ホーム > 岡山畜産便り > 復刻版 岡山畜産便り昭和30年3月号 > 岡山種畜場講座 乳牛の飼い方(八)

岡山種畜場講座

乳牛の飼い方(八)

渡辺技師

五.離乳から種付迄の飼養

 仔牛が生れて6ヶ月間は脱脂乳を与えるがそれからは専ら粗飼料と濃厚飼料によって育成せられることになる。
 仔牛の発育は,生後6ヶ月頃から種付時期,即ち生後18ヶ月頃の間が一番盛んな時代であり其の牛一生を通じて最も大切な時期である。従ってこの時期の発育が順調に進まない時は,将来有能な乳牛としてその使命を果すことが困難になるものと思わねばならない。給与する粗飼料は乾草,エンシレージ,放牧による生草であるが,仔牛の栄養の大部分はこれ等粗飼料の良質なもので補うよう心掛けるようにする,そして其れに少量の濃厚飼料を与えれば良好な発育をとりあげるものである。

A.ハンソン氏の若牛の飼養標準

乳用仔牛月例 1   日   1   頭   に   対   す   る
平均生体重 乾  物  量 澱  粉  価 可消化蛋白質
  (㎏) (㎏) (㎏) (㎏)
2月3日 70 1.5-2.5 1.5 230
3月4日 100 2.0-4.0 1.9 300
4月6日 160 3.0-5.0 2.4 360
6月12日 220 4.0-7.0 2.7 380
12月18日 300 4.6-8.0 2.9 420
18 - 24 400 4.8-8.5 3.1 440
24ヵ月以上 450 5.0-9.0 3.3 450

 この飼養標準によれば例えば生後6-12ヶ月の仔牛は平均220㎏で,そのものが1日に必要とする飼料中の栄養分は,乾物量で4-7㎏,澱粉価に換算すれば2.7㎏である。そして其の中に含まれる可消化蛋白質は380gである。

B.夏季の飼養法

 生後6ヶ月を過ぎた頃になれば,消化器特に胃の構造や内容が,粗飼料を消化吸収するによいように発達してくる。それで夏季の放牧時期に立派な,優れた放牧場があれば,そこに生えている良質牧草を食わせるだけで充分である。牧草が不足な時は,勿論少量の濃厚飼料を補うべきであるが充分の時はその必要がない。今迄発育の不良であった仔牛でも良好なる放牧場に出すことによってその回復は著しいものである。
 永久放牧地が充分なく,夏季を通じて放牧が出来ない時は,これを補うために一時的の放牧地を準備するが良い。このような一時的の放牧地も利用できない時は乾草又は牧草とエンシレージとを与えるようにする。
 放牧期間常に理想的な良質の生草を与えることが出来れば良いが一般にはこれを持続することが困難であるから若牝牛が何時でも欲する時に食えるように適当な場所に草架を設けそこに乾草を入れておくようにするとよい。
 若牛が1日摂取する生草の量は,勿論その品質にもよるが,普通生体重の100㎏に対し約7-8%即ち7-9㎏である。米国での試験結果によれば,6ヶ月の仔牛は平均体重170㎏であるが,1日の採草量は自由に食わした時に12㎏であった。又9ヶ月の若牝牛は生体重220㎏で採草量は20㎏であった。又良質のルーサン乾草だけで若牝牛を飼った場合6ヶ月のものは1日3㎏,9ヶ月のものは約5㎏で12ヶ月のものは8㎏の消費でありその時の発育は普通であった。
 然し優れた血統の将来基礎牝牛にでもしようとするものは,その発育の万全を期する意味で,濃厚飼料,これは一般にその中の蛋白質の含有量は15%位のものとして飼料配合する。例えば玉蜀黍20,燕麦 20,亜麻仁粕10,の割合で混合したもの,(これは各自手持の飼料を適宜配合し)そしてこのものを6-9ヶ月の仔牛には1日1.5-2.0㎏位を与えるのである。一方良質の乾草も少ない時には,6-9ヶ月の若牝牛には2.5-3.0㎏位の濃厚飼料を増給することが望ましいのである。
 夏季の飼育の大部分は放牧に依存することはいう迄もないが,今迄離乳前に脱脂乳や乾草及び穀類を与えられていた若牛は放牧に出しても,いきなり生草を多量に食うものではなく,次第に其の量を増してゆくから,その変換期にも乾草も食えるようにしてやるがよい。又濃厚飼料も適度に補給するようにするのである。一般に放牧は生後5ヶ月も過ぎれば行われるが,夏の暑い時は涼しい通風のよい部屋に入れておくようにする。或は涼しい日蔭を作った所に避難できるように設備せねばならぬ。放牧地の草は,若い禾本科のものや白クローバー,ラデノクローバー等が適当である。このような牧草は全体の栄養価も高く,特に蛋白質は其の発育を促進するに足るだけの分量が含まれているのである。春になって若牛を放牧すると,見る見る中に栄養が回復して毛の光沢もつき見ちがえるようになることは誰でも経験する所である。これは蛋白質の豊富な上に更にビタミン,石灰の量も多いからである。そして日光に当ってビタミンDも充分に体内に造られ,又運動も十分であるので申し分がない訳である。
 秋や初冬に生れた仔牛は,翌年の春から夏にかけて放牧することによって,その発育は非常によくなるが,春に生れたものはその生草を利用するようになるのは,晩夏から秋になり,その時には草の品質も落ちているから,春や夏生れの仔牛は運動のための外は翌年の春まで放牧しない方がよい。

C.冬季の飼養法

 冬季は全く舎飼のため,その用いる飼料は,乾草,エンシレージ及び濃厚飼料が主体となる。生後6ヶ月の仔牛は良質の乾草だけの時は1日に3㎏,又9ヶ月になれば5㎏又12ヶ月のものは8㎏を消費するものである。そしてこれに対し牧草の品質にもよるが,普通は濃厚飼料を1日に2-2.5㎏を給与するのである。牧草の一部の代りに乾燥した青刈の玉蜀黍を押切りで切ってやるのもよい。又エンシレージは一般に生体重のものは2%位の量を与えるようにする。即ち100㎏の生体重のものは2㎏であって,これは別に乾草を食えるだけ食わすようにする時である。一般にエンシレージ3㎏は乾草の1㎏に相当するものである。そして乾草の給与量の約半分がエンシレージで置き換えることができる。乾草は適当な場所に草架を設け,常にこれに満しておくようにする。
 良質の粗飼料を充分に食わした時は,6-9ヶ月の若牛は,1日に濃厚飼料を1.5乃至2.0㎏与える。然し粗飼料の品質があまり良好でない時は,2-3㎏までやる。9ヶ月以上の仔牛には品質の良い乾草やエンシレージが充分であれば,特別に濃厚飼料を与える必要はないが,然し一般には1日に2㎏をやれば安全である。この場合の濃厚飼料の中の蛋白質は10乃至12%で充分である。
 結局発育中の若牛の飼養はこの頃の消化器を十分きたえて丈夫なものにし,食い込みの良い牛に仕立てるのが主眼であるから,出来るだけ粗飼料に重点をおき,濃厚飼料に片よらぬようせねばならぬ。それと同時にこの時代の運動はまだ骨筋を丈夫に発達せしめる上に大切であるから努めて自由に運動のできるように広い追い込みを利用することである。

D.若牛への鉱物質

 若牛が牧草や濃厚飼料を食うようになれば,食塩を与えることが必要である。一般に其の給与量は20-40gでよく,濃厚飼料の1%である。
 次に石灰の問題であるが,良質の牧草に適当に配分された濃厚飼料を給与しておけば,特別に石灰を加える必要はない。禾本科の牧草とか又は土壌中に,石灰や燐酸が欠乏しているときは,そこに生育する牧草はこれ等の含量が不足するから,これを補うためにカルシウムや燐酸を含んでいる骨粉又は炭酸石灰の澱粉等を適当に給与する必要がある。その分量は大体食塩と同量である。石灰は市場に販売されているコロイカル,ヤヨイル,カルゲン,或いは最近北海道で生産されるボレイカル,ラジカル,等が良いであろう。
 特にラジカルはラジウムの放射能があり,その上鉄や燐酸も微量ではあるが含まれているので発育上一層好都合である。このラジカルはカルシウムを多量に含有し,然もラジウムの放射能を有する温泉から流出する湯が自然に炭酸石灰となったものである。
 鉱物質として食塩,カルシウムの外に燐酸も非常に大切であるが,これは濃厚飼料の中に多量に含まれているのでこの点は安心である。その他沃素やマグネシュウム等も微量ではあるが発育に必要なものとされている。(続く)