第５回岡山県肉牛共進会は昭和29年畜産行事の棹尾を飾るにふさわしく，県主催のもとに12月20日，21日の両日に亘り岡山市巖井の家畜市場で盛大に開催された。
　出品牛については別記審査報告に詳細に説明されているが，特に昨年に比し牝牛が半数に減少したのに対し，去勢牛は昨年の13頭が20頭と，出品頭数の半数に増加したことは去勢牛肥育に対する，かん心が年と共に高まっていることを示すものとして特に注目された。
　なお牝牛の成績は昨年より劣っているように認められ，之に反し去勢牛は体型，資質とも可成りよく揃い，肥育程度も非常によくなっていたことは，興味あることで技術的な面だけでなく肥育経済上の点が年と共に強く反影していることを物語っている。
　審査にあたっては農林省中国農業試験場畜産部土屋技官を特別審査員として来県を願い畜産課，農業改良課，県畜連，和牛登録協会支部関係者が出席のもとに実施された。
　昨年も例年の暖冬で20日，21日の両日は春さきを思わせるような暖かさ，共進会日和とはいえ，肉牛の売行きには最も心配な天気具合であったのに，21日午後のせり売りは関係者の心配も完全に吹き飛んだ形，非常な好況で取引され，出品者最良の日となった。
　出品者のうち岡山屠場で屠殺された数頭のものの成績は，出品牛の測定成績を併せ参考までに別表に収録した。

比較審査風景

審査報告

　今回の出品は黒毛和種，牝21頭，去勢牛20頭計41頭でありまして，全部本県産であります。
　出品を郡別にみますと岡山17，倉敷11，児島，都窪，御津各３，和気，赤磐各２となっています。
　前回の出品に比して，今回は牝牛が半分にへったのに対して，去勢牛が昨年の13頭に比して20頭もの出品をみましたことは，去勢牛の肥育に対して大いに関心が払われているものと考え，深く敬意を表する次第であります。
　審査は，昭和27年中国和牛協会で研究の上，決定し農林省がその適用を奨励しています肉牛審査標準によって牝牛と，去勢牛との２部に分けて行いました。なお去勢牛については本年２月中国農業試験場畜産部で開催された，第１回，去勢牛肥育研究会において決定をみました，体重125貫−160貫の標準に準拠しました。
　出品を総覧しますと，
　先ず牝牛におきましては，角，皮膚，被毛，骨緊り等資質のよいものが多く，殊に骨緊りが昨年よりも一段とよくなっております。即ち前回は出品の約半数が管囲17�p以上でしたが，今回は17�pをこえるものが僅かに３頭だけでありました。しかしその反面におきまして肥育程度が昨年よりも劣っており140�pに満たないものが出品の４割を占めていました。又背腰，後躯の充実に難のあるものがありました。これらの点につきましては，今後特に留意されると共に少くとも140貫程度にまで肥育されることが望ましいと思います。
　肉牛審査標準に示されている牝牛の大きさは体高125−130�p，体重140−170貫ですが，今回の牝牛の平均は体高においては，127.１�pで標準の中間値を示しているに拘らず，体重においては平均140.4貫で標準の最低値に過ぎません。如何に肥育不充分かが窺われます。
　次に去勢牛について申しますと昨年始めて試みられたにも拘らず今回の出品が体型資質において可成，良く揃っていました。なお肥育程度も前回に比し一段と向上していましたことは，今後当地方去勢牛の肥育発達上非常に喜ぶべきことでありまして，出品者各位の御努力と指導者の適切な指導によるものと考え深く敬意を表する次第であります。
　しかし，その反面後躯の形状が悪く殊に下腿の充実を欠ぐもの，背線の悪いもの，胸ばりに乏しいものなどが散見されました。
　これらの点については今後充分の御留意を願いたいと存じます。去勢牛の肥育は漸く緒についたばかりでありますが，今後一層この方面に御研究を願いまして栄養価にとみ低廉美味な肉を国民大衆に提供するように御努力下さいます様希望する次第であります。
　以上審査の結果牝牛の部において一等賞１点，2等賞５点，3等９点，去勢牛の部におきまして１等賞２点，２等賞４点，３等賞９点を擬賞しました。

１等１席　メス　やまがみ号

１等２席　ヌキ　熊代号

授賞目録

１等賞

　　　農林大臣賞状（首位並２位）
　　　岡山県知事賞状並賞金
　　　岡山県畜産農業協同組合連合会長賞状並額章
　　　第５回岡山県肉牛共進会賞旗

２等賞

　　　岡山県知事賞状並賞金
　　　第５回岡山県肉牛共進会賞旗

出品家畜測定成績表

牝の部

去勢牛の部

と体成績表

測定値の平均差