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巻頭言

畜産物の流通対策を強化せよ

惣津律士

 年と共に家畜の飼育が普及し,その資質も改良せられ,更に伝染病の予防も実を結びつつあるし,良質の自給飼料の確保に対する農家の関心も高まって畜産が漸次健実な歩を進めるに到った事は慶祝に堪えない。
 而し乍ら畜産物の流通部面に於ては強力なる施策が講じられていないため,その価格の変動が著るしく,有畜農家に取っては時に限りない不安の念をいだかしめ,農村振興の基幹である畜産にややもすると暗影を投ずる懸念があるのは遺憾である。
 昨年酪農振興法が制定せられて健全な酪農の滲透に依る明るい農山村の建設が行われんとしている時に,酪農製品の大量のストックに依って酪農工場も悲鳴をあげている現状を見るとき,まざまざと流通対策の欠除に対しいらだたしさを痛感するのである。
 29年の生産量が前年に比べて4割増加したのに消費量は2割しか延びていないための現象であるようだが,全国飼育頭数が僅かに30数万頭程度の乳牛でふらふらするような有様は実になさけない限りであって将来が案じられるのである。
 県はさきに中央当局に対して乳製品の輸入禁止,国内生産乳製品の買上と学校其他大口需要に対する供給方法の改善,更に低廉にして豊富なる濃厚飼料の供給を強力に要請した。これ等はおよそ政府に於て実施せられなければならない事項であり而も緊急を要する問題である。この4月までをどう乗り切るかに懸っているとき,政治の空白状態が見られる事はなさけない。私は酪振法がこれ等の事項の実施に依って一段と成長し得るものと確信している。
 どうして消費者価格が下がらないのか。どうして大衆消費を対象としての価格にならないか,業者に於てもこの際大いに反省研讃して戴きたいのである。畜産物の消費宣伝に依る普及は実に結構である。而し乍ら中間マージンのあまりにも多い乳であり肉であっては大変である。私はあえて社会主義の政策を強く打ち出せとは言わないが,生産者である農民,処理加工業者,政府がお互いに協力して国内に於ける畜産資源の培養に依る国力の充実に今こそ真剣に努力して戴き度いものと切に念願している。ここから除々ではあるが,解決の糸がたぐられるのではなかろうか。デフレ経済下に於てその必要を特に感じ,力強く再生産の方向に進みたいものである。