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編集室から

◎世は選挙戦の真直中であり,新旧選挙法が入り乱れて舌戦を繰り広げている。旧法によるものは華やかに連呼するし,新法は如何にも静かに動いている,今迄の選挙戦に較べて静かになってくれたので一般の人々はホットしている。これで惑わされることなく人選が出来るわけである。あくまで公明選挙でありたいものである。

◎又々乳価の値下げの声が出て来た。一面には製品の動きが見られだした処もある。そうかと思うともう夏乳を心配している市乳業者もある。峠は3月一杯であると見ている者が多い様である,酪農家の苦しいのももう1月である。草が出れば飼料面も楽になるし,乳の消費も伸びて来る,お互いに手を取り合ってこの1月を頑張って貰いたい。

◎牛乳や牛肉が高いと言う声をしきりと聞く,原料乳価は下り,牛価も下っているのに何故乳や肉の値が下らないかと言うのが消費者の声である。新聞やラジオの問題として盛んに議論しているが立場立場でそれぞれの結論は出るし言い分もあるかも知れまいが,結局は消費者は安ければ買ってくれるのである。中間の利潤のみを据置いて値下りを生産者に皺寄せされたのでは生産者が参ってしまう。お互いが忍び合って消費を伸ばすことに努力したいものである。

◎和牛の販路拡張に歩いてみて驚くことは,各県の和牛生産がぐんと伸びて来て,そう他県から入れなくても自県で賄なえる様になったことである。岡山県が生産県であると自慢している内に岡山産の牛が次第に売れなくなって行くのである。生産地は生産地なりに牛の改良に重点を置き種牛を生産しなければ駄目であるし,牡犢の問題や,肉牛の問題も真剣に考えなければならない時代が来ているものである。狭い殻の中のみで自慰しないで,広い世間に眼を開いてほしいものである。

◎卒業期,試験期,就職期と一番いやな季節がやって来た。世の親馬鹿達が心配ばかりして走り廻っている。近頃は大学の入試試験に迄母親が付いて行くそうである。高等学校の試験には行かない方がどうかしている位に考えている。子供達も親に頼り過ぎている。就職となると親類縁者総動員である。成績の悪いのに限ってこの蔭の力が強い。そしてこの蔭の力で入った者にろくな者が居ない。困った世の中になったものである。人が多過ぎるからと言ってしまえばそれ迄であるが,もっと実力がものを言う時代であってほしい。実力第一であればもっと勉強するであろうし,もっといい人物が得られる筈である。何んとか蔭の力を無くしたいものである。

◎水は方円の器に従い,と言う言葉がある。人間も枠の中に入って仕事をしていると型にはまった人間になり,枠の中の事しか考えない様になる。かと言って枠の外にはみ出ると異端者として扱われるので困る。然し枠内にばかり居ては枠外のことは判らないし,枠内の事の善悪も判らなくなって来るのである。時には他の枠内に入ることも必要であるし,他の枠と継ぎ合せてみることも必要である。そしてそれに対応出来る人間を造りたいものである。