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ジャージー乳牛を迎えて
◇現地座談会◇


座談会風景

◇場所 岡山県真庭郡八束村役場
◇日時 29年12月7日
◇出席者 ▽県当局=惣津畜産課長,加本同衛生係長,佐々木農業改良課専門技術係長
     ▽中福田家畜保健衛生所=永井所長,三秋,浅羽両技師
     ▽真庭郡北部農業改良普及所=植木技師
     ▽勝山地方事務所=大森技師
     ▽津山畜産場=竹原技師
     ▽村当局=池田八束村長,亀山川上村長,石賀川上村農協組合長
     ▽飼育者=丸山,本島,進賀,万庭,長尾,池田,御船,樋口の諸氏
     ▽司会=本誌特派記者(S)

 体高3尺3寸,鹿のようにかわいい顔をしたニュージーランド生れのニュージー乳牛94頭が岡山県真庭郡蒜山原へ入ってきたのは10月28日。あれからもう2ヵ月たったが,地元ではどうしているか?この地区は静岡県以西の「ジャージー・センター候補地」として各方面から注目されているので,現地座談会を開いていろいろの意見をあつめてみた。

飼い易いジャージー
飼育希望者増加

司会 待望のジャージー乳牛を迎えたときの感想はどうでしたか。
三秋 久世駅に着いたジャージーの貨車に飛びついてみるとなんとかわいらしい栗毛の牛!! 長旅で少しやせ気味であったが,元気はよかったのでホッとした。
池田(村長) どんなものが入るか不安だったが,三谷川まで迎えに出てあのかわいい顔のジャージーをみてホッとした。粒ぞろいなので農家にふり分けやすくてよかった。
亀山 村の入口に歓迎の大アーチをつくり,小,中学校の子供が道の両側に並んでジャージーを迎えたが,子供も老人もパチパチ拍手して大よろこびだった。私はこの光景をみて目頭が熱くなり,これなら大丈夫成功すると思った。川上村への割当40頭はクジ引きで飼育農家を決めたが,クジはずれた農家は「オレにも早くゴセー(ください)」とやかましくさいそくしている。まったく嬉しい悲鳴をあげている。
惣津 蒜山地区に入った94頭は日本に入ったジャージー牛のうち最高のもので75頭は純粋種である。
 第1陣の導入では八束村39頭,川上村40頭,二川村15頭であったが,計画では八束村60頭,川上村60頭,二川村30頭,中和村30頭,湯原20頭,計200頭を予定しているので1月中に残りの分を入れてゆくつもりだ。
司会 実際に飼ってみてどんな具合ですか。
本島 私は牛馬2頭を飼っているが,和牛よりは頭脳もよく,なれやすい。名前を「メリー」とつけているが,つなをつけないで放していても名前を呼んだらすぐ帰ってくるようになった。
丸山 私は和牛,5頭飼っているが,和牛ともなかよく遊んでいる。身体が小さいので食が少いし,手間がかからない。
司会 飼料はどうしていますか。
三秋 越冬飼料(6ヵ月分)として乾草を1頭につき360貫エンシレージにしてサイロ詰めしている。その他カブラ,大根をタバコの跡作に1反くらい,青刈麦5畝,青刈ナタネ3畝を標準に飼料作物をつくっている。湯原ダムの水没地区となった二川村では青刈イネを与えたそうだ。水田裏作のレンゲにも力を入れている。
池田(村長) 八束村では7万円を投じて北海道から牧草の種子を買っていました。
浅羽 1日1升のフスマと粗飼料(乾草中心)300貫程度を与えるよう指導しているが,和牛を飼った経験のある人ばかりなので「増し飼い」の傾向もある。
司会 こんどジャージーを導入した農家の経営内容は……。
三秋 比較的経営規模の大きな農家が選ばれており,川上村が平均田1町1反,畑8反,八束村が田1町1反,畑5反をもっている。草地は入会のものを入れて約2町はある。
樋口 田8反,畑1町5反,草地1町5反をもっているが,ジャージーを3頭ほど飼いたいと思っている。
万庭 田5反,畑1町5反をもち,和牛2頭,馬1頭を飼っているが,家族は9人であるから1人1日3合の乳をのんでも2升7合はいる。だからジャージーを2頭も3頭も飼いたい。
長尾 私は田畑2町をもっているが,第1陣の導入対象からハズされた。早くつぎをいれてほしい,こんどの割当は大きな農家ばかりであったが,零細農こそ早く導入させて営農を安定させるべきではないか。
司会 ジャージーの病気はありませんか。
永井 「禿性匐行疹」という皮膚病が40%くらい発生しているが,これはカビの一種で手当すれば2,3日でなおるから心配いらない。最近の診察でとくに気のついたことは体高,体長の割に卵巣が非常に大きくなっていることだ。これはわれ先に大きくしようとして濃厚飼料を多く与えているためだと思う。このぶんでは1月からでも種付けができそうだ。

農業経営に変化
ジャージー貯金も生れる

司会 ジャージーを導入してよかったと思ったことは……。
池田 いままで畑地はほとんど1毛作であったがジャージーが入ってから間作するようになった。また家畜一般の飼育管理もうまくなった。
大森 野ザラシの肥グロでは肥料成分が減って骨折り損となるから堆肥舎をつくるものが増えてきた。これはこの地方の農業革命だといえる。
池田(村長) 4Hクラブ員がジャージーの導入のためサイロつくりに一役買ってくれたことは非常に有難かった。
石賀 川上村農協では経営規模の小さい農家でもなんとかジャージーを買入れようと「ジャージー貯金」をはじめた。100円でも1,000円でも貯めてゆき,5ヵ年計画で3万5,000円にしようというもので普通貯金より利子を高くしている。和牛をセリ売りしてこの貯金に一部を割いた人もあるほどだ。

将来は種畜の供給地に

司会 こんご蒜山地区をジャージーの本場に育てあげるにはどういう点に力をいれたらよいでしょうか。
惣津 集団的に導入して集約酪農を行うことが大切。ジャージーが入っているのは静岡県の富士山麓以西,岡山県の美作地区だけだから種畜供給地としたい。
 生産牛乳の処理については現地でクリームと脱脂乳に分離してクリームのみを津山市の北部酪農に運ぶようにすれば経費も安くてすむし,脱脂乳も学童給食やニワトリ,ブタの飼料に利用できてよい。またジャージーのオスの子はイリボシ代りにするなど農家生活の改善に役立たせてほしい。
石賀 まず集乳路線の整備が必要である。積雪期間でも能率よく集乳できるよう道路や橋をなおさないといけない。また湯原ダムの完成後,川上村としては距離が3里も遠くなったから牛乳の中継処理場はぜひつくらないといけない。
池田(村長) しかしセパレート工場をつくるにしても最初は産乳量が少ないので工場のソロバンが合わないからその点の考慮も必要だ。
丸山 八束村の学童は600人であるから1人1合ずつの脱脂乳を隔日にのむとしても3斗しか消費できないからこれからどんどん乳が増えた場合他の用途も考えなければいけない。
植木 蒜山地区の開拓予定地は稲作に行きづまりを生じ,また山林資源でも農家経済の主体となり得ない状態で,結局畑地のタバコに依存しているが,ジャージーの特性を生かしながら両立させる方法を考えたらどうか。
進賀 開拓予定地は1戸当り3町歩もあるが,ジャージー酪農を伸してゆくためにはやはり開拓農家も既存農家も含めた総合酪農計画をたて集約牧野をつくることに力を入れるべきではないか。
万波 堤防を牧野として利用できるようにしてほしい。また手近に放牧場をつくってほしい。
御船 畜産試験場がほしい。これは適地適作の飼料試験を行うためだ。
三秋 ジャージーを中心に養鶏,養豚を奨励し,飼料は畑の一毛作を多毛化することによってまかなってゆく。そのためクローバーの導入,サツマ芋,大豆,トウモロコシなどをどんどんつくるようにしたい。
竹原 濃厚飼料にあまり頼りすぎると経済能力が衰えるので粗飼料を中心に飼ってほしい。
加本 搾乳は家庭の主婦でもできるようにしてほしい。婦人の手でジャージーを飼ってゆける自信をつけたいものだ。
佐々木 ジャージーの特技の研修会を開いていろいろな方面から検討する機会をつくる必要がある。
浅羽 生活改善普及員を蒜山地区に配属してジャージー牛乳や肉の料理法および貯蔵法などを農家に普及してほしい。
惣津 ジャージーの導入によってみんなが共同して仕事をやってゆこうという機運が強くなったことはよいことだ。いまや蒜山地区は国際牛ジャージーの導入によって世界の農業,世界の乳製品市場につらなっているのだから酪農界の動きを常に勉強して立遅れないようにしてほしい。
司会 ではこの辺で。