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岡山種畜場講座

2月の飼養管理と飼料作物の栽培

乳牛

 この月の乳牛の飼料管理は前月同様に寒気に注意する必要があるが,誤った愛畜心から厩舎に長時日蟄居せしめることにより,牛体の寒気に対する抵抗力の弱め繊弱に陥る弊害があるため,暖かい日には努めて日光浴,手入,運動を施すべきで,特に発育中仔牛には一層この必要が認められる。又蹄も過長し易く蹄又腐瀾等の蹄病が発生する傾向があるので注意を要する。分娩間近な妊牛も努めて運動を励行しないと間々難産の原因となることがある。又この時期には虱の寄生する時期であり平素から毛櫛により充分手入れを行い,発生した場合にはB,H,Cを1,2回散布することにより容易に撲滅出来るものであるが皮膚の薄い乳房部附近に直接散布すると時に皮膚炎を起す場合があり注意を要する。牛舎内の温度は乳牛の栄養学士の臨界温度は摂氏15度であるから,これ以下の温度の環境下では,体温維持のための熱源分解が盛んとなるから,飼料の給与量の数値は或程度余裕を見る必要があるが,最寒期に摂氏4度乃至5度以下に下る様な場合は当然飼養標準並の維持要求量は不足を来すため,低温の度に応じて維持用養分総量を2-3割程度多く見積って飼料給与を行わなくてはならない。この月に入ると次第に粗飼料が不足し勝ちとなるが,濃厚飼料多給による変則的な飼い方は乳牛の健康上からも,能力の点からしても経済的面から見ても有利でないので,平素から冬期に備えて充分に粗飼料の取得に一段と考慮の必要がある。
 粗資料特に乾牧草,藁稈類等の給与量は体重100㎏に対し2%量即ち2㎏と見做せば良い。なお青刈飼料及びエンシレージ類の乾物量は大凡乾草類の4分の1,根菜類は5分の1乃至7分の1であるから,青刈類,エンシレージ等を与える場合には体重100㎏について以上の4倍即ち8㎏,根菜類の場合は5倍乃至7倍であるから10㎏乃至14㎏給与するのが大体の基準である。

養鶏

 暦を開いて見ると2月4日は立春となって居ります。しかし春とは名のみで実はまだまだ寒い日が続き外気温は岡山地方では平均2.9度で,最低は零下に下り気は許せません。しかし,中旬を過ぎると春を思わせる日があり三寒四温に近づいて来ます。此の寒暖の波があり,又昼夜の寒暖の差が激しい時は温度の感作を鋭敏に感じ易い鶏に対しては管理者が十分気を配ってやり,感冒,ループ等にかからぬ様に予防する事が大切であります。若し病気に犯された時は早期発見,早期治療を行い一日も早く恢復さす事が必要であります。
 鶏の飲水については夏は非常にやかましく言われ,冬はややもすると忽にされ勝でありますが,水は消化吸収,循環,排泄等の各生理作用を営む上に絶対必要なものであり空気に次いで重要性を有するものであります。朝なるべく早く,出来れば汲み立ての暖い井戸水を与えて,それを美味しく飲む愛鶏を見て鶏と共にすがすがしい気分を味うのも養鶏家の一日の始業に当っての1つの楽しみではありますまいか,兎に角新鮮な水を十分飲ましてやりましょう。
 2月は3,4月の盛産卵期を目前にして産卵率も日増しに向上して行く時であります。此の時期に飼養を誤る事は3,4月の産卵に著しく影響しますから羽数を点検し,飼料の計算を一応行い,飼料を過不足無く給与する事は大切な事であります。飼料は良質のものを与える様にし,醗酵,変質したものは避ける様に注意しましょう。魚粉は含有蛋白質量は品質に依って非常に差があり,良質のものは60%含有するものもあれば悪質のものは30%以下のものもありますから,値段の安いことに迷わされず,少々高くとも良質の蛋白質含有量の高いものを与える事が結論的に経済的であります。

養豚

 ここ1年を振りかえって見ると朝鮮休戦会談がうまくまとまり戦争は一段落となって新春を迎え,29年こそ良い年であれかしと誰しもが思っていたのですがソ連水爆の出現,思い出しても心を暗くするビキニで行われた水爆実験は世界の人の耳目を驚かしました。音もなく落ちてくる死の灰となって日本は水爆下におかれたわけです。9月には天災か人災か12号台風に続いて襲った15号台風は,世界第二の海難洞爺丸の悲劇となって一夜にして千数百人かの命を海底深く呑んでしまいました。数えあげれば大中事件は数限りなくあってなんと見ても幸いの年とはいえませんでした。畜産界では酪農振興のすべり出しよろしく乳牛の値段は上昇線を辿り又卵価も良かったのですがデフレ政策は9月頃から飼料の価格は強調となったのに反し乳,卵は下向となって現われてきました。従って酪農経営にも一抹の不安をさえ覚えさしています。和牛も昨年に較べると弱値の横這い状態です。豚は需要が増したのに適令豚の品薄で本年は堅調街道をまっしぐらに驀進しています。しかしえさがこう高くては豚も「ブウブウ」いいます。最近は農家の飼養熱も騰っているのでこの景気もいつまでも続くものと思ってはなりません。飼料高については政府が何とか手をうたねばならないし,経営者として自給飼料を考え飼料費を安く上げてゆかねばなりません。
 豚を飼っている方は特に本年のように豚の値のよい時には自然に力がはいり,面倒もよく見るものです。これは人情でしょうが一転して条件が悪くなりますと放任勝ちなるものです。飼養管理はこういった差別をつけずに飼ねばなりません。
 2月の月は1年中最も寒さの厳しい日が続きます。太陽光線も弱く,日照時間も短い時分ですから特に衛生に気をつけねばなりません。豚が健康であってこそ本当の能力を充分発揮できるものです。「治療より先ず予防」に留意いたしましょう。
 はらみの豚 は寒さが厳しいのに腹の仔が大きくなっていますのでえさも大豆粕,脱脂乳のような蛋白質飼料に大麦,米糠,麩の類の養分の多いものをやるように心がけましょう。分娩近いものは敷藁を充分入れ寒くないよう隙間風の入らぬよう設備を完全にした室に移し又分娩枠もこしらえねばなりません。本月も青物が不足勝ですから蕪菁とか青刈燕麦を利用し,えさ畠のない方は大根葉の陰干したものを与えることにいたしましょう。なお妊豚にはカルシュームの不足しないように考えてやらねばなりません。
 肥育豚は寒さのため体温の消耗が多いのですから防寒をよくし温い食事をとらし体力を充分養ってやり又運動も適当に制限して室も肥育するように幾分暗くして外からの感作を少くしてやります。敷寝も充分に入れて汚れないよう入れかえをして絶えず健康に気をつけて肥やさなければなりません。
 飼料が高値の時ですからなお更自給飼料を多く利用することに努め冬作の手入を怠らずやっとかねばなりません。中耕によって土を軟かくし根に空気を入れて根張をよくし,耐寒性を増さねばなりません。肥料は家畜の尿,下肥をかけてやるとか硫安等を施するもよいでしょう。
 本月の衛生について厳寒のため胃腸炎に罹り易い時ですから凍りついた根菜類を与えたり糞尿で汚れた中に寝起きさせないで下さい。育成中の仔豚は気管支カタールに侵されますので室内を温かくし消化のし易い,しかも仔豚の喜んで食べるえさをやることです。

飼料作物栽培

 2月といえば本県では,1年を通じて日照時間は一番短く,気温も,降水量も最低となります。従って私達のホープである青刈燕麦も寒い北風に吹きさらされ,その葉先を裂かれて,いたいたしい姿を見せますが,春の訪れと共に一斉に伸びきらんとしてその準備を営々として,地中で営んでいることでしょう。
 私達はこの準備を助けて行く為に,本月は中耕除草,追肥を行わねばなりません。同時にこれが間作として栽培予定の青刈玉蜀黍のことを考えますれば,この作業は益々肝要な仕事となります。
 次に次号の飼料作物講座で記述しています燕麦の春播栽培を実行される方は2月上旬,畑からすっかりその姿をなくした蕪菁の跡地に,適当量の石灰を散布し,丁寧に全面を耕起して,充分に基肥を施して播種して下さい。青刈玉蜀黍を間作として栽培を計画している方は厩堆肥は玉蜀黍の分を併わせて鋤込んで頂ければ,繁雑な玉蜀黍の間作播種準備が省力されてきます。最後にまだまだあわてる必要もありませんが,青刈玉蜀黍の種子は本年もまた仲々入手が困難と思いますから,4月播種の予定を持っている方は,ぼつぼつこれが確保に手を打って下さい。昨年当場でも,この種子が充分入手出来なかったから,高価すぎる一代交配種を購入して播種しました,その結果は当然なことと思いますが,決してデント・コーンに勝る様なことは有りませんから,御留意してデント・コーンを入手して下さい。尚予ねてから御願いしていまして青刈燕麦の刈取りにあたっては(勿論2-3回刈の場合)成長点を残す様に刈取って下さることを時節柄特に御注意申上げます。