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巻頭言

和牛の振興について

惣津律士

 由来和牛はそのもつ特性に依り山村の零細農家の経済に大きな貢献を果している関係から逐年増加の途をたどって順調な発達を示して居り,その分布は広く全国に及ぶ実情である。併し乍ら近時牛価は漸次下落の方向をたどりその取引も活発化を欠ぐようになった事は本県に取って極めて遺憾な事である。
 この主なる原因は政府のデフレ政策に依るものが多い事は勿論であるが,一面本県和牛の販路の開発施策上種々問題視される点も率直に認めざるを得ない。
 1月18日全国和牛振興大会が東京で開催せられて当面の重要課題である融資の増額,肉畜処理施設の整備,取引制度の是正強化等が決議せられて夫々の具現について関係機関に陳情せられたが,越えて1月31日本県に於ても岡山市で和牛振興大会が開かれ,和牛導入資金の増加,優良種牡牛の設置費の増額,千屋種畜場の拡充更に和牛の販路拡張に関する経費の予算化について決議せられ,これ等事項の速急の実施方について県及び県議会に強く要請せられた事は,本県和牛の将来への飛躍的発展を期する上に極めて有意義な行事であった事を私は確信して居る。
 私はかつて世人があまりに乳牛熱にうかされて,軽薄なる酪農に走りつつあった当時に於て,先輩の血涙によって造成せられた本県和牛を再認識すると共に更に和牛界に強い政治性を与えよと強調した事があるが,前述の如く今般中央,地方を通じて和牛振興の旗が高らかに掲げられた事は誠に感激に堪えないものがある。併し乍らとかく大会なるものはその場限りになる事が多いが,我々としてはこの企てを決して無意義たらしめてはならない。本県に於ては6・7月頃に30年度の本予算が編成せられる予定だが,関係各位の御協力に依って和牛界の不況を打破したいものである。
 とまれ私共はこの際和牛の今後の在り方について充分に反省し,今日の試練を心よく享受する事に依って,新しく立ち上る必要がある。この点については賢明なる和牛関係者はひとしく痛感せられている事であって,30年を本県和牛界にとってより良い年に転換すべく努力せられている事はもとよりである。
 今後畜産の道はたしかにけわしいが,和牛もその中に於て当然苦しまねばならない。私共は現状を皮相的に悲観したり落胆したりすべきではない。私共は愛する郷土の繁栄のために愛する和牛の道を今こそ切り開いてやりたいものである。