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岡山種畜場講座

乳牛の飼い方(七)

渡辺技師

I.牛乳代用飼料による仔牛の育成

 仔牛の育成に脱脂乳が手に入らぬ時或は不足を来す時には,どうしてもこれに代る所謂カーフミールとして知られている牛乳代用飼料で育成しなくてはならない。これは,バター製造地帯以外の都市近郊の市乳地帯においては是非必要となって来る。然しこの場合でも1箇月や1箇月半は全乳をやらなければならない。下にカーフミールの配合例を示す。

脱脂粉乳を混じたもの
 例1 玉蜀黍 100
    亜麻仁粕 30
    燕麦粉 30
    可溶性血粉 20
    調合鉱物質 1
 例2 脱脂粉乳 25
    大麦粉 20
    燕麦粉 20
    小麦麩 15
    亜麻仁粕 7
    可溶性血粉 10
    骨粉 2
    食塩 1
脱脂粉乳を使用しないもの
 例1 亜麻仁粕 30
    燕麦粉 40
    黄色玉蜀黍 20
    可溶性血粉 10
    調合鉱物質 3
 例2 亜麻仁粕 25
    黄色玉蜀黍 25
    小麦2番粉 25
    可溶性血粉 25
    調合鉱物質 3
 例3 大麦粉 36
    燕麦粉 27
    麩   27
    亜麻仁粕 10
    骨粉 1.5
    食塩 1.0

 カーフミールの配合は可消化蛋白質を20%以上含有し,繊維含量が5%以下のものが望ましい。カーフミールはその1sに湯6リットル乃至8リットルを加えて粥状にして与えるのであるが始めは全乳又は脱脂乳で溶いて次第に馴して行く。尚カーフミールを用いる場合,ビタミンA及びDの補給に肝油を毎日茶匙2−3杯混ずると成績が良い。カーフミールによる育成の飼料給与の標準を示すと次のとおりである。
 生後3週間=全乳
 第4週=少量のカーフミールを乳汁に混ぜて与え始め,次第に増量すると共に全乳を減らして全乳3対カーフミール粥1の割合までにする。全乳は5sに減らす。
 第5週=全乳と粥とを等量程度までにし全乳は3s迄に減量する。
 第6週=全乳1対粥3の割合とし,全乳を1s迄に減らす。但し牛乳を減量すると共に給水量を増加して行く。
 第50日目頃から全乳を廃止し,カーフミール粥と良質荳科乾草及び仔牛用配合飼料とで飼育する。カーフミールは1s内外とする。
 3−4箇月=カーフミールの日量1.5−1.8s
 5箇月以降は次第にカーフミールを減らし仔牛用配合飼料と切換えを行い,5箇月半−6箇月で全廃する。
 以上の通りカーフミールでも充分育成することが出来るが,丁度人間の子供を育てるように常に可愛がってやり,食事の時間は規則正しく体の生理的状態に注意し,食は控え目にし,腹をこわさないようにして育てるのが秘訣である。生後5箇月を過ぎたならばもう安心である。

J.若い仔牛の部屋

 分娩室に入れた母牛が無事御産をすませたならば乳牛舎に再びつれてくる。その時生まれた仔牛はその儘産室におくなり別に設けた仔牛の部屋に入れる。仔牛は2−3週間は独房に入れて臍の緒の乾くまでおく。これは生れて間もない仔牛を2頭以上一所におくと,臍をお互いに吸い合って思わぬ故障を起すことがあるから1頭だけにしておく方が飼養する上にも健康状態を見る上にも都合が良い。
 仔牛を入れる部屋を用意する場合は,狭い場合は3尺に6尺位,或は6尺に6尺位で良い。そして成るたけ明るく,換気が良く,又湿気がなく乾燥し,又冬期隙間風が入らない様にすることが大切である。
仔牛に起り易い肺炎の主な原因は,1つは湿気の多いことと換気の不充分な為である。又下痢も同様これらの原因によって起される。
 理想的には仔牛の部屋は隣接した牛房の間が遮断せられた独立房が望ましい。これは伝染病が互に接する場合拡がり易いからである。仔牛の部屋は乳牛舎の中に設けてやると非常に暖かく,その管理の上にも又仔牛の発育の上にも都合が良い。大牧場等では仔牛のために暖房装置を設ける場合もある。
 仔牛の部屋には特に冬季においては乾燥した寝藁を充分入れてやることが大切である。この際仔牛の寝る場所として部屋の片隅に適当の大きさで高さ3寸位の位置にして所謂上床にしてやると,仔牛は常に乾燥した清潔な所に休むことが出来,そのために発育の上に非常に良い影響を与えることが実験せられている。最近米国ではその上げ床は金網を堅い木の枠に取付けて作っている。上げ床は金網(1番線又はそれよりも太い針金で網んだ網の目6分位のもの)を堅い木の幹に取付けて作る、枠は2×6吋角或は4×4吋角の材木で作りその上9番線を4−5寸くらいの間隔に張れば金網のたるみを防ぐことができる。そして其の上に乾燥した寝藁を敷いてやれば申し分のない暖かい気持の良い寝床が出来る。この様な設備をすることによって仔牛が風邪を引いたり,下痢をすることは殆んどなくなると言われている。そしてこの床の下には小溝又は排水路を設けて排水を良くする。なおこの上げ床は取りはずしの出来る様にし清掃や消毒に便利にする。又この仔牛の部屋の高さは3尺位とし4尺位高くしても良い。部屋には穀類を入れる小さい箱と乾草を入れる草架を設けておく。又仔牛の部屋に仔牛用のスタンチョンを設け(木製)ておくと便利である。
 草架には乾草を入れておくが,草架の高さは余り高くない様に仔牛が自然の姿勢で自由に食べることが出来る様にするため床から3−4尺位としてやる。乾草は出来るだけ良質のものを与え2番牧草が理想的である。なおこの頃になると戸外の運動場や小さな放牧場に出してやる。然し放牧は生後4ヵ月迄は其の必要がない。
 仔牛を育成する秘訣はいうまでもなく愛情をもってすることであるが,清潔と言うことが何よりも大切なことで,部屋の中は常に清潔に保ち,えさ箱は毎日その残った飼料を取り去ること,これは特に夏に必要である。又仔牛に使用する桶や其の他の容器類は毎食毎に完全に熱湯で殺菌することが大切である。寝藁は仔牛の部屋には充分準備し,毎日掃除して全部を取り換えることではなく,牛房を乾燥するに必要な程度で良く,湿った又糞で汚れた部分を取除いてこれを補う。
 冬季寒気の厳しい地方では,時に堆積した厩肥の発熱を利用して仔牛部屋の温度を高めるために寝藁の交換を3−4週間毎にする場合があるが保温上は良いが衛生的には良くない。
 仔牛が追込みの中でお互いに乳を飲んだ後で耳や鼻を吸い合う習慣がある。そのために不消化の被毛などを飲み込み第4胃の中で毛球を形成する場合がある。これは時に不消化の原因となるので習慣づけぬ様注意することが大切である。

K.春仔と秋仔の比較

 仔牛育成上の見地から,一般に仔牛は春仔と秋仔が良い。然し秋仔は舎内で育成することが多いのでビタミンAやDは春仔よりも摂取する量が少ないからこれの欠乏症にかからない様注意が肝要である。又春仔は秋仔よりも蝿になやまされることが多く更に春の気候ではバクテリヤの繁殖に適するので消化器病の危険が多い。秋仔は年を越してから放牧されるのでこれは丁度放牧年令に達してから出されるので放牧の利用には都合が良い。そして又2才になる迄には秋仔は2回放牧季節を与えられることになる。然し春仔を初年度に放牧するには余り若過ぎるので2才になる迄は1回より放牧期が与えられないことになるので,発育の上に或いは飼養の上に好都合に行かぬものである。

L.離乳

 一般に脱脂乳が充分でなければ生後6ヵ月以後はこれを与える必要がない。この時代になれば,仔牛は既にその正常な発育を継続するために必要な穀類や乾草を利用する能力が出来てくる。牛乳から乾草や穀類に変える場合には極く徐々に行い又哺乳の回数も1日2回から1回にし,それも給与量を減少し1週間か10日もかかって完全に置き換える様にする。この時代は仔牛の栄養として蛋白質や,カルシウムの不足を来すことになるから,乾草でも出来得ればクローバーや大豆のような乾草と又蛋白質の含量の多い大豆粕とか魚粉とか亜麻仁粕,コプラミールの様なものを飼料中に配合するとその発育に非常に有効である。そして1日に1.5−2s位給与すれば良い。