましたが,過去11ヶ月を顧ますと検定開始以来,今年こそは是が非でも御期待に副いたいと,張り切って飼養管理に,或は環境設備に出来る限り改善してきた次第ですが,未だその努力足らずと言う訳で依頼者各位の御期待している成果を挙げ得なかったことを深く御詫び申上げます。
ともあれ各位の御協力と御鞭達によって大過なく,最後のコースを走ることが出来ましたことを,御礼申上げます。次に恒例による平均25卵以上の産卵鶏は下表の通りであります。