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畜産ニュース

炭疽病近県に発生警戒を要す

 本年1月に入って以来,炭疽病という家畜の伝染病が近畿,中国,四国にわたって散発,岡山県をとりまく兵庫,鳥取,島根各県にもすでに発生をみているので,乳牛,和牛およびめん羊,山羊の飼育農家は警戒が必要である。県下では昭和19年に小田郡新山村(現在笠岡市)で和牛3頭,同24年には阿哲郡で1頭が同病におかされ,消却処分になった苦い経験がある。発生県からの情報では最近中共地区から輸入された一部の配合飼料中の骨粉に関係があるとの見方もあり,発生径路はなかなか複雑である。
 特に疑問に思われている点は,炭疽病が普通雪どけごろ発生するのにことしは時季はずれの冬季中に発生,しかも各地に散発していることで,原因にもなにか変ったものがあるとみられている。すでに福井,静岡,兵庫,鳥取,島根,山口,高知,京都の各県に発生,鳥取県の場合には被病和牛を解剖した獣医師に感染のうたがいがあるともいわれている。
 この病気は炭疽菌によって起る敗血病型の伝染病で主として牛,羊,山羊及び馬等の草食獣を侵すが,雑食獣,肉食獣及び人における発生は比較的少い。又鳥類の感染は極めて稀である。この病気にかかると家畜は40度以上の高熱を出し,大体2日位で口や肛門から血をはいて死ぬが,人間に感染すると高熱を出し,手足の傷口から菌が侵入した場合は切断しなければならないほど恐ろしい伝染病である。手当法はないので,被病牛は当然消却処分しなければならないが,被病牛の血が土壌に落ちると血液中の菌の芽胞ができ,2,30年も生きていることがあるから,被病のうたがいのもあるのは直ちに届出てほしい。