ホーム岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年2月号 > 岡山種畜場講座 副業養鶏(七)育雛

岡山種畜場講座

副業養鶏(七)
育雛

川崎技師

 「養鶏の成否は育雛の如何に関わる」とまで言われ,育雛は養鶏の中で重要なものであり,又中々難しいものであります。

一.育雛の時期

 育雛の時期は自然的気候条件,労力,経済的条件等々を総合勘定して最も適当と考えられる時期を決定する事が望ましいのであります。
 諸条件を総合しますと,育雛に初歩の方には副業養鶏の立場より陽春の3,4月,なかでも3月中旬より4月中旬迄が最適と言えましょう。此の時期は生物の発育に最も適し,自然的条件に恵まれて居り育成率は良く又将来の産卵率の上からも有利であります。
 最近早春の育雛が遂次行われて居りますが之は一応育雛,若雛の管理に自信を得て居る方は寒気による危険性も少く,反って晩春の育雛よりも換気等は良く行われ,又良い雛も割に安価に入手出来,晩夏より初秋の間の管理を周到に行うと換羽の率も少く,卵価の高い時に産卵させ,経済的に有利であります。
 5月以降の育雛は副業養鶏としては農繁期に入り,労力の点に於て都合悪く又中雛の大切な時に梅雨を経過しますので不適でありましょう。

二.初生雛の入手

 1.初生雛の購入
 前項により育雛の時期を決定したならば,信用のおける鶏卵場を選定し,之に対して早目に注文し,希望の時期に優秀雛を確保する事が必要であります。
 街頭で売って居る雛や,行商的に販売に来る雛は価格の安いのにつられて大失敗をする事がありますから十分注意が肝要であります。
 2.優良雛の見分け方
 初生雛の良否の見分け方は初心の方には中々難しいものでありますが,雛の購入に当って一応次の事項を知って置く事が必要でありましょう。

選別点 良     雛 不  良  雛
状態 良く活動し,活気があり,握って見ると,反発力があり,
体に弾力性あり充実して居る。
挙動が鈍く,握って見ると反発性が無く,体に弾力性が無い。
重量 白レグで9匁以上 8匁以下
円く活き活きとして輝いている。 眼に活力が無く眩しそうにし,眼がうるんで居る。
羽毛 光沢があり,適度に乾燥して居る。 光沢を欠き,羽毛が粗い。
腹部 適度に充実し,卵黄の消化吸収が良い。 充実不十分であるか,卵黄の消化吸収が不十分である。
臍の周囲の筋肉が盛上がって居り臍の締まりが良い。 臍の部が出血したり,周囲の筋肉に締まりが無い。
色が良く,光沢を有する。 褪色し,光沢を欠く。
独特の肌色を呈し,適度に太く水々しく光沢がある。 色悪く,細く痩せ萎びて居る。

三.人工育雛の設備

 育雛の方式には自然育雛(母鶏育雛)と人工育雛がありますが本稿に於ては紙面の都合上自然育雛は割愛し人工育雛に就いて述べて行きます。
 人工育雛の方式として大きく分類して自温育雛と給温育雛に分けられ,自温育雛は2,30羽以下の小羽数を4月中旬以降割に温暖な時期に行われる方法であって一般的でないので此処に於ては給温育雛について説明します。

 1.育雛器

 育雛器は給温方式から分けると上部給温,側部給温,下部給温と分かれ,又之等が組合されて居るものがあります。次に副業養鶏用に必要な育雛器について説明します。

 (1)箱型育雛器

 2,30羽より100羽位迄の育雛に利用され,育雛舎の設備の無い場合でも納屋,住居の一部を利用して育雛をする場合に便利であります。種々な形式があり,複雑な構造のものがありますが,一般的にして,基本的な構造を示しますと100羽用として「第1図」の様な構造であります。要すれば運動場を更に3尺延長するとよろしい。温源としては電熱,木炭,煉炭,炭団等を用いますが,一般に炭団,木炭を使用します。

第1図 箱型育雛器

 (2)オンドル式育雛装置

 100羽より300は程度の育雛に利用され,此の方式は寒地の住宅で行われて居るオンドルよりヒントを得たものであり,地下の焚口より燃して,その熱を土管に通し,育雛室の下部より給温する方法であり,給温の方法も合理的であり,燃料費も割に安くてすみます。しかし,育雛室そのものとしては改造するか,建築する必要があります。この設計は種々ありますが普通「第2図」の如きものであります。

第2図 オンドル式育雛装置

(3)電熱温床育雛器

 100羽より200羽程度迄の育雛に使用され,特徴としては保温力が強く,電気の消費量が割に少く火災の危険が無く温度の調節が取り易い等があり,農村の共同育雛に適して居ります。之には種々の設計がありますがその1例は「第3図」の通りであります。
 電熱線は甘藷育苗に使用される被覆線を2坪用の線を1坪に用いると安全であります。尚設置時,最下位の藁は温度の絶縁用でありまして,藁束を1束当て密の敷く事が必要であります。之を十分敷いて置かぬと熱が地中に吸収され育雛器の温度が上昇しないから注意を要します。電気の工事は一応専門家に依頼して実施するが無難であります。本枠は厚さ一寸程度のものを使用し,接合部を密着させ,育雛舎の保温が十分でない場合は木枠の周囲を莚等で囲む事も必要であります。
 其の他踏込温床式,バタリー式等の育雛方式がありますが之等は紙面の都合上割愛し又の機会に説明致します。

第3図 電熱温床育雛器