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岡山種畜場講座

3月の飼養管理

乳牛

 冬季飼料として貯蔵したエンシレージ,野乾草,燕菁,大根,早刈燕麦等一応消費して粗飼料に最も困窮する月でありますが,平素からこの端境期に具えて,計画的に充分粗飼料の自給を図るべきであります。粗飼料の給与量は乳牛の体重に対し乾草に換算して2−3%量を必要としますが,個体によって増減の必要性があります。それには粗飼料給与直後左腹飢凹部が寧ろ膨満した程度が限界ですから採食後飢凹部が陥没していては給与が充分でない訳であります。幾ら栄養価値がある粗飼料を給与しても其の容積がなければ完全な消化が行われず,能力も充分に発揮することができません。
 3月の半ばを過ぎますとそろそろ陽春のキザシでポカポカ暖かい日もあり,所謂春寒料峭の候ですが,兎角この頃が気温の急変のため病気になり勝ちで油断は禁物です。
 分娩間近かなものは,適当な運動を課し,次期分娩によって起り易い後産停滞を防ぐことが大切ですが,寒気の厳しい時や烈風時には戸外に出すことは控えた方がよろしい。又母牛に安全にお産をさせるには分娩前後の注意が必要です。この時代に放任又は無用心であっては思わぬ失敗をすることがあります。即ち母子共に斃れたり,後産停滞により母牛の繁殖に不都合があり泌乳量の減少,乳房障害,消化器障害,乳熱等起り易く,注意深く取扱う必要があります。

養鶏

 名実共に春の季節に入り総ての生物が生気を取戻して来て生理的機能が活発になって来る時季であります。
 鶏も盛産卵期であって駄鶏であっても或程度の産卵を持続するものであります。此の産卵率の高い時期に産卵を抑制して行き,寡産期の卵価の高い時期に於て産卵を強制しようとするものがありますが,此の時期に産卵を無理に飼料等で抑制しようとしても鶏自体としては飼料が不足であれば本能的に自体内に貯えられて居る栄養素を以て不足飼料を補って産卵し,反って体力の消耗を来し,痩削し産卵率は低下し,遂には途中産卵を中止し,又之が回復には想像以上の飼料と日数を要するものでありまして結論として損であります。
 飼料の蛋白質含有量と給与量を十分吟味して産卵率に合した適正な飼料の給与を行い愛鶏に饑じい思いをさせないで十分食わして鶏の能力を発揮さして十二分に産卵させて行きましょう。鶏は体重が4分の1減少すると春でも部分換羽を起すと言われ,換羽が始まると産卵率が低下し,又休産も免れぬものであります。又兼用種の就巣性のあるものは体重が減少すると就巣し易くなるとも言われて居りますから飼料の不足のない様に注意しましょう。
 又飼料の適量の給与と共に緑餌並びに無機物を十分に与えて不足のない様に注意致しましょう。
 農家の副業養鶏に於ては田圃仕事が段々と忙しくなり特に少羽数飼養の家では注意が不行届になり勝でありますが,老人でも子供でも一応一人定めて責任を持たし管理をする様にし,主人は1日に1度か2度位は必ず見廻って監督する様にする事が必要であります。
 3月は本格的な育雛の時期でありますが,育雛は養鶏技術中最も難しく又最も重要なものであって育雛の成否はその鶏の生涯を左右するものであります。
 雛は優秀系統のものであって,体重は大体10匁以上あって,活力のある元気なものを取得し,母鶏に優るとも劣らぬと自負出来る愛雛心を以て周到な注意の下に育雛を開始致しましょう。
 既に育雛器等は整備されて居ると思いますが今一度細部を点検し万全を期すると共に飼料も十分検討し周密な飼料計算の下に必要飼料を確保し途中育雛飼料に不足を生じ飼料の急変や減量等を行う様な事が絶対無い様に致しましょう。

養豚

 3月の声を聴くと気分的に暖かさを思わせます。俗に『暑さ寒さも彼岸まで』といっているとあり長い冬の寒さでちっ居しがちであった各家畜がのびのびと春の喜びに躍動し初めることになります。本月の養豚家の仕事は第一がお産の季節で分娩,仔豚の哺乳,えさ付,第二が寄生虫の予防,第三が自給飼料の植付といったものが主なものであります。
 3月も彼岸頃までは気候不順で暖かいかと思っていると急に寒さがくるといった具合であり昼と夜との差も相当違いますので気候の急変にそなえて敷藁も充分入れてやることです。分娩近い母豚はお産の室に移し分娩の準備をしてやりましょう。はらみ豚の室は特に清潔に乾いた居心地のよい所にしておかねばなりません。お産の近づいたものは転倒を起させないよう一層取扱いを丁寧にいたしましょう。前もって分娩室に予定日を書いておき豚の状態を見,お産の時期を違えぬよう注意せねばなりません。産の近づいた豚は藁をくわえはじめ,不安そうな動作をしてきます。分娩仔豚は1頭産む毎に取りあげてよく口,鼻,身体の汚れを拭きとってやります。又臍の緒は4p位のところから切りヨード丁幾を塗っておきます。後産が出たら母豚に喰せないで取除いてしまいます。産が終って母豚がおちついたら腹部乳房部を手でなでてやりますと横に臥るものですから母豚を臥さしておいて乳頭をしぼると乳を出します。1頭宛仔豚を乳につけ吸いつかせます。乳は前半分が後半分よりよく出すものですから弱い仔豚は前半の乳頭につけるようにしてやることです。
 仔豚はよく陰嚢ヘルニヤ又は臍ヘルニヤをおこすことがあります。仔豚は鼠蹊孔壁を作っている部が薄く弱いもので仔豚同志で争ったり又重り合って下積のものが努責したためとか或は管理人の捕えかたが悪くて力いっぱい反抗するために起したりするものです。仔豚を捕えるには両方の後肢をつかまえ逆さに頭を下にして努責を防がねばなりません。臍の緒を切るとき臍を引っぱることがもとで,臍ヘルニヤにかかることがありますが取扱いによく注意しなければなりません。
 授乳母豚について,乳をうんと出させようとして急に増し飼いすると健康をそこなったり乳房を悪くしたり(乳房炎)しますので増し飼はぼつぼつ増してやりましょう。えさは消化し易いように調理してやり濃厚飼料の他に根菜類とかクローバー,青刈燕麦等がありますれば与えてやることです。なお母豚に下痢をさせないように特に注意し,脂肪の多いものとか変敗したえさ等を与えてはなりません。母豚の健康をそこなうとすぐ仔豚に関係してきます。
 仔豚は温い日は自由に運動させます。運動時間は最初少なく,次第と時間を伸して一日中出せるようにならしてゆきます。そうすることによって自然仔豚の発育もよくなって,しっかりした丈夫なものとなります。仔豚のえつけは成るべく早目に軟かい菜類等を与え胃腸をならしてゆきます。特にビタミン,無機物が不足しないようにしてやりましょう。
 春ともなりますと寒い間播殖力をおさえていた寄生虫共が漸次はびこってくることになります。豚に多い内寄生虫は蛔虫を筆頭に肺虫,賢虫,桿虫等であります。豚を飼っておられる方を見ますと伝染病は非常に恐しがっていますが,寄生虫については案外平気で何等の予防もしないのですが実は被害の多いのは寄生虫病です。寄生虫を防ぐには豚舎を清潔にすることです。この清潔ということがなかなか実行出来ぬものです。何分寄生虫の被害は,はっきりと目に見えないがいろんな病の因となっているものです。仔豚(生時)の時から清潔に取扱うことをモットーとして飼わなければなりません。住居である豚房は勿論運動場も清潔にすることです。糞とか尿で汚れた敷藁は入れかえ,ジメジメさしてはなりません。春には房内の床や壁等もよく洗い更に乾いたら5−6%のクレゾール石鹸液(クレゾール石鹸液6分に常水を入れ100とする。)で房内の隅々まで散布消毒し,えさ箱もよく洗い日光でよく乾かすことです。豚は糞尿で汚れた前肢をえさ箱の中につっ込んで喰っているのを見受けますが肢が箱には入らないようなえさ箱をつくることです。又運動場は土壌面を3寸位掘り起し太陽にさらすのも一方法です。
 仔豚を健康に育てるこつの1つは寄生虫におかされないようにすることで,それには寄生虫卵のない清浄な土地で育てることが主要なこと柄です。
 本月の養豚自給飼料として作付準備又作付しておきたいものは馬鈴薯であります。じゃがいもは昔から豚のえさとして最も適当とされております。大根,カブラの収穫後地,水田で地ごしらえしておいたところ或は空閑地があれば1坪でもこの際有効に利用して自給飼料の増産を計りましょう。
 じゃがいもは豚では固形物として飼料固形物の半分近くも与えられます。ただじゃがいもは蛋白質に欠げておりますから蛋白質の飼料を補ってやればよいえさとなります。

めん羊

 めん羊のお産は朝方が最も多いですから寒い日は特に注意しましょう。分娩後5−6日経ってから麩,燕麦,大根干葉等の良飼料を与えて母乳の出が多くなる様努めましょう。
 仔羊の断尾は生後7−15日以内,去勢は生後3週間以内におだやかな晴天の日に行いましょう。90−100%と言う高いへい死率で傷から破傷風菌が入るから特に断尾の時は予防注射をしておく方が安全です。母乳が不足したり,不幸にして母羊が死んだ時は仔羊を牛乳,山羊等で人工哺乳をして育成しましょう。