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巻頭言

牧野改良の推進について

惣津律士

 牧野法が昭和25年5月20日に公布されて以来,国及県更に市町村当局の財政的裏付に依って年と共に牧野の改良がすすんでいる事は畜産進展上慶祝に堪えない所である。
 この法律は第一条に示す如く地方公共団体の行う牧野の管理を適正にし,その他牧野の荒廃を防止するために必要な措置を講じて,国土の保全と牧野利用の高度化を図る事を目的とするものであって,我国の如き耕地が僅少のため毎年多量の食糧を海外に求めざるを得ない事情下に於ては国土の総合的活用に依る食料の増産確保上から当然第一に着手されなければならない公共的事業であり,而も整然たる計画の上に恒久的に施策されねばならない。
 国は牧野改良に毎年相当多額の予算を計上して居り,その開発の促進化のために昨年は種畜牧場に機械を設置して広く利用の途を図ると共に30年度に於ては都道府県の集約酪農地帯の牧野改良に必要な機械の導入に対して補助の途を講じんとしている。
 随って県に於ても上に即応して来年度から更に飛躍的の振興を図るべき事態になって居るが,この場合に当該市町村の誠意ある理解と協力が何にも増して必要である事は今更申上げるまでもない。
 本県に存在する4万数千町歩の牧野の改良は中々大変な事業であるが,岡山県産業の振興上,必ずやりとげなければならない宿命を担っている問題である。そしていやしくも畜産にたずさわって居る人士は卒先してこれに挺身し,子々孫々にまでこの偉業を継続実施
する必要がある。私は昨年秋の岡山大学農学部の収穫祭に於て学生諸君に将来の畜産の行くべき道に関連して,牧野の改良に絶大の関心をもつべき事を強く要請した。
 牧野の改良と共に更に山地に畜産に依る生産力に付与する問題がある。げに未利用地,就中山を征服する県民これ我国に於て最大の幸福を享受するものであると言えよう。
 この未利用資源を人間の叡智と限りなく進歩する科学に依って開発する事に世論を統一昴揚させる必要を今日ほど痛感する時代はない。この意味に於て私は日本ほど資源にめぐまれた国はないと信じ,ここに住む民族の一員としての有難さに感謝するものである。